個人だけでなく、法人も国債を所有することができます。国債は国が発行する債券のため、信用があります。国債を所有すると、定期的に利金(利息)を受け取ることができますが、国債の利金にはどのような税金がかかるのでしょうか。ここでは、法人で国債の利金がある場合の税金や会計処理方法について、詳しく解説します。
法人が国債を所有する場合の購入から満期償還までの流れ
国債の利金の税金や会計処理を理解するためには、まず、法人が国債を所有する場合の購入から満期償還までの流れを知っておく必要があります。国債を所有する場合の購入から満期償還までの流れは、次のようになります。
①国債の購入
全国の金融機関などで、国債を購入します。その際には、公的書類告知書や本人確認書類、通帳、印鑑などを用意するほか、購入手数料が必要になります。
②利金の受け取り
国債を所有すると、半年に一度、利金を受け取ります。利払時には、源泉徴収が行われます。
③満期償還
満期になると、額面金額が償還されます。
法人の場合、すべての取引について帳簿付けが必要になります。また、国債を保有してから一定期間経過後は、満期前でも売却して換金することが可能です。
利金や償還差益、売却益にかかる税金
国債を保有していて税金がかかるケースには、どのようなものがあるでしょうか。税金がかかるのは、利金の受け取りと償還差益、売却益が生じた場合です。
実は、利金の受け取りと償還差益、売却益では、税金の計算方法が異なります。ここでは、それぞれの税金の計算方法について見ていきましょう。
国債の利金は、所得税等が源泉徴収される
国債の利金には、源泉徴収制度が適用されます。源泉徴収制度とは、利金などの金額に一律の税率を乗じて計算した所得税・復興特別所得税を、あらかじめ利金から差し引くことで、納税を完結させる制度のことです。法人が受け取る利金は、すでに税金が差し引かれた後の金額になります。
では、何%の税金が差し引かれているのでしょうか。それは所得税15%、復興特別所得税0.315%、地方税5%の合計20.315%です。例えば、1万円の利金を受け取る場合は、1万円×20.315%=2,031円の税金が差し引かれます。法人が受け取るのは、利金1万円-源泉徴収税2,031円=7,969円になります。
償還差益や売却益は益金に算入して税金を計算する
償還差益とは、債券の購入価格より、債券の償還金額の方が高かった場合の利益のことです。売却益とは、満期前に国債を売却した場合に、購入価格より売却金額の方が高かった場合の利益を指します。
では、償還差益や売却益の税金はどうなるのでしょうか。償還差益と売却益の税金を確認するためには、そもそもの法人税の計算方法について理解する必要があります。法人の収入には、本業の売上だけでなく、雑収入、固定資産売却益など様々なものがあります。ただし、受取配当金など一部のものは会計では収入になりますが、税金の計算上、収入にすることができません。税金の計算上、収入になるものを「益金」といいます。
また、費用についても同じく様々なものがあります。ただし、限度額を超えた交際費など一部のものは、会計では費用になりますが、税金の計算上、費用にすることができません。税金の計算上、費用となるものを「損金」といいます。
法人税の計算は、簡単にいうと、益金の合計額から損金の合計額を差し引き所得を求め、求めた所得に一定の税率を乗じて、法人税の金額を求めます。
では、国債の償還差益や売却益はどうなるのでしょうか。国債の償還差益や売却益は益金になります。そこで、本業の売上や雑収入などに、国債の償還差益や売却益を加算し、益金の合計額を求め、そこから損金の合計額を差し引き、所得を求めます。
例えば、売上が1,000万円、国債の償還差益が100万円、損金になる費用の合計が500万円の場合(益金にならないものは、ないものとする)の所得金額は、次のようになります。
所得金額の600万円に法人税率を乗じて、法人税の金額を求めます。
国債を保有している場合の会計処理方法
ここまでは、国債を所有する場合の購入から満期償還までの流れや、税金について見てきました。ここからは、国債を所有する場合の購入から満期償還までの流れに沿って、会計処理を見ていきましょう。
①国債の購入
長期保有の目的で、期首に国債を100万円、普通預金で購入した。
借方勘定科目 | 金額 | 貸方勘定科目 | 金額 | 摘要 |
---|---|---|---|---|
投資有価証券 | 100万円 | 普通預金 | 100万円 | 国債 |
一般的には、国債は、長期保有目的で購入することが多いです。この場合は、「投資有価証券」科目で処理します。短期保有目的の場合は、「有価証券」科目で処理します。
②利金の受け取り
国債の購入後、半年が経過し、利金を受け取った。
1万円の利金から、所得税及び復興特別所得税1,531円と地方税500円、合計2,031円が差し引かれ、7,969円が普通預金に入金された。
借方勘定科目 | 金額 | 貸方勘定科目 | 金額 | 摘要 |
---|---|---|---|---|
普通預金 | 7,969円 | 有価証券利息 | 1万円 | 利金の受取 |
法人税、住民税及び事業税 | 1,531円 | 所得税及び復興特別所得税 | ||
法人税、住民税及び事業税 | 500円 | 地方税 |
国債の利金は「有価証券利息」科目で処理しますが、「受取利息」科目などで処理しても問題ありません。
所得税及び復興特別所得税と地方税は、どちらも「法人税、住民税及び事業税」科目で処理します。所得税及び復興特別所得税と地方税は、分けずに合計金額で処理しても問題ありませんが、その場合は後で分かるように、それぞれの金額を摘要欄などに記載しておいてください。法人税の計算で、詳細が必要になる場合があります。
③満期償還
満期になり、額面金額100万円が普通預金に入金された。
借方勘定科目 | 金額 | 貸方勘定科目 | 金額 | 摘要 |
---|---|---|---|---|
普通預金 | 100万円 | 投資有価証券 | 100万円 | 国債 満期償還 |
額面より低い金額で取得した場合は、額面金額と取得価額との差額を決算時に期間按分し、有価証券利息で処理する必要があります。その場合の処理は、次のようになります。
①国債の購入
長期保有の目的で、期首に額面100万円の国債を98万円で、普通預金から購入した。なお、満期償還までの期間は5年である。
借方勘定科目 | 金額 | 貸方勘定科目 | 金額 | 摘要 |
---|---|---|---|---|
投資有価証券 | 98万円 | 普通預金 | 98万円 | 国債 |
②決算時の処理
額面金額と取得価額との差額2万円を期間按分し、本年分4,000円の処理を行った。なお、期間按分は定額法(毎年同じ金額を償却する)を採用している。
借方勘定科目 | 金額 | 貸方勘定科目 | 金額 | 摘要 |
---|---|---|---|---|
投資有価証券 | 4,000円 | 有価証券利息 | 4,000円 | 国債 |
満期償還日まで、毎年この処理をすることで、満期償却日の「投資有価証券」科目の残高は額面金額と同じ金額になります。
③満期償還
満期になり、額面金額100万円が普通預金に入金された。
借方勘定科目 | 金額 | 貸方勘定科目 | 金額 | 摘要 |
---|---|---|---|---|
普通預金 | 100万円 | 投資有価証券 | 100万円 | 国債 満期償還 |
まとめ
法人で国債の利金がある場合、利金については、源泉徴収制度が採用されます。そのため、利金の金額から、あらかじめ所得税や復興特別所得税、地方税が差し引かれ、差引後の金額が普通預金などに入金されるのです。
一方、国債の償還益や売却益は、本業の売上などと一緒で益金に算入され、法人税が計算されます。
仕訳をどのようにしたかなどによって、法人税の計算が異なることがあります。国債の利金がある場合で、法人税の計算をする場合は、あらかじめ税理士などの専門家に相談するようにしましょう。