仕事に必要不可欠なのがスマートフォン。会社でスマホを所有しているケースも多いです。しかし、次々と最新モデルが出るため、どのスマホを選べばよいか迷うこともあるでしょう。
では、所有するスマホのモデルによって、税金に違いが出るのでしょうか。ここでは最新スマホと型落ちのスマホにかかる税金の違いを解説します。
そもそもスマホは経費になる?スマホ所有で計上できる経費とは
まず、スマホのモデルの新旧に関係なく、会社で所有しているスマホが経費になるのかどうかについて見ていきましょう。
そもそも経費になるのは、事業に関係しているかどうかが重要です。そのため、取引先との連絡用としてスマホを所有しているなど、仕事で使っているスマホは経費にできます。仕事で使っている場合のスマホにかかわる主な経費として、次のようなものがあります。
- 本体代
本体代(付属品を含む)が10万円未満のスマホの場合は、「消耗品費」勘定などの経費にすることができます。型落ちスマホの場合は、消耗品費になるものが多いです。 - 減価償却費
本体代(付属品を含む)が10万円以上のスマホの場合は、購入金額を一括で経費にすることができません。いったん「工具器具備品」勘定などの固定資産に計上し、毎年購入金額を少しずつ経費にしていきます。毎年、購入金額を少しずつ経費にすることを「減価償却」、その経費を「減価償却費」といいます。
ただし、青色申告をしている場合は、30万円までの資産を一括で経費にできる「少額減価償却資産の特例」を適用することができます。 - 通話・通信代金
携帯電話での通話や、インターネットの通信代金、その他関連サービスなども経費になります。それぞれを分けて仕訳する必要はなく、「通信費」勘定などの経費科目で処理します。 - 修理代金
数万円程度の修理代金であれば、「修繕費」勘定などの経費科目で処理します。
最新スマホと型落ちのスマホで、税金が変わる?償却資産税とは
最新スマホ、型落ちスマホに関係なく、仕事で使っているスマホは経費にできます。そのため、所得税や法人税などの税金は、高いスマホでなければ、最新スマホ、型落ちスマホの違いでそこまで影響を受けません。
しかし、最新スマホと型落ちのスマホで、税額が変わる可能性が高い税金もあります。
それが償却資産税です。ここでは、償却資産税とスマホの関係について見ていきましょう。
償却資産税とはどんな税金?
個人や会社では、不動産や自動車などさまざまな固定資産を所有しています。土地や建物などの不動産を所有している場合には固定資産税、自動車を所有している場合は自動車税がかかります。
同じように、事業で使っている機械装置や工具器具備品などの固定資産にも税金がかかります。それが「償却資産税」です。
具体的には、1月1日の時点で所有している資産について、償却資産税が課されます。1月1日の時点の資産価格を基準に算出された税額を、各市区町村に支払うことになります。
最新スマホの場合は、償却資産税がかかる可能性もある
償却資産税は、事業で使っている固定資産に課される税金です。では、スマホの場合はどうなるのでしょうか。スマホの場合も、原則、本体代が10万円以上で固定資産になるものについては、償却資産税の対象になります。
では、本体代は10万円以上だが、30万円までの資産を一括で経費にできる「少額減価償却資産の特例」を適用し、本体代を経費にしている場合はどうなるのでしょうか。実は、この場合も、償却資産税の対象になります。償却資産税は次の計算式で計算します。
税率は各自治体によって異なります。目安として標準税率1.4%が設定されています。
例えば、課税標準額15万円の最新スマホを所有している場合は、標準税率で計算すると
課税標準額15万円×標準税率1.4%=2,100円の償却資産税を納める必要があります。ただし、償却資産税は、所有している資産の課税標準額が合計150万円未満の場合は課税されません。
上で計算したように、最新スマホにかかる償却資産税の金額そのものは小さい金額です。しかし、他の資産と合わせると課税標準額合計が150万円をこえ、今まで償却資産税の納付がなかったのに、突然納付が発生する可能性もあります。よって、課税標準額合計が150万円に近い場合で、10万円以上の最新スマホを購入した場合は注意が必要です。
10万円未満の型落ちスマホの場合は、償却資産税を気にする必要はありません。そのため、償却資産税のことを考えると、型落ちスマホの方が有利になることがあります。
スマホの代金は、消費税の経費になる
事業をしている場合に注意したい税金のひとつに、消費税があります。納める消費税の金額を低くするためには、消費税の経費を増やす必要があります。
スマホの代金は、消費税の経費になります。ここでは、スマホの代金と消費税の関係について見ていきます。
消費税の計算方法とは?本則課税と簡易課税
消費税には、本則課税と簡易課税という2つの税額の計算方法があります。実は、スマホの代金が消費税の経費になるのは、本則課税のみです。スマホの代金が消費税の経費になることを理解するために、本則課税と簡易課税それぞれの計算方法を確認していきましょう。
①本則課税
本則課税とは、消費税の計算で原則となる方法です。簡単にいうと売上にかかる消費税の金額から、仕入や経費などにかかる消費税の金額を差し引いて、納める消費税の金額を求めます。計算式にすると次のようになります。
②簡易課税
簡易課税とは、前々年度の課税売上高が5,000万円以下の場合に、本則課税に代えて用いることのできる消費税の特例的な計算方法です。
簡単にいうと、売上にかかる消費税の金額だけを使って消費税の納付額を計算します。
売上げを卸売業、小売業などの6つの業種で区分し、卸売業なら90%、小売業なら80%といったように、それぞれの区分ごとに定められたみなし仕入率を使って、仕入や経費などにかかる消費税の金額を求めます。計算式にすると次のようになります。
本則課税の場合は、スマホの代金は消費税の経費になる
消費税の計算方法には、本則課税と簡易課税の2つがありましたが、簡易課税では、経費の金額を用いず、消費税の納付額を計算します。そのため、スマホの代金は、消費税の経費になりません。スマホの代金が消費税の経費になるのは、本則課税の場合です。具体例を見てみましょう。
例)売上高110万円、仕入高55万円、スマホ代金11万円の場合 すべて税込価格とする。
①売上にかかる消費税額
②仕入などにかかる消費税額
③消費税の納付額
このようにスマホの代金は、消費税の経費になります。
納める消費税の金額を低くするためには、スマホ代金が高い方が有利です。価格の高い最新スマホの方が、消費税の節税には有利になるでしょう。
まとめ
原則、最新スマホ、型落ちスマホに関係なく、スマホに関する支出は経費になります。ただし、償却資産税では、税金を支払う必要のある10万円以上する最新スマホよりも、型落ちスマホのほうが有利です。
一方、消費税の節税という点では、価格の高い最新スマホのほうが有利です。会社でスマホの購入を検討する場合は、機能だけでなく、税金面も考慮してみてはいかがでしょうか。