新型コロナウイルス感染症の経済への影響が拡大する中、各種イベントの中止などに伴うフリーランスの窮状がクローズアップされています。給与所得者(企業)に対する支援に比べて‟出遅れ感“のあった個人事業主向けの「新型コロナ対策」ですが、そうした現実を踏まえて、徐々に具体策が打ち出され、さらに拡充が図られてきています。現状(3月20日現在)を整理してみました。
国の支援策は、大きく3つ
個人事業主、フリーランスである以上、「安定収入」が得られるかどうかは、その人次第。急に収入が減ったり、取引先を失ったりするリスクは、基本的に自己責任でカバーするしかありません。とはいえ、国の「自粛要請」で働く場所を奪われることまで想定しておけというのは、酷な話です。
今回、各種の大会、ショーや卒業式などのイベントの中止、外出、旅行機会の減少などにより、それにかかわる仕事をしているフリーランスには、突然収入を断たれ、今後の見通しもまったく立たないといった人が続出しました。失業給付金でフォローされるサラリーマンと違って、フリーはその日から「入金ゼロ」になりますから、事態は深刻です。
しかし、新型コロナウイルス感染症に関連する経済面での支援策は、まず企業やそこで働く人たちを対象に具体化されました。例えば、小学校などの全国一斉休校の措置に伴い、子どもの面倒をみなくてはならない保護者に対する給付が決定していますが、当初給与所得者以外の人は対象外だったのです。
そうした状況に対する批判もあって、今の問題も含め、個人事業主、フリーランスに対する生活支援策が、ようやく形になりました。国レベルの施策は、大きく次の3つです。
「小学校休業等対応支援金」を日額4,100円支給など
「生活福祉資金貸付制度」=最大80万円(2人以上の世帯)を無利子・保証人なしで貸付
「新型コロナウイルスの影響を受け、休業等により収入の減少があり、緊急かつ一時的な生計維持のための貸付を必要とする世帯」は、「緊急小口資金」として20万円の融資を受けることができます。無利子で保証人も要りません(償還期限2年以内)。
当初、貸付上限は10万円とされていましたが、政府が3月10日に発表した「緊急対応策(第2弾)」で、それを20万円に引き上げ、その後さらに、「臨時休校により保護者として仕事を休まざるを得ない人」としていた要件も取り払われました。上記に該当するフリーランスであれば、全員が対象になります。
加えて、「収入の減少や失業等により生活に困窮し、日常生活の維持が困難となっている世帯」は、2人以上の場合月20万円、単身者は月15万円の「総合支援資金」を3ヵ月間貸してもらうことができます。こちらも無利子・保証人不要です(償還期限10年以内)。
この「緊急小口資金」と「総合支援資金」を併用すれば、最大で20万円+20万円(2人以上)×3=80万円の借り入れができることになります。この制度は、3月25日から受付が始まります。問い合わせは、居住する市区町村の社会福祉協議会まで。
「新型コロナウイルス感染症特別貸付」+「特別利子補給制度」=3,000万円まで無利子・無担保で融資
日本政策金融公庫などが、新型コロナによる影響を受け業況が悪化した事業者(事業性のあるフリーランスを含む)に対し、融資枠別枠の制度を新設しました。信用力や担保の有無に関わらず一律金利とし、融資後3年間まで0.9%の金利の引き下げを実施する、という内容です。
融資には、「最近1ヵ月の売上高が、前年または前々年の同期に比べ5%以上減少している」などの要件が必要とされますが、「個人事業主(事業性のあるフリーランスを含み、小規模に限る)は、影響に対する定性的な説明でも柔軟に対応」(経産省)する、としています。
個人事業主、フリーランスは、この制度で3,000万円まで貸し付けを受けることができます。
さらに、この「特別貸付」を受けた中小企業者などのうち、特に影響の大きい事業性のあるフリーランスを含む個人事業主、また売上高が急減した事業者などに対しては、「利子補給」を行う制度が併せて設けられました。適用になれば、借入後当初3年間は、実質無利子で融資を受けることができます。
詳しくは、経済産業省「新型コロナウイルス感染症で影響を受ける事業者の皆様へ」を参照してください。
「新型コロナウイルス感染症による小学校休業等対応支援金」=1日当たり4100円(定額)を支給
小学校などの臨時休業に伴って、子どもの世話を行うために、契約した仕事ができなくなった個人で仕事をする保護者には、「2020年2月27日~3月31日の間で、就業できなかった日について、1日当たり4,100円」が支給されます。
対象は、①新型コロナウイルス感染症に関する対応として臨時休業をした小学校などに通う子ども、②新型コロナウイルスに感染した、ないし感染した恐れのある小学校などに通う子ども――の世話を、保護者として行うことが必要となった人です。ちなみに、「保護者」とは、親権者、未成年後見人、里親、祖父母など「子どもを現に監護する者」を指しますが、事業者が有給休暇の対象とする場合には、子どもの世話を一時的に補助する兄弟やおじ、おばといった親族も含まれます。
受給には「臨時休校以前に業務委託契約等を締結していること」が要件とされ、「業務委託契約等」については、次のように述べられています。
発注者から仕事の委託を受け、業務遂行等に対して報酬を支払われることを内容とする契約のことを言います。
契約書や電子メールなど、何らかの書面等により、発注者からの指定の内容や報酬が確認できるものが申請には必要となります。
申請は3月18日から始まっており、6月30日までとなっています。なお、定額4,100円という金額については、「給与所得者の上限8,330円に比べ、半額に過ぎない」という批判もあります。
申請などの詳細については、厚生労働省「新型コロナウイルス感染症による小学校休業等対応支援金(委託を受けて個人で仕事をする方向け)」を参照してください。
まとめ
個人事業主、フリーランス向けにも、「新型コロナ支援策」が設けられています。まずはその中身を知り、仕事を継続するために使えるものは使いましょう。