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もっと身近に!不服申し立てのいろは

何も悪いことはしていないはずなのに税務調査が来て、改善命令が出されてしまうこともあります。慣れない事態に慌ててしまったり、委縮してすべてを受け入れたりする必要はなく、受けた処分の取り消しや変更を求めることができる不服申し立ての制度があります。平成28年に新たに改正されたこともあり、他人ごとではない不服申し立てについて見識を深めましょう。

不服申し立ての対象となる処分

国税通則法の規定には、不服申し立ての対象となるのは、国税に関する法律に基づく処分とあります。より具体的には、税務署長、国税局長、税関長、国税庁長官がした処分、また、国税庁、国税局、税務署及び税関以外の行政機関の長又はその職員がした処分ということになります。例を挙げるならば、更正や決定などの課税処分、差し押さえなどの滞納処分等などがあります。
反対に不服申し立てができない場合としては、次の3つがあります。
(1) 自分で誤って納付税額を過大に申告した場合
(2) 納付税額を減少させる処分を受けた場合
(3) 還付金額を増加させる処分を受けた場合
これらに対し不服申し立てができない理由は、(1)は税務署長等から処分を受けていないため、(2)及び(3)については自己の権利や法律上の利益が侵害されていないためです。
逆に、ある処分によって権利又は法律上の利益が害された場合には、処分に関して第三者であっても不服申立てを行うことができます。

不服申し立ての方法

不服申し立ては、原則として処分の通知があった日の翌日から3ヶ月以内に行うことが求められます。
まず処分をした税務署長等に対して再調査の請求をするか、税務署等とは分離した国税庁の特別機関である国税不服審判所の所長に対して審査請求を行うかの、どちらかを選択します。そして再調査の請求書もしくは審査請求書を作成・提出します。この際、提出は持参でも送付でも構いませんし、国税電子申告・納税システム(e-Tax)を利用することもできます。また、これらの手続きには原則として費用はかかりません。
それでは2通りの不服申し立てについて、順に紹介していきましょう。

再調査の請求

不服のある処分を下した税務署長や国税局長に対して直接行う不服申し立てが、再調査の請求です。平成28年の制度改正以前には、異議申し立てという名称が用いられていました。再調査の請求書の規定の用紙に、不服を申し立てる処分の内容、再調査の請求の趣旨(取消し・一部取消し・変更)と、その理由などを記入して提出します。請求後、原則として3ヶ月以内に再調査の決定が下され、再調査決定書謄本が送達されます。
再調査の請求について決定について、なおも不服がある場合は、続いて国税不服審判所長に審査請求を行うことができます。この場合、再調査決定謄本の送達があった日の翌日から1ヶ月以内に審査請求書を提出しなければならない点に注意が必要です。

審査請求

審査に係る処分の内容、審査請求の趣旨と理由などを記入した審査請求書を、審査請求の目的となる処分を行った税務署長等の管轄区域を管轄する国税不服審判所支部(又は支所)に提出します。請求の審理手続きは、案件に関わっていないなどの要件を満たす審理員が行います。審理員意見書としてまとめられた結果が審査庁に送られると、審査庁は第三者機関に諮問を行います。
審査請求は最終的に、処分の取り消しなどを行う「認容」、請求に理由がないと判断する「棄却」、請求が不適法であるとする「却下」のいずれかに帰着します。審査請求書の提出から裁決書謄本の送達まで、個々のケースにもよりますが通常であれば1年の期間を要します。
裁決後の処分にまだ不服がある場合は、裁決があったことを知った日の翌日から6か月以内であれば、処分を取り消すよう裁判所に訴えることも可能です。その他の場合として、審査請求がされた日の翌日から3か月を経過しても裁決がないとき、裁決を経ずとも訴訟を起こすことができます。

平成28年度の改正について

国税通則法の大元にある行政不服審査法は、昭和37年に制定されてからというもの、実質的に改正されたことはありませんでした。制定から50年以上が経ち、その間の国民の権利意識の高まりや制度を取り巻く環境の変化を受け、平成26年6月に同法は改正されました。それに伴い国税通則法、そして国税不服申し立て制度も改正され、平成28年4月1日以降に行われた処分から新制度の適用が始まりました。
28年度の制度改正では、大別すると以下の5点の変更がありました。

1. 従来の税務署長等に対する異議申立てという名称が、再調査の請求へと変更されました。
2. 従来2ヶ月以内と定められていた不服申し立て可能期間が、「原則として処分があったことを知った日の翌日から3ヶ月以内」に延長されました。
3. 税務署長等が行った処分について、再調査の請求を経なくても、国税不服審判所長に対し、直接的に審査請求を行うことを選択できるようになりました。
4. 不服申し立てについての決定または裁決までに必要な標準的期間として「標準審理期間」を設けることで、不服申し立てを行った者の権利利益をスムーズに救済することが目指されるようになりました。上述のように、再調査の請求から決定までは3ヶ月、審査請求から裁決までは1年が、それぞれの標準審理期間とされます。
5. 審理手続きのうちに次の3つの改善が見られました。
①審理関係人が、自ら任意で提出した書類、または担当となった審判官が提出した書類などを閲覧ならびに写しの交付を求めたりできるようになりました。従来は処分庁が提出した書類に限り、閲覧のみが認められていました。
②審査請求時に機会が与えられる口頭意見陳述において、従来は口頭で意見を述べることしかできませんでしたが、処分庁への質問ができるようになりました。
③迅速かつ公正な審理を行うために、審判官は必要に応じて審理関係人を招集して、審理手続きの申し立てに関する意見の聴取を行えるようになりました。

不服申し立てをしなかった場合は?

不服申し立てをしなかった場合、国税に関する法律で本来守られているはずの自己の権利や法律上の利益が、侵害されてしまいかねません。それにより、大きな損をしたままになってしまう可能性もあります。

☆ヒント
一度受けた処分内容に対して不服を申し立てるという、ハードルの高い手続きにも精通している税理士をビスカスでは紹介しています。書類の提出期限が過ぎていて、不服申し立てができず損をしてしまった…などということが起こる前に、ぜひ一度ご検討ください。

まとめ

今回は、不服申し立てについて説明してきました。平成28年に改正され、私たち国民の権利を今までよりも保障してくれる制度になったところです。自分の払っている税金について見直す機会には、不服申し立てというシステムがあるということもぜひ頭に入れておきましょう。

山本麻衣
東京大学卒。現、同大学院所属。
学生起業、海外企業のインターンなどの経験を経て、外資系のコンサルティング会社に内定。
自分の起業の経験などを踏まえてノウハウなどを解説していきます。
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