赤字経営の鉄道は廃線を回避できる?立ち直ったローカル線の事例を紹介 | MONEYIZM
 

赤字経営の鉄道は廃線を回避できる?立ち直ったローカル線の事例を紹介

ローカル線に興味を持つ方の中には、赤字経営が続くローカル線が最終的に廃線になるのではないか、と疑問や不安を抱えている人もいるでしょう。
 

しかし、実際に赤字経営から立ち直ったローカル線はいくつもあります。
 

そこで本記事では、赤字経営のローカル線について、鉄道が赤字となる理由や廃線になると起きること、などを解説します。

ローカル線(ローカル鉄道)とは?

ローカル線(ローカル鉄道)とは、一日の列車本数や、列車に乗る人・物の数が少ない地方の鉄道路線のことです。
 

ローカル線の役割としては、その地域に暮らす人々を支える交通機関である以外にも、蒸気機関車や山岳列車など地域の観光名物として扱われている場合もあります。
 

そのため、ローカル線は、地域の復興を支える要素としても重要な役割を果たしているのです。

ローカル線はどのくらいで廃線になる?

1980年代の旧国鉄改革によると、ローカル線の廃線基準は、1キロメートルあたりの1日の平均利用者数が4,000人未満とされています。
 

しかし、地方では自動車の普及などによる移動手段の変化に伴い、鉄道利用者が減少。2020年度時点で、JR各社の4,000人未満の路線割合は57%と半数以上を占めています。
 

2022年7月には、国土交通省がローカル線のあり方について議論をし、1キロメートルあたりの1日の平均利用者が1,000人未満などの赤字ローカル線に対して根本的な見直しを求めた上で、新サービス導入費用の一部を補助するなど柔軟に対応するとしました。

ローカル鉄道に対する国の支援制度

国土交通省は2023年1月に、地域公共交通機関の再構築に向けて、新しい支援制度の概要を示しています。
 

支援制度の概要は、以下のとおりです。
 

  • キャッシュレス決済といったデジタル化などの経費を半額補助
  • 「社会資本整備総合交付金」の対象に鉄道やバスを加える
  • 運行時間の短縮や駅の利便性向上のための投資

 

他にも、支援策としては、安全な鉄道輸送を確保するための一部費用を補助する「安全輸送の確保」や、インバウンド(訪日外国人観光客)増加を目的とした車内案内の多言語化費用などを一部補助する「移動の利便性向上・利用環境の改善」などもあります。
 

ただし、ローカル線に対する国の支援制度は、期間や予算などが設けられているケースが多いため、気になる方は最新情報を確認しておくことが大切です。

ローカル線が赤字経営となる理由

ローカル線が赤字経営になる理由は、自然環境の変化や感染症などさまざまです。
 

ローカル線が赤字経営となる理由は、以下のとおりです。
 

  • 新型コロナなどの感染症が蔓延する
  • 台風などの自然災害が起きる
  • 地方の少子高齢化

新型コロナなどの感染症が蔓延する

新型コロナなどの感染症が蔓延すると、外出を控える人が多くなり、地方の観光客が減少します。その結果、休日であっても、ローカル線の収益が増えず、赤字経営になるのです。

台風などの自然災害が起きる

多くのローカル線は山々に囲まれた鉄道を運行しているため、台風や地震などの自然災害で土砂崩れが発生すると、復旧に多くの時間やお金がかかります。
 

例えば、熊本県にあるJR肥薩線では、2020年7月の豪雨により、駅のホームが流失するなど、448件におよぶ致命的な損害を受けています。
 

また、福島県にある阿武隈急行株式会社は、2019年の台風19号や新型コロナの影響により、2022年度時点でおよそ6億円の赤字経営が続いているとのことです。

地方の少子高齢化

地方の少子高齢化が進むことで、日々利用する地域の住民数が減り、ローカル線の収益も減少します。
 

観光名所のあるローカル線の場合、観光客の利用による収益は入るでしょう。しかし、観光業が発展していない地域の場合、鉄道収益のほとんどは地域住民の利用から入ります。そのため、少子高齢化が進むにつれて、地域住民数が減少すると、赤字経営に追い込まれるのです。

赤字経営のローカル線が廃線になると起きること

では、赤字経営のローカル線が廃線になると、何が起きるのでしょうか。こちらでは、廃線となった際に起こりうることを紹介します。
 

ローカル線の廃線で起きることは、以下のとおりです。
 

  • 地域住民の出勤や通学に影響がでる
  • 地域の過疎化が進行する
  • 地域住民の出勤や通学に影響がでる

    地方の生活では、自宅から学校、自宅から会社までの通学・通勤距離が長い場合もあります。その場合、地域のローカル線が廃線になってしまうと、地域住民は孤立してしまい、学校や会社に行く手段が途絶えてしまう可能性があるのです。
     

    例えば、その地域で多くのバスが運行していたり、自家用車を所有していたりする場合は、ローカル線に代わる交通手段は見つかるでしょう。
     

    しかし、バスの運行本数が少ない地域に住んでいる方や、自家用車を所有していない方は、ローカル線が廃止になると、移動手段がなくなってしまう可能性があります。

    地域の過疎化が進行する

    赤字経営のローカル線が廃線になると、地域の交通の便がさらに悪くなり、住み心地が悪くなることから、地域の過疎化が進行する可能性もあります。
     

    【事例】赤字経営でも廃線を回避したローカル線

    最後に赤字経営から廃線を回避したローカル線を3つ紹介します。
     

    赤字経営でも廃線を回避したローカル線は、以下のとおりです。 

    • 銚子電鉄(千葉県)
    • いすみ鉄道(千葉県)
    • ひたちなか海浜鉄道(茨城県)

    事例①:銚子電鉄(千葉県)

    千葉県にある「銚子電鉄」は、2023年3月期の決算において純利益1,196万円を確保し、2期連続で黒字決算となっています。その背景には、本業として鉄道事業をし、その傍らとして始めた「ぬれ煎餅」があります。

    現在、銚子電鉄には、この「ぬれ煎餅」を目当てに多くのファンが訪れており、2023年には売上高で過去最高額の5億3,148万円を記録しているとのことです。

    一方、鉄道事業のほうが1.2億円ほどの営業損失が出ていることから、「ぬれ煎餅」の売上が今の銚子電鉄を築いていると言っても過言ではありません。

    事例②:いすみ鉄道(千葉県)

    同じく千葉県にある「いすみ鉄道」も赤字経営から廃線を回避したローカル線です。
     

    いすみ鉄道は、ローカル線にユニークなアイデアを混ぜ込んだ結果、全国から観光客を集めることに成功しています。「ムーミン列車」「レストラン列車」などの非日常的な世界観を列車と融合させたことで、多くの観光客を呼び込んでいます。

    事例③:ひたちなか海浜鉄道(茨城県)

    茨城県では、「ひたちなか海浜鉄道」が赤字経営からローカル線を立て直しています。
     

    ひたちなか海浜鉄道では、年間通学定期券を発行することで、120日分の往復運賃で年中毎日鉄道を利用できることを地域の住民にアピールし、経営を立て直しました。
     

    また、通勤・通学時間帯によく利用される区間での運行を40分おきから20分おきにするなど、利用者が快適に利用できるよう、利便性の向上にも努めています。

    まとめ

    今回は、赤字経営のローカル線について、赤字となる理由や廃線になって起きること、経営を立て直した事例について紹介しました。
     

    結論としては、赤字経営のローカル線でもさまざまなアイデアを活かし、経営を立て直している鉄道会社は多くあります。そのため、その地域の良さや利用者のニーズを考えることで、ローカル線の赤字経営を立て直せる可能性はあるということです。
     

    例えば、「ふるさと納税」の活用や列車デザインのアレンジ、「お弁当」など地域特産品をノベルティにするなど、さまざまな方法があります。
     

    赤字経営のローカル線を立て直すには、ローカル線ならではの良さをアピールし、全国にしっかりと伝える必要があると言えるでしょう。