投資(金融)商品には様々なものがありますが、その1つにetfがあります。etfは法人でも保有することができます。しかし、法人で保有する場合は取引内容について記帳をし、税金の計算にも反映させる必要があります。
ここでは、法人がetfを保有している場合の税金と会計処理方法について、詳しく解説します。
そもそもetfとはどんなもの
まず、etfの概要を見ていきましょう。
etfとは、Exchange Traded Fundsの略で、「上場投資信託」と呼ばれる投資信託の1つです。投資信託には様々な種類のものがありますが、etfは、日経平均株価や東証株価指数(TOPIX)、債券やREIT(リート)など、特定の指数の動きに連動する運用成果をめざす、指数連動型の投資信託です。
etfには、次のようなメリットがあるため、法人、個人にかかわらず投資商品として保有しているケースが増加しています。
- ①1つの株式に投資するのではなく、簡単に分散投資ができるので、投資先の会社の倒産リスクを抑えることができる
- ②売買委託手数料や信託手数料などの費用が比較的安いため、長期投資が可能である
- ③指数に連動しているため、値動きがわかりやすい
- ④取引所の取引時間中であれば、いつでも売買可能なため、投資しやすい
- ⑤分配(収益分配金)を年4回以上行うものがあり、収益を上げやすい
法人がetfを保有している場合の税金
ここまでは、etfの内容について見てきました。ここからは、法人がetfを保有している場合の税金について見ていきましょう。
法人がetfを保有している場合、税金に関係がある取引は大きく分けて「etfを売却した時」と「収益分配金の受取時」の2つがあります。それぞれの場合の税金の取り扱いは次のようになります。
etfを売却した時の税金
etfは取引所の取引時間中であれば、いつでも売買可能です。etfの売買とは、受益権を売却するということですが、通常の株式の売却と同様に取り扱いされます。では、売買によって損益が出た場合の税金はどうなるのでしょうか。
個人でetfを売買した場合は、事業所得などの他の所得と分けて、譲渡所得として20.315%の税金がかかります。しかし、法人でetfを売買した場合は、個人と違い、本業と分けてetfの売買にだけ別に税金の計算をするということはありません。
法人税の計算は、簡単にいうと、法人が1年間に受け取った本業や副業の収益をすべて合算し、そこから法人が1年間に支払った本業や副業のすべての費用を合算したものを差し引いた利益(所得)に対して、税金が課されます。
etfの売買によって損益が出た場合も同じです。受益権の取得価額と売却価額との差額である損益を、他の本業などの利益に加減算し、最終的な所得に税金が課されます。
収益分配金の受取時の税金
etfを保有し、投資の利益が出れば、収益分配金という形で配当金を受け取ります。では、収益分配金の受取時の税金はどうなるのでしょうか。
収益分配金の税金の考え方は、etfを売却した時の税金の考え方とは違います。収益分配金の支払の際に、20.315%の税率で所得税や地方税が、源泉徴収されます。源泉徴収された金額は税金の前払いの性格をもちます。法人税や地方税の納付額の計算の際に、控除されます。
ここで注意したいのが、受取配当等の益金不算入制度です。これは、配当金を受け取った場合、その配当金の一定金額を益金(収入)にしないという制度です。etfを保有することで受け取った収益分配金も、受取配当等の益金不算入制度の対象となります。法人税の計算時には、益金不算入を忘れないように気を付けましょう。
法人がetfを保有している場合の会計処理
法人がetfを保有している場合、出資時や収益分配金の受取時など、様々な時点で帳簿付けが必要になります。
ここでは、法人がetfを保有している場合の会計処理について見ていきましょう。
①出資時
普通預金10万円でetfを購入(出資)した。なお、購入手数料は1万円だった。
借方勘定科目 | 借方金額 | 貸方勘定科目 | 貸方金額 | 摘要 |
---|---|---|---|---|
投資有価証券 | 10万円 | 普通預金 | 11万円 | etf購入 |
投資有価証券 | 1万円 | 購入手数料 |
etfは、有価証券として会計処理します。短期所有目的の場合は「有価証券」勘定で、長期所有目的の場合は「投資有価証券」勘定で処理します。etfの購入手数料は、原則、有価証券として会計処理します。
②収益分配金の受取時
収益分配金は会計処理を継続することを条件に、受け取った日に収益にすることが認められています。
収益分配金1万円から所得税2,031円が差し引かれ、差額の7,969円が振り込まれた。
借方勘定科目 | 借方金額 | 貸方勘定科目 | 貸方金額 | 摘要 |
---|---|---|---|---|
普通預金 | 7,969円 | 受取配当金 | 1万円 | 収益分配金 |
仮払金 | 2,031円 | 源泉所得税等 |
差し引かれた所得税や地方税は「仮払金」や「預け金」などの資産科目で処理します。
③売却時(解約・償還時)
etf 11万円を20万円で売却した。売却手数料2万円が差し引かれ、18万円が普通預金に振り込まれた。
借方勘定科目 | 借方金額 | 貸方勘定科目 | 貸方金額 | 摘要 |
---|---|---|---|---|
普通預金 | 18万円 | 投資有価証券 | 11万円 | etf売却 |
支払手数料 | 2万円 | 有価証券売却損益 | 9万円 | 売却手数料 |
売却手数料は、「支配手数料」科目などの経費科目で処理します。
etfの取得原価と売却価格の差額は、「有価証券売却損益」などの損益科目で処理します。
④決算時の処理
・帳簿価額の期末評価
etfは市場があり、常に価格が変動しています。では、etfの帳簿価格は変動しなくてもよいのでしょうか。
実は、etfの帳簿価額の税法上の考え方は、etfを短期の売買目的で所有するのか、長期の投資目的で所有するのかで異なります。
etfを短期の売買目的で所有する場合は、決算日の価格で評価をする必要があります。ここでいう決算日の価格とは、終値のことです。
etfを長期の投資目的で所有する場合は、決算日の価格で評価をする必要はありません。
では、具体例を見てみましょう。
帳簿価額11万円のetfを所有している。決算日になって、所有しているetfの終値は12万円だった。なお、当社は短期の売買目的でetfを所有している。
借方勘定科目 | 借方金額 | 貸方勘定科目 | 貸方金額 | 摘要 |
---|---|---|---|---|
有価証券 | 12万円 | 有価証券 | 11万円 | etf |
有価証券評価損益 | 1万円 | 有価証券評価益 |
etfの帳簿価額と、決算日の時価との差額は、「有価証券評価損益」科目などの損益科目で処理します。
・収益分配金
収益分配金は、会計処理を継続することを条件に、受け取った日に収益にすることが認められていますが、原則は、収益分配金の計算期間が終了する日の属する事業年度に、収益にします。
この方法を採用する場合で、計算期間が終了する日と、収益分配金を受け取る日の年度が異なる場合は、決算日に、収益分配金の金額を未収入金として、計上することも可能です。
計算期間が終了し、収益分配金の金額1万円が決定した。なお、収益分配金の受け取りは、翌年度である。
借方勘定科目 | 借方金額 | 貸方勘定科目 | 貸方金額 | 摘要 |
---|---|---|---|---|
未収入金 | 1万円 | 受取配当金 | 1万円 | 収益分配金 |
まとめ
etfは、分散投資ができることや、長期投資が可能であることなどから、法人でも取得することが多いです。しかし、税金の計算方法や会計処理方法などは複雑なため、正しく処理をするためには、会計や税務の専門知識が必要になります。
etfを所有している場合の会計処理や税金で不明点がある場合は、税理士などの専門家に相談したほうがよいでしょう。