フリーランスが自己破産を申請するには? 自己破産の仕組みと手続きについて解説 | MONEYIZM
 

フリーランスが自己破産を申請するには?
自己破産の仕組みと手続きについて解説

近年、企業の枠にとらわれないフリーランスとして働く人が増えています。フリーランスの働き方には「自分のスキルを存分に発揮することができる」「時間帯や場所など、より自分の都合の良い環境下で働くことが可能」といったメリットがある反面、ストレス・労務管理・保険の面などリスクが大きいことも事実です。中小企業庁が行った調査ではフリーランスとして開業した事業の10年生存率は10%弱という結果も出ており、非常に厳しい業態であることがわかっています。

この記事ではこうした現況を踏まえ、実際にフリーランスが自己破産申立てを検討する際の手続きの流れなどをわかりやすく解説します。

フリーランスでも破産申請はできる?

フリーランスでも破産申立てをすることは可能です。破産は「債務整理」をするときの最後の手段です。債務整理には3つの種類があります。

 

  • 任意整理
  • 個人再生
  • 自己破産

 

破産手続きを開始すると破産者の有する一切の財産が「破産財団」に組み込まれます。信用情報機関へ情報が登録され新規の借り入れが難しくなったり、クレジットカードの利用ができなくなったりする可能性もあるため、自己破産を選択する前にしっかりと検討することが必要です。

 

☆ヒント
「自己破産」は最後の選択肢です。借金問題は破産申立て前に税理士に相談することで解決することも多く、経営改善・コストの見直し・融資・補助金など、自己破産を選ぶ前に採ることができる手段は多数あります。まずは自分が属している業界に詳しい税理士に相談した上で、どういった手段が適しているのかを確認しましょう。

自己破産の手続き

弁護士に相談する(委任契約と受任通知)

自己破産の前に任意で債務を整理する際は弁護士に相談するのが良いでしょう。自己破産とそれに伴う免責は申立てさえすれば無条件に認められるというわけではありません。実際に支払不能に陥ってしまっていること・免責不許可事由がないことなどのさまざまな要件を満たす必要があります。事前に法律相談の形で債務額やその内容・収支状況などを確認したうえで、弁護士と相談してどのような手続きを利用することが適切なのか助言をもらうと良いでしょう。この助言に納得ができた場合には、正式に自己破産手続き申し立ての「委任契約」を結ぶことになります。

 

弁護士との間で委任契約が成立すると、債権者へ「受任通知」が発送されます。受任通知は簡単にいえば「担当弁護士が案件について確かに引き受けました」という内容を知らせるためのものです。これには「以後の連絡は本人ではなく、代理人たる弁護士を通すようにしてください」という意味も含まれています。消費者金融・銀行などの「貸金業者」はこの通知を受け取った後は原則として本人に督促を行わないことになっているため、取り立てを受けることがありません。

債権の調査・自己破産申し立て

受任通知は貸金業者に対して取引の履歴の提出を求め、その他の債権者に対しては債権の届出をお願いするものでもあります。貸金業者はこの求めに応じて取引履歴を弁護士へ送り、担当弁護士がその履歴をもとに「債権の調査」を行います。借り入れが長期にわたって続いている場合は、違法な利率で請求を受けていた可能性も考えられます。こうした点を改めて調査することで債務の総額を減らしたり、違法に取得した利息分を返すよう主張する「過払い金返還請求」を行ったりできる場合もあるでしょう。

 

貸金業者以外の債権者からの届出についても、同様にその内容を精査します。これは3ヶ月程度の期間をかけて行われるため、依頼者はその間は分割で弁護士費用を支払わなければなりません。またフリーランスの自己破産案件の場合は通常「管財事件」の扱いとなるため、裁判所へ支払うための引き継ぎ予納金もこの期間中に準備しておきましょう。

 

自己破産申し立ての準備は、こうした各費用の準備に見通しが立った段階から始まります。自己破産は裁判所に対して「破産申立書」「添付書類」を提出することで申し立てを行うものです。破産申立書の記載内容は弁護士が本人から事情を聞いたうえで作成します。添付書類も依頼者本人が取り寄せなければならないものがあります。弁護士と協力しながら破産申立書の作成・添付書類の収集を行っていくことになります。

 

破産申立書・添付書類が揃ったら、裁判所に対してこれらの書類を提出して「破産申立」を行います。裁判所はこれに応じて破産手続きの開始決定を行います。「管財事件」となるフリーランスの自己破産では「破産管財人」を選定して調査にあたらせることになります。以降は破産管財人を中心に手続きを進めていくのが一般的です。破産手続きの開始に伴う引っ越しの制限・郵便物の転送といった措置は、この段階から始まります。

破産管財人による調査・債権者集会

裁判所へ提出された「破産申立書」と「添付書類」の内容に基づいて、選定された「破産管財人」による調査が始まります。この時、フリーランスの場合には管財人の主導で「破産財団」を構成し、債権者への「配当」へ充てることになります。

 

自己破産を行う際には破産者が有するほとんどすべての財産が破産財団へと組み込まれるため、事業で活用されてきた資産の他、例えば破産者個人が所有する「土地」「建物・設備」「預金・現金」などを現金化したものは破産財団のものとして扱われます。また配当は身近な言葉では「返済」にあたるもので、これらを現金化して債権者それぞれが持っている債権額の割合に応じ、配分がなされていくのです。

 

破産管財人の調査が終了した段階で、その内容を債権者の前で報告する「債権者集会」が行われます。ここでの債権者の最大の関心事は配当の有無ですが、例えば東京地方裁判所における債権者集会では、40万円以上の破産財団が存在する場合に限り配当を検討することになっています。破産財団を構成できるほどの資産が残っていない場合はこの配当手続きは行われず、破産管財人からその旨の報告がなされて債権者集会は終了となり、手続き全体の終結へ向かうことになるでしょう。

手続き終了・免責

債権者集会の終了後には、破産者の残りの債務、つまり借金を免責しても構わないかどうかを判断するための「免責手続」が行われます。免責手続きは自己破産の手続きとは別で行われ、裁判所に対して「免責許可申出書」を提出するところから始まります。「免責審尋」にて必要な調査・破産者への聴取を行い、債権者にも免責を与えることに関する意見を求め、破産者本人の口から債権者への謝罪・反省の意を表す機会もあります。この際、「今後はしっかりと生活を送っていく」旨を誓うのが一般的です。

 

この免責手続で特に問題がないと判断された場合には、後日裁判所からの許可決定が送付されます。この時点で自己破産に関わる手続きはすべて終了し、破産手続き開始後の制限も解除されます。残った債務に対する免責が与えられ、新しい人生を歩んでいくことが可能となるのです。

まとめ

フリーランスが膨らんだ債務によって事業をたたむことを余儀なくされた場合にも、通常の事業主と同様に「破産手続き」を行うことが可能です。しかしこの破産手続きを行うと信用情報機関へと登録され、いわゆる「ブラックリストに載った」状態になります。結果として新規の借り入れが難しくなるなどの不利益が発生してしまうため、可能な限り経営改善を目指すことが重要です。

 

税のプロフェッショナルである税理士は節税などの知識を借金問題の解決に役立てることもできます。借金でお困りのフリーランスの方はまず一度、税理士へご相談ください。
 

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永井綾
慶應大学法学部卒。 外資系コンサルティング会社に勤務後、某有名法律事務所に転職し、広報業務に携わる。 コンサルティング業務での幅広い業界知識と、法学部・法律事務所で培った知識を解説します。
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