本業が忙しくて、経理業務まで手が回らない場合や、経理担当者がまだ育っていない場合などでは、外部に経理代行を依頼することがあります。しかし、経理代行とはどのようなものかをきちんと把握している人は多くないでしょう。そこで、ここでは経理代行の内容とそのメリットとデメリットを徹底解説します。
経理代行とは 経理代行と記帳代行との違い
経理代行とよく似た言葉に、記帳代行があります。では、経理代行と記帳代行はどこが違うのでしょうか。ここでは、経理代行とは何か、その内容を見ていきましょう。
そもそも経理の業務とはどんなもの?
そもそも経理の業務とは、どのようなものを指すのでしょうか。実は、経理業務は幅広く、大きく分けて「日常業務」「月次業務」「年次業務」の3つがあります。それぞれには、次のような業務が該当します。
①日常業務
経理担当者が日々行う必要のある業務です。
- 領収書や伝票などの整理
- 日々の取引の記帳
- 入出金業務など
②月次業務
概ね月単位で行う経理業務のことです。
- 売掛金、買掛金の管理
- 月締めの請求業務
- 給料計算
- 月締めの試算表等の作成業務
③年次業務
概ね年1回行う経理業務のことです。
- 決算業務
- 年末調整業務
- 税務申告書類の作成
経理業務の中で経理代行に依頼できる業務とは
経理の業務には、「日常業務」「月次業務」「年次業務」の3つがあると先に述べました。しかし、これら業務のすべてを、経理代行に依頼できる訳ではありません。経理代行に依頼できる業務とは、次のようなものに限られます。
①日常業務
- 領収書や伝票などの整理
- 日々の取引の記帳
業者によって異なりますが、通常、入出金業務は経理代行では行いません。領収書や伝票などの整理や日々の取引の記帳は、経理代行業者に依頼することができます。記帳代行とは、日々の取引の記帳の代行のみを指します。記帳代行のみを、請け負っている業者もいます。
②月次業務
- 売掛金、買掛金の管理
- 給料計算
- 月締めの試算表等の作成業務
月締めの請求業務は、経理代行では行いません。売掛金、買掛金の管理についても、残高の整合性を図ることはできても、得意先への請求や支払い自体は企業で行います。税理士と顧問契約をしている場合、月締めの試算表等の作成業務は顧問料の中に含まれている場合もあります。
③年次業務
- 決算業務
- 年末調整業務
決算仕訳の記帳や年末調整業務は、経理代行に含まれます。税務申告書類の作成は税理士が行う必要があるため、税理士のいる代行業者であれば、行うところもあります。
経理代行のメリットとデメリット
ここまでは、経理代行の内容について確認しました。ここからは、経理代行のメリットとデメリットについて見ていきましょう。
経理代行のメリットとは
経理代行のメリットには、次のようなものがあります。
①コストの削減
経理担当を自社で雇用するには、年間で数百万円のコストがかかります。また、経理担当の育成にも研修などお金がかかります。依頼する業務によって異なりますが、経理代行の場合は、年間数十万円で依頼できる場合もあるので、コストの削減になります。
②正確な経理の実現
経理代行では、実務経験豊富な経理のプロが業務を代行するため、間違いが少なくなります。正確な経理を実現すれば、試算表など、経理を基に作成された書類の数字も正確になり、正しい経営判断ができるようになります。
③本業に専念できる
経理代行では、請求書、領収書などの必要なものを、代行業者に渡すだけで正しい経理処理を行ってくれます。そのため、経理の手間が大幅に軽減され、本業に専念できるようになります。
経理代行のデメリットとは
経理代行のデメリットには、次のようなものがあります。
①情報漏えいの危険性
経理代行では、請求書や領収書、従業員の給料の情報など、会社にとって重要な情報を外部の業者に預けます。そのため、少なからず情報漏えいの危険性があります。代行業者を選ぶ際には、信頼のおける業者を選ぶ必要があります。
②ノウハウの取得が難しい
経理担当者がいる会社では、自社で経理業務のノウハウが蓄積されています。自社にノウハウがあると、経理担当者が変わっても、スムーズに引き継ぎが可能です。経理代行業者に依頼している場合は、代行業者が経理を行うため、ノウハウの取得が難しくなります。
経理代行を依頼する場合の注意点
経理代行を依頼する場合には、注意しなければならない点がいくつかあります。ここでは、代表的な経理代行を依頼する場合の注意点について、見ていきましょう。
経理代行を依頼した方が良いケースとは
自社が、経理代行を依頼した方が良いのかどうか迷うことも多いでしょう。経理代行を依頼した方が良いケースには、次のようなケースがあります。
①本業に専念したい場合
会社の創業から時間が経っていない場合や、中小企業など経営者が動くことで仕事が回っている場合などは、経営者やその親族が経理に手を取られてしまうと、本業がおろそかになり、売上や利益に影響を与える場合があります。このように、経営者が本業に専念したい場合では、経理代行を依頼した方が良いでしょう。
②財務管理に力を入れたい場合
財務管理とは、事業のための資金を調達し、経営指標や財務指標を基に会社の経済活動を管理することをいいます。簡単にいうと、資金繰りの予想などを基に、資金をショートさせないように経営を考えていくこと、事業を発展させていくことです。
経理業務に手を取られ、財務管理が十分でないと、会社は成長しません。会社や事業が成熟していない場合は、まずは、財務管理に力を入れる必要があります。このように、財務管理に力を入れたい場合では、経理代行を依頼した方が良いでしょう。
代行業者の選定には注意が必要
実は、経理代行の業者には様々な種類があります。大きく分けると、税理士が行っている経理代行業者(税理士のいる経理代行業者)、税理士がいない経理代行業者(記帳代行業者)に分かれます。
では、税理士が行っている経理代行業者と税理士がいない経理代行業者では、どちらを選べば良いのでしょうか。すべての業者が該当するとは限りませんが、一般的に、それぞれ次のような特徴があります。
①税理士が行っている経理代行業者
- 記帳など業務内容が正確
- 料金が高い
- 個別で、税務代行や調査立ち会いなども依頼できる
②税理士がいない経理代行業者
- 税理士が行っている経理代行業者に比べると、正確性が低い
- 料金が安い
- 税理士がいないので、税務代行や調査立ち会いなども依頼できない
つまり、正確性に重点を置くなら、税理士が行っている経理代行業者を選び、コスト面に重点を置くなら、税理士がいない経理代行業者を選びます。どちらを選択するのかを迷う場合は、税理士が行っている経理代行業者を選択しましょう。
経理業務は、正確性が重要です。会社の成長のためには、経理業務を基に出来上がった資料から経営分析や経営判断を行う必要があります。もしも、経理業務に間違いがあった場合には、経営分析や経営判断も誤ってしまう可能性があります。
また、経理や税務、資金繰りなどのアドバイスについても、税理士なら相談することが可能です。滞りなく事業を進めるためには、税理士が行っている経理代行業者を選択することをおすすめします。
まとめ
経理代行とは、簡単にいうと、様々な経理業務のうち、実際のお金のやりとりを含むもの以外の業務を外部に代行依頼することです。経理代行を依頼することで、本業に専念できるなど、様々なメリットがあります。
様々な経理代行業者がありますが、どこに依頼するのか迷っている場合は、税理士の在籍する経理代行業者に依頼しましょう。経理面だけでなく、税務面など様々なことをサポートしてもらうことが可能なため、きっと会社の成長の助けとなるでしょう。