個人事業主の皆さんにとって、軽視できない税の一つが個人事業税。その名の通り個人事業を営む場合に課される特有の税です。事業種によって税率が異なっていたり、所得額によっては課税がなされていなかったりとその実は様々です。申告書の提出の適切な提出方法などをおさえて、来る8月の納税日を気持ちよく迎えましょう!
個人事業税の適用要件
個人事業主が納めなくてはいけない税金の一つに個人事業税があります。個人事業税とは、地方税の一つで、個人が営む事業に対してかかる税金のことをいいます。基本的な適用要件として、法定業種の事業を行っている個人が納めるものと定められており、ほとんどの個人事業主が対象となります。
個人事業税では、事業種ごとに税率や課税の有無が決まっています。業種にフォーカスして見ていきましょう。
事業種ごとの税率
まず、どのような業種が個人事業税を納めなくてはいけないのかということ、またそれぞれの業種の税率について見ていきます。以下に、東京都の個人事業税の税率とその税率に当てはまる業種の一覧を表に表したものがあります。
この一覧を見て分かるように、基本的には税率は5%になっています。例外として、4%の業種には、畜産業や水産業、3%の業種には、マッサージ等の業種が入ります。この税率ですが、あとで個人事業税の金額の計算に使うので、自分の業種の税率を確認しておきましょう。なお、自治体によってこれと異なる税率が課される場合がありますので、手続きを行う際は各自治体の税率を確認するようにしてください。
税率5%の業種一覧 | |||
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(第1種事業) | |||
物品販売業 | 運送取扱業 | 料理店業 | 遊覧所業 |
保険業 | 船舶ていけい場業 | 飲食店業 | 商品取引業 |
金銭貸付業 | 倉庫業 | 周旋業 | 不動産売買業 |
物品貸付業 | 駐車場業 | 代理業 | 広告業 |
不動産貸付業 | 請負業 | 仲立業 | 興信所業 |
製造業 | 印刷業 | 問屋業 | 案内業 |
電気供給業 | 出版業 | 両替業 | 冠婚葬祭業 |
土石採取業 | 写真業 | 公衆浴場業(むし風呂等) | |
電気通信事業 | 席貸業 | 演劇興行業 | |
運送業 | 旅館業 | 遊技場業 | |
(第3種事業) | |||
医業 | 公証人業 | 設計監督者業 | 公衆浴場業(銭湯) |
歯科医業 | 弁理士業 | 不動産鑑定業 | 歯科衛生士業 |
薬剤師業 | 税理士業 | デザイン業 | 歯科技工士業 |
獣医業 | 公認会計士業 | 諸芸師匠業 | 測量士業 |
弁護士業 | 計理士業 | 理容業 | 土地家屋調査士業 |
司法書士業 | 社会保険労務士業 | 美容業 | 海事代理士業 |
行政書士業 | コンサルタント業 | クリーニング業 | 印刷製版業 |
税率4%の業種一覧 | ||
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(第2種事業) | ||
畜産業 | 水産業 | 薪炭製造業 |
税率3%の業種一覧 | |
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(第3種事業) | |
あんま・マッサージ又は指圧・はり・きゅう・柔道整復 その他の医業に類する事業 |
装蹄師業 |
課税されない場合
業種別の税率について確認しましたが、個人事業税が課税されない場合もあるので確認していきましょう。
課税されないパターンの1つ目としては、業種が個人事業税の対象外であるパターンがあります。基本的に先ほど示した表にない業種は個人事業税の対象外となります。代表的な業種でいうと、農業や林業などが挙げられます。
2つ目としては、先ほど示した表の業種にあてはまった場合でも、年間の事業所得が290万円以下である場合があります。これは、1年間営業した場合の事業主控除の控除額が290万円に設定されているためです。事業を開始あるいは廃止したことにより年間の営業期間が1年未満である場合は、控除額が変わってくるので、各自治体に確認しましょう。
以上の2つのパターンのいずれかに当てはまる場合は、個人事業税を納税する必要がないので注意しましょう。
複数業種を営んでいる場合
それでは、事業が複数業種にまたがる場合はどのようにすれば良いのでしょうか。結論としては、それぞれの業種の所得の割合を計算し、その割合に応じて所得全体を按分することでそれぞれの個人事業税を求めることになります。具体的には、次の項目で計算方法を説明するので、そこで解説します。
税額の計算方法
それでは、個人事業税の税額の計算方法について見ていきたいと思います。
計算に使う要素は、以下の6つがあります。
(1)事業の所得または(及び)不動産の所得
前年の1月1日から12月31日までの事業または(及び)不動産の総収入から、必要経費、各種控除額を控除して求められます。
(2)事業主と生計が同じである親族がその事業に従事している場合の所得税の控除額
(3)事業主と生計が同じである親族がその事業に従事している場合の個人事業税の控除額
青色申告の場合は、給与支払額です。白色申告の場合は、配偶者の場合が86万円で、それ以外の場合には1人50万円が限度となります。
(4)青色申告特別控除額
所得金額から最高65万円又は10万円を控除するというものです。青色申告者は要件を確認しましょう。
(5)各種控除額
青色申告の場合は、事業の所得が赤字になったとき、白色申告の場合は、自然災害や火災によって損失が出たときは、翌年以降3年間繰越控除ができます。また、機械などの事業用資産について譲渡損失が発生した場合、その譲渡損失は翌年以降3年間繰越控除できます。
また全ての事業主は、年間290万円の事業主控除が受けられます。
(6)税率
税額の計算式は、以上(1)~(6)を用いて、以下となります。
具体例で確認していきます。
飲食店業(税率5%)を営み、年間所得1000万円で、事業主の配偶者への給与支払額が100万円で青色申告していて、青色申告特別控除額65万円の対象であり、1年を通して事業を行ったため290万円の事業主控除を受けられる場合を考えます。
上記の計算式にあてはめると、
したがって、この例では38万7500円が個人事業税の金額と求められます。
次に、先ほどお話しした、複数業種にまたがっている場合の計算方法を見ていきます。
以下の計算を各業種で行って、それを全て足した金額が個人事業税の金額になります。
×対象の業種のうちその業種の所得の占める割合×(6)
=その業種の個人事業税の金額
たとえば、飲食店業(税率5%)と水産業(税率4%)を営んでいて、年間所得が、飲食店業で1000万円、水産業で500万円だとします。この場合、飲食店業と水産業を合わせた所得が500万円のうち、飲食店業が占める割合が3分の2で、水産業が占める割合が3分の1となります。
そこで、先ほどの計算式にのっとって、{(1)+(2)-(3)+(4)-(5)}をもとめ、飲食店業の事業税は、3分の2と税率5%を掛けることになります。つまり、{(1)+(2)-(3)+(4)-(5)}×2/3×5%=飲食店業の個人事業税の金額となります。水産業の事業税は、3分の1と税率4%を掛けることになります。つまり、{(1)+(2)-(3)+(4)-(5)}×1/3×4%=水産業の個人事業税の金額となります。これらを合わせた金額が、個人事業税の金額となります。
時期と手続き
ここまでで、個人事業税をいくら納めなくてはならないかについてマスターしました。それでは、この個人事業税をどのように納めれば良いのでしょうか。納税の時期と手続きの方法について確認していきます。
納税の時期
納税の時期は、一般的には8月と11月であり、2回に分けて個人事業税を納めることになります。地域によっては、8月に一括で納税できるところもあるので、自分の納めるべき自治体に確認しましょう。
手続き
3月15日までに前年中の所得について確定申告を行っていれば、8月に都道府県税事務所から納税通知書が郵送されるので、それに従って手続きを行います。8月に届かない場合もありますが、その場合は、納税通知書が定める時期までに納税します。
納税は、都道府県の税事務所・支庁の窓口、口座振替、コンビニエンスストア、クレジットカードで行います。コンビニエンスストアでの納付は、バーコード付きの30万円以下の領収書の場合のみ可能です。
これを毎年行うという流れになります。
事業税の損金算入について
最後に事業税の損金算入について見ていきます。結論から言うと、個人事業税は、損金算入することが可能です。損金算入とは、必要経費と見なして良いということです。税金であるのに損金算入できるという珍しいパターンですので、忘れずに損金算入するようにしましょう。
まとめ
今回は、個人事業税について確認してきました。この税金は、ほとんどの個人事業主のみなさんに当てはまる税金だと思います。事前に細かいところまでチェックして、余裕を持って8月の納税を迎えられるようにしましょう。