もしも法人の税金に延滞税・延滞金が プラスアルファされたら | MONEYIZM
 

もしも法人の税金に延滞税・延滞金が
プラスアルファされたら

延滞税や延滞金は「延滞」という文字が示す通り、法人にとってネガティブなものです。納付期限までにきちんと納付すれば、このような税金は発生しません。この余分なコストを掛けないように企業努力をするのはもちろんですが、ときには延滞が発生してしまう可能性があります。そこで、延滞税・延滞金への対処法を含めて徹底解説します。

延滞税・延滞金・利子税とは

納付期限までに税金を納めなかった場合に課税される延滞税・延滞金・利子税について説明します。

延滞税・延滞金・利子税の違い

「国税または地方税」と「税法上の手続きの有無」によって延滞税・延滞金・利子税になるかどうかが決まってきます。

(1)延滞税

延滞税は税務署に支払う国税であり、税金を納めるのを忘れていたなど税法上の手続きを踏まずに納付期限を過ぎた場合に課税されます。

(2)延滞金

延滞金は各自治体に支払う地方税です。納付期限を過ぎた場合に課税され、2つに区分されます。

 

  • 申告書の提出期限の延長手続きを踏んでいない場合…延滞金
  • 申告書の提出期限の延長手続きを踏んでいる場合…納期限の延長に係る延滞金
(3)利子税

利子税は国税で納付期限を過ぎた場合に課税される税金です。「申告書の延長手続き」や「所得税・相続税などの延納手続き」を踏んでいる点で同じ国税でも延滞税とは異なります。

課税されるケース

延滞税と延滞金は納付期限までに納付しないと課税されます。延滞税が課税される例としておもに次の内容が挙げられています。

 

  • (1) 納付期限までに税金を納めていない場合
  • (2) 税務調査などにより、税金が増額されたのにもかかわらず納付期限までに納めなかった場合

経費計上の可否

税法上の手続きの有無により経費に計上できるかどうかが決まってきます。

(1)延滞税・延滞金

国や自治体が課したペナルティーという位置づけであるため、経費計上が認められません。

(2)利子税・納期限延長による延滞金

税法上の手続きを踏んでいるため、事業活動に必要な費用として経費計上が認められます。

延滞税・延滞金の計算方法

中小零細企業にとって納付遅延によるコスト増は避けたいところでしょう。そこで、利息に相当する延滞税と延滞金の計算方法を見ていきましょう。計算式は「(税額×利率×計算期間(遅延した日数))÷365日」です。

延滞税・延滞金の利率

延滞税・延滞金の利率は遅延した日数に応じて決まってきます。詳しく見ていきましょう。

 

(例)平成30年1月1日から令和2年12月31日までの期間

遅延した日数 延滞税 延滞金
納付期限の翌日から1ヵ月間 年2.6%(特例基準割合+1%) 年2.6%(特例基準割合+1%)
納付期限の翌日から2ヵ月間 年8.9%(特例基準割合+7.3%)
納付期限の翌日から2ヵ月間を過ぎた場合 年8.9%(特例基準割合+7.3%)

 

納付期限とは次の通りになります。

 

  • 申告期限内に申告した場合には法定納期限
  • 「申告期限後に申告した場合」または「修正申告の場合」には申告書を提出した日
  • 更正・決定という行政処分手続により税務当局が計算し課税した場合には、更正通知書を発送した日から1月後の日

計算方法の具体例

例)納付期限が令和元年6月30日の法人税100万円を令和元年10月31日に納付した場合の延滞税

計算式:延滞税=①:納付期限の翌日から2ヵ月間+②:その後の納付の日まで

  • ①(100万円×2.6%×62日)/365日≒4,416円
  • ②(100万円×8.9%×61日)/365日≒14,873円

延滞税=①4,416円+②14,873円=19,289円

実際に徴収される金額:19,200円(100円未満は切り捨て)

延滞税の計算期間の特例

申告書を提出した場合、延滞税の計算期間に含めないで計算する特例があります。延滞税の計算期間から除かれる期間の一例は次の通りです。

(1)申告書を申告期限内に提出した場合

申告期限の翌日から1年を経過する日から「修正申告」または「更正」があったとき…申告期限の翌日から1年を経過する日~「修正申告書の提出日」または「更正通知書の発送日」までの期間

(2)申告書を申告期限より遅れて提出した場合

申告書の提出後1年を経過してから「修正申告」または「更正」があったとき…申告書の提出日の翌日から1年を経過する日~「修正申告書の提出日」または「更正通知書の発送日」までの期間

 

申告書を申告期限内に提出した場合を例に計算期間を見ていきましょう。申告期限と納付期限が平成29年1月31日の法人税を税務調査により30万円増額されて、令和2年1月31日に修正申告書の提出と納付をした場合、延滞税の計算期間は次の通りになります。

 

例:遅延した日数

  • ①納付期限の翌日(平成29年2月1日)~納付日(令和2年1月31日):1095日
  • ②計算期間に含めない特例期間
    申告期限の翌日(平成29年2月1日)から1年を経過する日(平成30年2月1日)~修正申告書の提出日(令和2年1月31日):730日
  • ③延滞税の計算期間
  • --------------------------------------------
  • ①1095日-②730日=365日

 

ただし、「無申告に基づき税額を決定した場合」や「脱税などにより偽りその他不正の行為により国税を免れた場合」には、計算期間に含めない特例の対象外になります。そのため、上記の例の場合には延滞税の計算期間は1095日になってしまいます。

延滞税・延滞金・利子税への対処法

コスト削減の視点から延滞税・延滞金・利子税への対処法について説明します。

納付期限までに税金を納めるのが基本

そもそも延滞税・延滞金・利子税は納税の遅延による金利に相当します。そのため、納付期限までに税金を納めれば余分な費用は発生しません。

申告期限の延長による利子税・延滞金の対処法

税法上の手続きを踏んでも、納付期限を過ぎれば利子税や申告期限の延長による延滞金は発生してしまいます。そこで、申告書を提出する前に予測した税額を納付するという見込納付をすることが可能です。たとえば、納付期限までに法人所得の計算が完了していないとします。本来納める法人税が98万円のところ、97万円と見込納付のほうが少なければ、差額の1万円が利子税の対象になります。一方、100万円と多く見込納付すれば、差額2万が還付されます。

銀行融資を受ける方法もある

税務調査により延滞税・延滞金のほかに加算税などのペナルティーが多額になった場合、納税資金を銀行融資により調達する方法もあります。この方法を採用することで、延滞税などの発生によりデメリットを軽くできます。

(1)差押えのリスクが軽減される

たとえば、延滞税などのペナルティーが500万円の場合、本税も含めて全額納付しないと差押えの対象になります。しかし、銀行融資を受けて納税すれば、「納付期限→金融機関への返済期限」と支払時期を先延ばしにできるのです。しかも、月賦払いで返済すれば、さらに支払時期が延びて、差押えのリスク回避につながります。

(2)借入金利息は経費に計上できる

延滞税などは経費に計上できませんが、借入金利子は経費に計上できます。そのため、節税面では借入金利子のほうに軍配が上がります。

まとめ

納付期限までに税金を納めないことで延滞税・延滞金・利子税という余分なコストが増えてしまいます。しかも、税法上の手続きを踏まないと、支払額を経費に計上できません。そのため、余分なコストを回避するためには事前に納税資金を確保することがポイントです。
 
現在は新型コロナウイルス感染拡大の影響で、納税が難しい法人も多いでしょう。納税が猶予される制度もありますので、国税庁などのホームページでご確認ください。

名称 課税する側 経費処理の可否 備考
延滞税 国税 経費に計上できない 税法上の手続きを踏んでいない
延滞金 地方税
申告期限の延長による延滞金 経費に計上できる 税法上の手続きを踏んでいる
利子税 国税
阿部正仁
TAX(税金)ライター。会計事務所で約10年間の勤務により調査能力を身に付けた結果、企業分析の能力では高い定評を得、法人から直接調査を依頼される実績も持つ。コーチングスキルを活かした取材力で、HP・メディアでは語られない発言を引き出すのが得意。
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