2024年6月からはじまる所得税減税の定額減税とは?年収2,000万超の富裕層は対象外に | MONEYIZM
 

2024年6月からはじまる所得税減税の定額減税とは?年収2,000万超の富裕層は対象外に

政府が掲げる総合経済対策において、2024年6月から施行される「定額減税」は、国民一人一人に4万円ずつ還元される予定です。
この減税策は、物価高に伴う国民負担の軽減を目的とした一時的な対応です。なお、今年度中に実施される低所得世帯向けの給付金と比較すると、実施時期は遅くなります。
 

ここでは定率減税との違いも踏まえて解説します。
 

※記事の内容は2023年12月15日時点の情報を元に作成したものであり、現在の内容と異なる場合があります。

なぜ所得税減税なのか

現在、所得税減税の話が話題となっていますが、そもそも所得税減税をなぜ行うのでしょうか。ここでは所得税減税の概要だけでなく、所得税減税を行う理由について解説します。

所得税減税とは

所得税減税は、個人が所得税を支払う際に、税金の額を軽減する制度です。所得税は、個人の所得に対して課税される税金であり、国民に負担を求めるものです。
 

所得税は所得から所得控除を差し引いた額に税率をかけて求められます。所得税は所得の額によって税率がかわる累進課税となっています。
 

所得税減税の目的は、経済活動を促進し、国内経済の成長を支援することです。所得税の軽減により、個人はより多くの資金を手元に残せます。そのため消費や投資などの経済活動が活発化し、経済全体の活性化が期待されるでしょう。
 

所得税減税の具体的な方法には、所得の一部を非課税とする特例措置や、所得税率を引き下げる制度があります。所得税減税は、個人や法人の経済活動に直接的な影響を与えるため、経済政策の重要な要素です。

所得税減税を行う理由

岸田政権が今回の所得税減税を行う理由としては、物価高の影響で国民生活が苦しいためです。たしかに近年物価高が続いています。総務省が発表した消費者物価指数によれば、生鮮食品をのぞく総合指数は、前年同月比で2.8%の上昇となっています。
 

また生鮮食品をのぞく食料に関しては8.8%の上昇です。とくに乳卵類は21.4%の上昇、菓子類は11.7%と物価上昇が続いています。電気代とガス代はそれぞれ-20.9%と-9.5%と負担軽減策の効果が出ています。
 

このように物価上昇は継続的に続いており、原油価格の上昇による一時的なものではありません。食料品は今後も継続的に上昇していく可能性が高いでしょう。
 

物価上昇を上回る速度で賃金が上昇していれば問題ありませんが、実際には賃金上昇はしているものの、物価上昇に追いついていません。こうした現状を考えたうえで、政府としては所得税減税を物価高対策として実施するに至ったわけです。
 

しかし野党は減税よりも給付を要求しており、自民党内からも減税を選択する政権に疑問を抱く声が出ています。消費税減税の声が高まっている中で、同じ減税である所得税減税を選んだという考え方もあるようです。
 

たしかに消費税の税率を下げてしまうと、元に戻すのが大変だという事情もあるでしょう。ここまで10%に上げるのも難しかった状況で、再び消費税を一時的に下げてから、元に戻すのは大変だというわけです。

定額減税とは

今回、所得税減税において、定額減税を実施することになりました。そもそも定額減税とはどのような制度なのでしょうか。また定率減税との違いはどのようなところでしょうか。

定額減税は一定額を納税額から差し引く方法

定額減税は、一定額を納税額から差し引く方法ですたとえばある人が年間で10,000円の定額減税を受ける場合、その人は納税時に10,000円少ない金額を支払うことになるわけです。

定率減税との違い

定額減税と定率減税は、日本の税制においてよく使われる減税の方法ですが、その違いを理解することは重要です。
 

まず定額減税は、前述したように所得や経費に応じて一定の金額が差し引かれる減税方法です。
 

一方、定率減税は、所得に応じて一定の割合が差し引かれる減税方法です。具体的な割合が定められており、収入や支出の一定の割合が減税されます。
 

両方の減税方法は、税制改革や経済政策の一環として使用されているわけです。
 

橋本龍太郎政権を引き継いだ小渕政権は定額減税を定率減税に変更しました。その後、小泉政権になって定率減税は廃止されています。

今回の定額減税のメリット・デメリット

今回の定額減税にはメリットとデメリットがあります。ここでは定額減税のメリットとデメリットについて解説します。

今回の定額減税のメリット

定額減税のメリットとしては、所得に関係なく一定額を差し引くため、収入の少ない人々や中所得者層にとって非常に有益です。
 

所得に応じた割合で減税される従来の制度とは異なり、定額減税では一定の金額が減税されるため、低所得者や中所得者層は恩恵が受けられます。そのため与党内で支持が高くなっているのが現状です。
 

実際に公明党の高木政調会長も、「党として定額減税がふさわしいという認識を持っている」と述べています。
 

定額減税は経済の活性化にも寄与します。税金の負担が軽減されることで、人々の消費意欲が高まるはずです。消費が活発化すれば、企業の売上や雇用も増えるため、経済全体の活気が生まれます。
 

定額減税は国や地方自治体の税収減少による財政への影響を緩和する効果もあります。税金の減額分は一時的に財政に影響を与えますが、経済の活性化によって税収が増えることが期待されるわけです。このように定額減税にはさまざまなメリットがあるといえるでしょう。

今回の定額減税のデメリット

定額減税は、所得税を減らすための一つの手段ですが、デメリットも存在します。
 
まず、所得税を支払っていない所得税非課税層は恩恵を受けることができません。これは定率減税も同様です。そのため減税よりも給付の方を望む声もあり、所得税非課税層には給付をするという案が出ています。ただし増税の実施予定もあり、減税との整合性がとれません。
 

また、定額減税は一時的な効果しかもたらさない可能性があります。減税によって一時的に経済が活性化することはあるかもしれませんが、持続的な経済成長には他の政策が必要です。定額減税だけに頼ることは、経済のバランスを崩す可能性があります。

所得税減税の中身と実施予定

今回の所得税減税の中身と実施予定の内容は、どのようになっているのでしょうか。

1人4万円の減税

納税者およびその扶養家族1人に対する減税額は、1人あたり4万円(所得税3万円、住民税1万円)です。これは、4人家族の場合、年間で総額16万円に達します。この減税は個人や家庭にとって経済的な助けとなり、生活の充実度向上に寄与することが期待されます。
 

また年収2,000万円を超える富裕層は、この定額減税の対象外とされています。このポイントは、所得格差の是正や社会的な公平性の観点からの政策判断が背景にあります。政府が所得税や減税政策を設定する際には、社会の構造や経済の均衡を考慮し、広範な層への恩恵をもたらすことが求められ、富裕層は既に高い所得を得ているため、直接的な経済的支援が必要ないとの判断からくるものです。
 

サラリーマンなどの給与所得者の場合、2024年6月の給与や賞与支給時には源泉徴収額から減税が行われます。しかし、6月だけでは引き切れない残りの減税分は、7月以降に順次差し引かれる仕組みとなっています。住民税に関しても、6月分は徴収されず、減税分を引いた年間の税額が7月以降の11カ月間で均等に徴収される点が特徴的です。
 

公的年金所得者も、所得税については来年6月の年金支給時に減税され、引けない分は次の支給時である8月以降に順次減税されます。住民税については、2024年8月徴収分までの税額が既に確定しており、10月分から減税が開始され、引けない分は12月分以降に順次差し引かれます。
個人事業主や不動産所得者の場合、所得税の減税は原則2025年2~3月の確定申告時に行われます。ただし、前年所得に基づく納税額が15万円以上の場合は、確定申告前に一部を納税する年2回の「予定納税」時に減税されることになります。
 

具体的には2024年6月に、本人減税分を差し引いた第1回予定納税額が通知される予定です。扶養家族分については7月末までに減額申請が受け付けられ、9月末までに納税が求められます。引き切れない分は11月の第2回予定納税時に差し引かれ、それでも残った分は確定申告時に減税されることとなります。住民税についても、来年6月の徴収分から減税が開始されます。
 

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まとめ

ここまで今話題となっている所得税減税の定額減税について解説してきました。定額減税はメリットとデメリットがありますし、規模によってもどれくらいの経済効果があるかは変わってくるでしょう。
 

富裕層を対象外とする一方で、広範な層への恩恵を考慮した政策判断が示されています。これを機に、各個人や家庭が賢明な資産運用と節税対策を検討し、将来への財務的な安定を築くための機会とすべきではないでしょうか。

福井俊保
渋谷区で一から立ち上げたプログラミング教室スモールトレインで代表として、小学生に対するプログラミングと中学受験の指導に従事。またフリーランスのライターとしても活躍。教育関係から副業までさまざまな分野の記事を執筆している。 著書に『AI時代に幸せになる子のすごいプログラミング教育』(自由国民社)、共著で『#学校ってなんだろう』(学事出版)がある。
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