個人事業主とサラリーマンにかかる税金の違いを 徹底比較 | MONEYIZM
 

個人事業主とサラリーマンにかかる税金の違いを
徹底比較

「個人事業主は節税できる」
「サラリーマンは税金がごまかせない」
といわれていますが、これは同じ個人でありながら税金のルールが異なるためです。そのため、同額の収入でも個人事業主とサラリーマンの納税額にも差が出てきます。そこで、個人事業主とサラリーマンの税金について徹底比較します。

個人事業主とサラリーマンの税金

個人事業主とサラリーマンに課税される税金について説明します。

課税される税金の種類

個人事業主とサラリーマンに共通して課税される税金は所得税(復興特別所得税を含む)と住民税になります。1月1日~12月31日までに獲得した所得(もうけ)に税率(原則:所得税率5%~45%までの7段階、住民税10%)を掛けて計算します。

 

(所得税の税率)

課税される所得金額 税率 控除額
195万円以下 5% 0円
195万円を超え 330万円以下 10% 97,500円
330万円を超え 695万円以下 20% 427,500円
695万円を超え 900万円以下 23% 636,000円
900万円を超え 1,800万円以下 33% 1,536,000円
1,800万円を超え4,000万円以下 40% 2,796,000円
4,000万円超 45% 4,796,000円
出典:国税庁

 

また、70種類の法定業種を営む個人事業主に限り、事業税が課税されます。所得税と住民税と同じように1月1日~12月31日までに獲得した所得から年290万円の事業主控除を差し引いた残額に税率(3%~5%)を掛けて計算します。言い換えれば、所得金額が年290万円以下なら事業税は課税されません。

所得の種類

同じ所得であっても、個人事業主は事業所得(不動産所得)となるのに対し、勤務先から給料の支給を受けるサラリーマンは給与所得になります。

所得金額の計算方法

個人事業主とサラリーマンの所得金額の計算方法について比較しましょう。

必要経費と給与所得控除

所得金額を計算する際に収入金額から差し引く経費の計算方法が個人事業主とサラリーマンでは異なります。

(1)個人事業主

個人事業主は収入を得るために必要な費用は、実際に計算した金額を必要経費として計上します。そのため、領収書や請求書などの金額を自分で集計することになります。

(2)サラリーマン

サラリーマンなどの給与所得者は原則、必要経費を差し引くことができない代わりに給与所得控除を用います。給与所得控除は、給与収入に応じて自動的に計算します。令和2年以降の給与所得控除額は次の通りです。

給与等の収入金額
(給与所得の源泉徴収票の支払金額)
給与所得控除額
1,800,000円以下 収入金額×40%-100,000円
550,000円に満たない場合には、550,000円
1,800,000円超 3,600,000円以下 収入金額×30%+80,000円
3,600,000円超 6,600,000円以下 収入金額×20%+440,000円
6,600,000円超 8,500,000円以下 収入金額×10%+1,100,000円
8,500,000円超 1,950,000円(上限)
出典:国税庁

 

必要経費と給与所得控除には次の特徴が挙げられます。

①必要経費
  • 自分の意思で計上額をコントロールできる
  • 集計する手間がかかる
  • 基本的に現金支出が伴う
②給与所得控除
  • 自分の意志で計上額のコントロールができない
  • 自動計算するため、手間がかからない
  • 現金支出が伴わない

必要経費の計上範囲

個人事業主の必要経費に計上できる範囲は収入を得るために必要な費用であり、具体的には次の通りになります。

  • 売上原価
  • 給与、賃金
  • 地代、家賃
  • 消耗品
  • 外注費
  • 水道光熱費 など

 

たとえば、仕事に必要なパソコンを個人で購入したとします。個人事業主なら必要経費に計上できますが、サラリーマンにとっては節税にはなりません。

 

また個人事業主の場合、生活費のうち、業務の遂行に必要であると明らかな部分(事業割合)は必要経費に計上できます。自宅の30%を仕事用に使用している場合を例にすると、家賃のうち30%は必要経費として申告可能です。

青色申告特別控除も利用できる

青色申告特別控除とは、事業所得や不動産所得(山林所得を含む)の青色申告者である個人事業主に対する特典制度です。一定水準の帳簿を記帳した場合、所得金額から必要経費のほかに、10万円・55万円・65万円のいずれかの青色申告特別控除を利用できます。もちろん、いくらの所得控除を選ぶかは個人事業主が決定できます。必要経費と違い、現金支出を伴わない所得控除であり、給与所得控除とも共通する部分があります。

社会保険料の計算方法

個人事業主とサラリーマンは社会保険料の種類が異なります。そのため、個人事業主のほうが得するケースがあれば、サラリーマンよりも損するケースもあります。それでは、両者を比較しながら社会保険料の計算方法を見ていきましょう。

社会保険の種類

個人事業主とサラリーマンが加入する社会保険は原則、次の通りになります。

 

  • 個人事業主:国民年金と国民健康保険
  • サラリーマン:厚生年金と健康保険

 

国民年金と国民健康保険は自分で納付するのに対して、厚生年金と健康保険は給与・賞与から天引きされます。

国民年金と国民健康保険

国民年金は所得金額や収入金額に関係なく、個人単位で課税されます。支払額は一律で、令和2年度の場合は1万6,540円になります。また、前年の所得金額に応じて国民年金の免除制度があります。具体的には次の4つに区分されます。

 

区分 月額保険料の負担額(令和2年度)
全額免除 0円
4分の3免除 4,140円
半額免除 8,270円
4分の1免除 12,410円

また、免除する代わりに納付を先延ばしにできる「納付猶予制度」も利用可能です。

 

一方、国民健康保険は世帯単位で以下の4つを組み合わせて計算します。

 

  • 所得割:所得に応じて計算(所得額×料率)
  • 資産割:所有資産に応じて計算(固定資産税額×料率)
  • 均等割:世帯人数に応じて計算(加入者数×均等割額)
  • 平等割:1世帯あたりいくらと計算

 

なお、組み合わせの方法や料率は市区町村ごとに決まっています。

厚生年金と健康保険

厚生年金と健康保険は、「月給の額面金額などを区切りのよい幅で区分した標準報酬月額」と「賞与の額面金額から千円未満を切り捨てた標準賞与額」に応じ、個人単位で計算します。また、厚生年金と健康保険の負担額は本人と会社の折半になります。たとえば、東京都にある企業のサラリーマンの標準月額報酬が30万円とします。介護保険に加入していない場合、月額の厚生年金と健康保険は次の通りになります。

 

  全額 折半
厚生年金 29,610円 14,805円
健康保険 54,900円 27,450円
合計 84,510円 42,255円

まとめ

個人事業主とサラリーマンの税金の違いは納付税額に自分の意思が反映できるかどうかでしょう。個人事業主ならもうかった年に必要経費にお金を投入して節税可能です。しかし、サラリーマンの場合、年収が増えれば自動的に所得税と住民税も増額します。この記事を読んだのを機に個人事業主とサラリーマンの税金の特徴を比較してみてください。

阿部正仁
TAX(税金)ライター。会計事務所で約10年間の勤務により調査能力を身に付けた結果、企業分析の能力では高い定評を得、法人から直接調査を依頼される実績も持つ。コーチングスキルを活かした取材力で、HP・メディアでは語られない発言を引き出すのが得意。
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