確定申告によって受け取ることができる還付金。その仕組みを意識したことは意外にないかもしれません。確定申告が義務ではない人にとってはなおさら馴染みがないかもしれませんが、実は年末調整ではカバーできない控除分を還付金で受け取れたりもするのです。今回はこの還付金について紹介します。
還付金とは?
還付金とは、所得税を支払いすぎている等の理由で、納税者に返還されるべきお金を指します。還付金は、給与から源泉徴収された所得税や予定納税した所得税の額が、年間の所得金額に基づいて計算した本来支払うべきである所得税額よりも多い時に生じるものです。このような場合、納税者の申告を受けて還付金が支払われることになります。また、給与所得者など、確定申告を行う義務のない人でも申告をすることによって納めすぎた税金を還付金として受け取ることができる場合もあります。このような場合については後半で紹介します。
還付金受け取りまでの期間
申告書を提出した後、申告書の記載内容や添付書類等の審査など、支払手続を適正に行うための所要の処理を正確に行う必要があることから、実際に還付金を受け取るまでにはある程度の日数がかかります。特に、2月から3月にかけては税務署の繁忙期にあたりますので、書面の場合には申告書の提出から還付金の受け取りまでには1ヶ月から1ヶ月半ほどの期間が必要になります。e-Tax(電子申告)の場合には、その期間は3週間ほどにまで短縮されます。
還付金の受け取り方
還付金を受け取る方法は、預貯金口座への振り込み、もしくは最寄りのゆうちょ銀行各店舗ないし郵便局窓口での受け取りの2通りがあります。口座への振り込みを選択する場合は、
1.口座の名義が還付申告者本人であること
2.旧姓の口座ではないこと
3.氏名のほかに、店名や事務所名といった事柄が名義に入っていないこと
4.還付金受け取りに対応した金融機関の口座であること
をチェックするようにしましょう。原則として、銀行、信用金庫、信用組合、労働金庫、農業協同組合、漁業協同組合及び信用漁業組合連合会の預貯金口座に振込み可能です。ただしインターネット専用銀行については、特定の銀行を除いて還付金の振込みはできませんので、振込みの可否について、取引している銀行に事前に問い合わせるようにしましょう。
最寄りのゆうちょ銀行各店舗や郵便局の窓口で受け取る際には、後日送付される国庫金送金通知書、身分証明書や運転免許証もしくは国民保険被保険者証などといった本人確認書類(代理人が受け取る際には代理人のもの)を持参するようにしてください。
確定申告が義務でなくても還付金を受け取れるケース
確定申告が義務の個人事業主の方などは、還付金がある場合には確定申告と同時に還付申告も済んだことになります。一方、給与所得者など確定申告が義務でない人でも、申告をすれば還付金を受け取れるケースがいくつか存在します。そのような例を以下にまとめました。
年度の途中で退職し、年末調整を受けていない場合
給与所得者は基本的に所得税を毎月の給料やボーナスから源泉徴収されています。この源泉徴収は概算で行われるため実際に納める必要のある税額との間に乖離が生じることがあります。通常この乖離を解消するのが年末調整ですが、年度の途中で退職し、その後も再就職しなければ年末調整を受けられませんので、その結果税金が納めすぎになっている場合は確定申告により還付金を受け取ることができます。
年末調整では処理できない控除に該当する場合
年末調整で処理することができない控除には、主なものとして雑損控除、医療費控除、ふるさと納税などの寄付金控除の3つがあります。この3つの控除に該当する場合、還付を申請すれば還付金を受け取ることができます。
控除 | 該当する場合 | 備考 |
---|---|---|
雑損控除 | 災害や盗難、横領によって資産に損害が及んだ場合。 | 金額など詳しくはこちらを参照してください。 |
医療費控除 | その年の1月1日から12月31日までの間に、自己又は自己と生計を一にする配偶者やその他の親族のために医療費を支払った場合。 | 10万円以上を医療費に費やした際に適用されます。金額など詳しくはこちらを参照してください。 |
寄附金控除 | 国や地方公共団体、特定公益増進法人などに対して「特定寄附金」を支出した場合。 | 特定寄附金の定義や控除の金額についてはこちらを参照してください。 |
住宅ローンがある場合
住宅ローン等を利用してマイホームを新築したり、取得した場合、一定の条件の下では住宅ローン控除が適用されます。住宅ローン控除は数年にわたり適用され、給与所得者は2年目以降は年末調整のみで対応可能ですが、一年目に関しては確定申告を行って還付金を受け取らなければならないので注意しましょう。
還付申告の期限
還付金を受け取るためには、提出時の納税地を管轄する税務署長に対して還付申告書と呼ばれる書類を提出する必要があります。還付申告書の提出期限は確定申告の期間とは無関係で、該当する年の翌年1月1日から5年間の間提出することが可能です。また、すでに還付申告を済ませていて、その申告金額が小さすぎた場合には、原則として還付申告書の提出日から5年以内であれば、更正の請求という手続きを通じて納めすぎている所得税の還付を受けることが可能です。
ただし、個人事業主の方の場合は確定申告をすることによって、還付金がある場合にはそのタイミングで還付金の申告も済んだことになります。確定申告の結果が納税ではなく還付となる場合は、仮に申告が遅れたとしても延納税のようなペナルティは存在しません。還付の申告の期限は5年間だからです。ただし、青色申告の場合は注意が必要です。というのも、青色申告の人は確定申告が遅れてしまった場合、特別控除の枠が65万円から10万円にまで減額されてしまうからです。控除が減れば支払わなければならない税額は増加しますから、結果として還付金の減額どころか、むしろ納税しなくてはならなくなる可能性も浮上してきます。やはり、確定申告は期限内に済ませるに越したことはありませんね。
まとめ
本来納めるべき額よりも多く納税してしまっている場合、還付金という形でそれを受け取ることができるという内容でした。個人事業主の方などは毎年の確定申告の中で、給与所得者の方であっても、本来は義務ではない確定申告をすることで還付金を申告することができます。還付申告はそのシステムが確定申告と類似している部分が多い一方で、期限などの面では違いもありました。還付金の制度をしっかりと理解したうえで、納めすぎた税金をもれなく受け取れるようにしておきましょう!