確定申告というと所得税に注目しますが、確定申告を終えた後には住民税も納めなければなりません。そのため、事前に納付税額を知っておくべきでしょう。そこで、個人に課税される住民税の仕組みと税金対策について詳しく解説します。
個人住民税の概要と納付手続き
個人住民税の概要と納付手続きについて説明します。
個人住民税の課税対象
個人住民税は「所得割」と「均等割」の2種類があり、課税対象は次の通りになります。
- 所得割:前年の1月1日~12月31日までの所得金額×税率10%
- 均等割:定額5,000円(令和5年度までは定額6,000円)
納付方法は2種類ある
住民税の納付方法は制度上、「特別徴収」と「普通徴収」の2種類あります。
(1)特別徴収
給与所得者と公的年金受給者に対して、支払者が特別徴収義務者となり、給与と公的年金から個人住民税を差し引き、納付する制度です。個人事業主の場合、給与の支払者となった場合に特別徴収義務者になります。
(2)普通徴収
区市町村から送付される納税通知書に基づき、年4回に分けて納付する制度です。個人事業主の場合、普通徴収により個人住民税を納めることになります。
住民税の手続き方法
個人住民税の計算から納付までの手続き方法について「特別徴収」と「普通徴収」に分けて説明します。
(1)特別徴収
給与所得者に対する特別徴収の仕組みを図で示すと次の通りになります。
①給与支払報告書の提出
事業主が計算した給与所得者の所得金額など前年のデータを給与支払報告書に記載し、毎年1月31日までに提出します。
②特別徴収税額の通知
上記①をもとに市区町村が個人住民税を計算し、特別徴収をすべき個人住民税を個人事業主に通知します。
③特別徴収税額の通知
個人事業主は上記②の個人住民税を給与所得者に通知します。
④給与から差し引き
個人住民税を差し引いて給与を支給します。
⑤差し引いた住民税を納入
上記④で差し引いた個人住民税を市区町村に納付します。
(2)普通徴収
上記(1)の特別徴収と同じように所得金額など前年のデータをもとに市区町村が個人住民税を計算します。具体的には所得税の確定申告書を税務署から市区町村に通知されるため、個人住民税の申告手続きは不要です。納税通知書に記載されている納付期限までに納付することになります。
個人住民税の計算方法
個人住民税は前年の所得金額をベースに計算するため、今年の業績や収入が悪化した場合には、納税資金の確保が大変になる可能性があります。それでは、個人住民税の計算方法について説明します。
所得金額の計算方法
個人住民税の所得割と所得税(確定申告の対象)で用いられる所得金額の計算方法は次のようにほぼ同じです。
もちろん、青色申告特別控除や青色事業専従者給与も所得税と同じように本人の所得金額から控除できます。ただし、所得控除の金額は所得税と異なります。
所得控除の金額
個人住民税の場合、所得控除の金額が所得税よりも少ない金額の項目が多いのが特徴です。それでは、所得税と比較しながら見ていきましょう。
種類 | 住民税 | 所得税 |
---|---|---|
雑損控除 | 次のうちいずれか多い方の金額 (1)損失額(保険金などの補てん額を除く)-総所得金額等×10% (2)災害関連支出の金額-5万円 |
|
医療費控除 | 次のいずれかの金額 (1)医療費-10万円または総所得金額等×5%のうち少ない金額(最高200万円) (2)OTC医薬品の購入費-1万2,000円(最高8万8,000円) |
|
社会保険料控除 | 前年の支払額と同額 | 今年の支払額と同額 |
小規模企業共済掛金控除 | ||
生命保険料控除(平成24年以降に加入したもの) | (1)一般の生命保険料・介護保険料・個人年金保険料の種類別:最高2万8,000円 | (1)一般の生命保険料・介護保険料・個人年金保険料の種類別:最高4万円 |
(2)トータル:最高7万円 | (2)トータル:最高12万円 | |
地震保険料控除 | 最高2万5,000円 | 最高5万円 |
障害者控除 | 障害者:26万円 | 障害者:27万円 |
特別障害者:30万円 | 特別障害者:40万円 | |
同居特別障害者:53万円 | 同居特別障害者:75万円 | |
寡婦(寡夫)控除 | 一般の寡婦または寡夫:26万円 | 本人が寡婦または寡夫:27万円 |
特定の寡婦:30万円 | 特定の寡婦:35万円 | |
勤労学生控除 | 26万円 | 27万円 |
配偶者控除(70歳未満) | 最高33万円 | 最高38万円 |
配偶者特別控除 | ||
扶養控除 | 一般の扶養親族(16歳以上19歳未満、23歳以上70歳未満):33万円 | 一般の扶養親族:38万円 |
特定扶養親族(19歳以上23歳未満):45万円 | 特定扶養親族:63万円 | |
老人扶養親族(70歳以上):38万円 | 老人扶養親族:48万円 | |
老人扶養親族のうち同居老親等:45万円 | 老人扶養親族のうち同居老親等:58万円 | |
基礎控除
令和2年まで:33万円令和元年まで:38万円 |
||
令和3年以降:最高43万円 | 令和2年以降:最高48万円 |
税額控除の種類
個人住民税も所得税と同じように税額控除が利用できます。そこで、おもな項目を取り上げます。
(1)住宅ローン控除
住宅ローン控除(年末ローン残高×1%)のうち、所得税から控除しきれなかった残額を個人住民税から控除できます。ただし、「総所得金額等×7%(上限13万6,500円)」が控除限度額になります。
(2)ふるさと納税
ふるさと納税は「所得控除」と「税額控除」を併用した制度で、最大「自治体への寄付金-2,000円」が個人住民税から控除できます。
(3)調整控除
個人住民税のみの制度で、数千円程度の税額控除ができます。所得税と住民税との配偶者控除や基礎控除などの人的控除に当たる所得控除の差額分(例 基礎控除「所得税38万円-住民税33万円=5万円」)をベースに計算します。
個人住民税の非課税制度
個人住民税の非課税対象者は次の通りになります。
- 生活保護受給者
- 前年中の合計所得金額が125万円以下(給与収入204万4,000円未満)の障害者・未成年者・寡婦・寡夫
- 前年中の合計所得金額が条例で定める金額以下の人(後述する)
個人住民税の税金対策
個人住民税の独自の税金対策について説明します。
ふるさと納税を活用する
「自治体への寄付金-2,000円」という最大額を税額控除することがふるさと納税を活用するポイントです。そのためには、ふるさと納税の利用枠を見極めることが大切になってきます。利用枠は所得金額に比例し、「全額控除されるふるさと納税額(年間上限)の目安」が参考になります。
非課税制度を利用する方法もある
個人事業主が非課税制度を利用する方法について説明します。
(1)本人
①障害者・未成年者・寡婦・寡夫の場合:事業所得などの合計所得金額を125万円以下にする
②上記①以外の場合:次の合計所得金額以下にする(千葉県柏市の場合)
扶養親族等の 合計人数 |
均等割と所得割が非課税となる所得金額 | 所得割のみ非課税となる所得金額 |
---|---|---|
1人(本人のみ) | 315,000円 | 350,000円 |
2人(扶養1人) | 819,000円 | 1,020,000円 |
3人(扶養2人) | 1,134,000円 | 1,370,000円 |
4人(扶養3人) | 1,449,000円 | 1,720,000円 |
納税準備預金を積み立てる
納税準備預金という納税資金の専用口座に積み立てる方法があります。引き出しは、原則として税金の納付のみで、税金対策のための預金という位置づけです。経費の支払いなどの運転資金に回せませんが、普通預金によりも利率は高めに設定されています。
まとめ
個人住民税は所得金額さえ分かれば、納付税額を予測することが可能です。特に前年より業績が落ち込む可能性がある場合、確定申告を提出期限ギリギリでするのではなく、早めに済ませることで、納税資金の確保に余裕を持たせましょう。
▼参照サイト
- https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000148322.html
- https://www.tax.metro.tokyo.lg.jp/kazei/kojin_ju.html
- https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/czaisei_seido/furusato/topics/20150401.html
- http://www.sawayaka-shinkin.co.jp/customer/deposit/tax/
- http://www.sawayaka-shinkin.co.jp/rate/rate_yokin.pdf
- https://www.soumu.go.jp/main_content/000602274.pdf
- https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1213.htm
- https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/czaisei_seido/furusato/mechanism/deduction.html#block02
- http://www.city.kashiwa.lg.jp/soshiki/040400/p004372.html