新型コロナウイルスの影響により、注目を集めているが「みなし失業」です。みなし失業の制度は、簡単にいうと「実際は失業していないが、失業とみなして様々な助成を受けられるようにする」というものです。しかし、みなし失業の詳細を知らないという人も多いでしょう。
そこでここでは、みなし失業の内容や手続きについて徹底解説します。
みなし失業とは
まず「みなし失業」とは何か、その内容を見ていきましょう。
失業とは、自己都合や解雇などで勤めていた会社をやめ、働いていない状態のことをいいます。そして、みなし失業とは、休業状態が続いている場合に、実際には失業はしていないが、休業状態を一時的に失業とみなすというものです。
では、なぜ休業を失業とみなす必要があるのでしょうか。それは、失業保険を受け取るためです。失業保険は、会社をやめていないと受け取ることができません。しかし、みなし失業と認定されると、会社に雇用された状態でも、失業手当を受けられるようになり、休業状態でも安心して生活できます。
新型コロナウイルスの影響拡大により、条件を満たせば、みなし失業制度が適用できるようになりました。具体的には、中小企業の従業員に対し、休業前賃金の80%(月額上限33万円)の支給が受けられるというものになっています。対象となる賃金は、休業を開始した月の前の6か月から、いずれか3か月を選択し、その平均月給です。
みなし失業の条件と手続き
みなし失業は、会社で雇用された状態で、失業手当を受けられる有利な制度です。そのため、みなし失業制度を利用するためには、いくつかの条件があり、従業員が手続きを行う必要があります。
そこでここでは、みなし失業の条件と手続きを見ていきましょう。
みなし失業の条件とは
みなし失業の条件は、次のすべてに該当する必要があります。
- ①新型コロナウイルスの影響で、令和2年4月1日~9月30日までの間に事業主が休業させていること
- ②①において、休業した期間の全日数、もしくは一部の日数について給与が支払われなかったこと
- ③勤めている会社が中小企業であること
ここでいう中小企業とは、資本金の金額と雇用している従業員が次の基準以下のものをいいます。- 資本金:小売業・サービス業5,000万円以下 卸売業1億円以下 その他の業種3億円以下 かつ
- 従業員:小売業50人以下 卸売業・サービス業100人以下 その他の業種300人以下
- ④勤めている企業が雇用保険に加入していること
みなし失業制度の手続き
上記のみなし失業の条件に該当する従業員は、みなし失業手当(正式名称を「新型コロナウイルス感染症対応休業支援金」といいます)を受け取れます。
このみなし失業手当は、勤めている会社から支給されるのではなく、国から直接従業員の口座に振り込まれます。そのため、従業員自ら、国に申請を行う必要があります。みなし失業手当を受け取る場合の手続きの流れは、次のようになります。
- ①勤めている企業から、休業証明書等を受け取る
- ②従業員がハローワークに申請する
- ③申請に問題がなければ従業員の口座に支援金が給付される
みなし失業手当を受給するためには、勤めている会社の所在地を管轄する都道府県労働局長に対して、賃金日額の算定の基礎となる情報や休業したことの情報、その他必要な事項を記載した書類(休業証明書など)を提出する必要があります。実際には、ハローワークで申請を行います。
みなし失業制度のメリットとデメリット
みなし失業制度は、とても有用な制度ですが、メリットとともにデメリットもあります。そのため、みなし失業制度の利用を考える際には、メリットとデメリットをしっかり理解しておくことが重要です。
そこでここでは、みなし失業制度のメリットとデメリットについて見ていきましょう。
みなし失業制度のメリット
みなし失業制度は、会社側、従業員側それぞれに次のようなメリットがあります。
①会社側のメリット
・金銭面での負担が減る
みなし失業制度と似た制度に「雇用調整助成金」があります。雇用調整助成金とは、休業する会社に、休業手当の一部を助成するというものです。雇用調整助成金では、先に会社が従業員に休業手当を支払うため、お金が必要です。
一方、みなし失業制度の場合は、支援金が直接従業員の口座に振り込まれるため、会社が支払いをする必要がありません。そのため、金銭面の負担が減るメリットがあります。
・倒産や解雇をしなくても良い
新型コロナウイルスの影響を受けた会社にとって、最も重要なのが事業を継続することです。そのため、資金難による倒産は避ける必要があります。また、新型コロナウイルス終息後に事業を継続するためには、従業員の確保が最重要です。
みなし失業制度では、休業手当の支払いをするお金を用意する必要がないため、資金難による倒産を防ぐことができます。また、従業員を会社に在籍させながら支援金を受け取れるため、従業員の解雇をする必要もありません。
②従業員側のメリット
・安心して生活できる
従業員のメリットとして最も大きいのが、お金の心配がなく、安心して生活できることです。支援金を受け取れるだけでなく、会社に解雇される心配もなくなります。
・休業手当をもらえないという不安がない
雇用調整助成金で問題となったのは、雇用調整助成金の手続きが複雑(今は簡便化しています)であることや、支給が遅いなどの理由から、会社が雇用調整助成金の制度を利用しない点です。そのため、従業員は休業手当をもらえない不安があります。
一方、みなし失業制度の場合は、支援金が直接従業員の口座に振り込まれるため、休業手当をもらえないという不安がありません。
みなし失業制度のデメリット
つぎに、みなし失業制度のデメリットを見ていきましょう。みなし失業制度のデメリットは、主に従業員側のデメリットになります。
- 申請のための書類を会社側が発行する必要がある
みなし失業制度の申請には、休業証明書といった申請のための書類を会社側が発行する必要があります。
そのため、会社が休業していて、申請書を作成する人がいないなどの理由で、休業証明書の発行が遅くなると、支援金の申請や支給も遅くなり、生活に窮する可能性があります。 - 雇用保険に加入していない可能性がある
みなし失業制度を利用するためには、雇用保険に加入している必要があります。しかし、アルバイトやパートの場合は労働時間が少なく、雇用保険に加入していないケースもあります。その場合は、支援金を受け取れません。 - 支給までに時間がかかる恐れがある
持続化給付金や定額給付金など、他の給付金では申込件数が多く、役所などの処理が間に合わないため、申請から支給までの時間が長くなっているケースがでています。
みなし失業手当の郵送申請が7/10から始まりました。労働者による直接申請・雇用主経由申請のいずれも可能です。なお、オンライン申請については7/19現在、準備中とのことです。
申請の窓口は厚生労働省のみとなっているため、申請から支給までに時間がかかる可能性もあります。申請方法など詳細は、厚生労働省のホームページをご覧ください。
まとめ
みなし失業手当(新型コロナウイルス感染症対応休業支援金)は、雇用調整助成金の申請数が伸び悩む中で、導入された制度です。雇用調整助成金と違い、直接、従業員に支援金を支給するため、従業員にとってはとてもありがたい制度です。
しかし、すべての手続きを従業員自らができるわけではなく、会社から休業証明書といった申請のための書類を発行してもらう必要があります。
みなし失業手当の申請を考える場合は、できるだけ早く、会社にみなし失業手当の申請をする旨の報告や、書類の発行の請求などを行いましょう。