調査官が来るのは、8月から12月。そのわけは?
~「税務調査」にはこう臨む・その1~

調査官が来るのは、8月から12月。そのわけは?  ~「税務調査」にはこう臨む・その1~

2019/4/15

 
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ある日、以前に行った税務申告の中身について税務署が調査に入る、という連絡が。初めてそんな場面に直面すれば、誰しもドキッとするでしょう。でも、年間30件ほどの税務調査を対応している税理士法人エム・エム・アイの高橋節男先生は、「調査は誰のところにも来ると思ってください。不正を働いているのでなければ、なんら怖がる必要はありません」と話します。そもそも、税務調査とは何なのか? まずは、そこから説明していただきましょう。

調査は任意。事前に連絡がある

今回は、税務調査についてうかがいます。その言葉はよく耳にするのですが、経験した人でないと、どういうものなのか実はよくわからないですよね。突然、大人数で踏み込んでくる「マルサ」のイメージだったり。
それは国税局査察部というところが行う強制捜査です。納税に関する不正を働いている疑いの強い会社に、その証拠固めのために入るんですね。一般的な税務調査では、調査官がいきなりやってくるようなことは、基本的にありません。
 税理士の代理権限証書付きで税務申告が行われていれば、まずその税理士に連絡が入ります。調査も任意ですから、理屈の上では拒否することもできる。まあ、頑なに拒んだりすれば、「何かあるのではないか」という疑いを深める結果になる可能性が高いとは思いますが。
すべて税務署の言いなりに従う必要はないということですね。
例えば、飲食業などの現金商売をやっているところには、調査官が突然やってくることもあるんですよ。レジまわり、要するに手元の現金と伝票の金額が一致しているか、といった現金実査が目的です。事前連絡して帳尻を合わされてしまったら意味がない、という彼らなりの思惑があるわけですね。ただ、そうした場合でも、その場に責任者がいなければ、調査を待たせることはできますし、顧問税理士の立ち合いを求めることもできます。
急な調査に動揺してきちんとした説明ができなかったりすれば、いたずらに不利な立場に置かれてしまうかもしれません。
そういうことです。
 ちなみに、任意調査にも税務署が行う一般調査と、国税局資料調査課の特別調査があります。後者は、急成長した会社や、広域活動をやっている、あるいは多くのグループ企業を有して運営している企業などを対象にするもので、大人数で突然やってくることもあります。ですから、彼らは「ミニマルサ」とも呼ばれているんですよ。

「ちゃんと事業をしていれば、調査は来る」

調査が入りやすい業種とかは、あるのでしょうか?
基本的にそれはありません。そこそこの規模で事業を営んでいれば、税務調査は必ず来ると思ってください。
税務署は、調査の成果がありそうなところ、つまり追徴課税(※)ができそうな会社をターゲットにする、という話も聞くのですが。
私の経験上、そんなことはありませんよ。会社を設立して3年から5年後くらいの間には、だいたい来ています。あえて言えば、ちゃんと事業が軌道に乗って、儲けの出ているところには、その実態を把握するために調査に入る、という感覚です。
 逆に言えば、ずっと小規模のままで、赤字続きといった会社は、「お目こぼし」の対象なんですね。「税務調査に入られたことがない」と喜んでいるうちは、まだ一人前と言えないのではないかとさえ、私は感じます。
個人事業の場合でも、税務調査は入りますよね?
個人は、無申告で調査になるケースが多いです。売り上げが1000万円に満たないような規模でも、「申告されていませんね」と来ます。
そこは、「お目こぼし」はないわけですね。
はい。ところで、税務署が調査に入るのは、だいたい8月から12月の時期なんですよ。
それはなぜですか?
税務署は、他の官庁と違って7月1日に人事異動が発令されるのです。だから、6月に調査を開始することはないし、7月も引継ぎなどでバタバタする。一方、2月、3月は確定申告で、その期間は調査を行わないよう、税理士会が申し入れているほど。そこにかかる可能性がある1月スタートの調査というのも、稀です。
業界全体が大忙しですから。
さらに5月は、3月期決算の会社の決算申告が待っていますから、やはり税理士の立ち合いは厳しいわけです。その結果、消去法ではないですけれど、さきほど申し上げた期間に、税務調査が集中することになるんですよ。
※追徴課税
申告漏れや脱税の目的で、本来支払うべき税金よりも納税した金額が少なかった場合に、追加で税金を支払うこと。加算税(過少申告加算税、無申告加算税、不納付加算税、重加算税)と延滞税がある。

髙橋節男(税理士)

税理士法人エム・エム・アイ 代表社員
創業50年以上の会計事務所。複数の税理士の他、FPや経営革新等支援機関のコンサルタントら、それぞれの専門分野を持ったスペシャリストがお客様の要望に応えている。『皆で幸せになろう』を経営理念に掲げ、お客様の120%満足を目指す。
URL:https://www.mmigr.jp/

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