「税理士は赤字の会社が楽」。そのココロは?
~「節税」が会社をダメにする!?・その1~

「税理士は赤字の会社が楽」。そのココロは?  ~「節税」が会社をダメにする!?・その1~

2019/4/10

 
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「できることなら、1円の税金も払いたくない」。多くの会社経営者の本音ではないでしょうか。中には、あの手この手の節税策を駆使して、それを実現する人もいます。しかし、果たしてそれは、会社や自分にとってハッピーなことなのでしょうか? 竹澤広晃先生(竹澤税理士事務所)は、「節税ばかりに目が行くと、強い会社はつくれません」と警鐘を鳴らします。

なぜか気になる法人税

税理士仲間で集まると、よく「利益が出ていない決算の税務申告は楽だね」という話が出るんですよ。
なぜですか?
会社の決算期が近づいて、「社長、今期はこれだけ利益が出そうです。法人税はこうなります」と持っていくでしょう。すると、往々にして「待ってくれ。その税金はどうにかならないのか」と言われるわけです。「こんなに法人税が高いなんて、税理士として何をやっているんだ」と怒られる先生もいる(笑)。
 毎年そんなことが続くうちに、顧問税理士のほうも半ば諦めて、お客様の意に沿って、保険料を全額損金処理できるいわゆる「全損」タイプの法人保険に加入したり、高級車を購入したりして、経費の増加=利益の圧縮に努めるようになったりするんですね。
脱税するわけではないし、それがお客様の要望であれば、ノーとは言いにくいでしょう。
社長の給与を必要以上に高く設定して、経費をかさ上げしている場合もあります。とにかく、利益が出ていなければ、社長に文句を言われることはないですから。
 ただし、単純な話、それをやれば法人税は圧縮できたとしても、所得税のほうはアップするでしょう。その損得勘定は、しっかりできているのか?
ケースによっては、トータルでマイナスになる可能性がありますね。
所得税は、毎月源泉徴収して納税します。社長も、毎月出ていくものについては、感覚がマヒしていて、「まあ仕方ないか」となっているような気がするんですよ。ところが、年に1回の法人税のほうは、「ちょっと待て」ということになるのです。

会社の将来よりも、目先の税金?

今のは、生み出した利益を意図的に減らそうという話ですが、そもそも赤字体質なのにもかかわらず、「節税」を口にする社長も少なくないのには驚きます。
赤字だったら、法人税の心配はいらないでしょう(笑)。
私自身の経験からすると、会社がまだ節税をウンヌンするステージに到達していない社長に限って、すぐに「これを経費で落としてもらいたい」とか「税金を減らせる、いい保険を勧められたのだが」といった話をしがちなんですよ。「これ以上赤字を拡大して、どうするのですか」と言うしかありません。
それくらい根深い「節税信仰」のようなものがある、ということですね。
なにか、節税が経営の第1目標のようになっている。でも、考えてみてほしいのです。会社は、節税するために設立したのでしょうか? ちゃんと利益を計上して、内部留保を積み上げていかなかったら、会社を強くすることはできません。内部留保を残すためには、その前に儲けに見合った税金の支払いが、絶対に必要なのです。
ちゃんと納税しなければ、利益は残せない。
「会社を立ち上げて、最初は赤字だったけれど、初めて利益が出て税金を納めることができました」。自慢すべきはそういうことであって、「今期はあそこを経費で落とせた」というような話ではないはずなのです。
 ちなみに、こんな話をしてくると、「この先生は、あまり節税のサポートをしてくれないのか」と思われるかもしれませんが、そんなことはありませんよ(笑)。むしろ、他のどこの事務所にも引けを取らないノウハウや節税商品を備えている自信があります。でも、世の中には、会社のためになる節税と、そうでないものがあるわけです。
それを見誤って、節税が自己目的化しているケースが、あまりにも多い。
目先の節税のために、本来会社に蓄えるべきお金を不要不急の経費で消したりすることの愚かさに、早く気づいてほしいのです。

竹澤広晃(税理士)プロフィール

竹澤税理士事務所 所長
税理士法人やコンサルティング会社にて中小・ベンチャー企業から1部上場企業まで幅広く会計・税務レビュー、節税相談、MAS業務などに従事し、2010年5月に独立開業。お客様とのコミュニケーションを第一に、会社の参謀役として親身に経営のお手伝いをしている。
URL:http://www.takezawa-tax.com/

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