「自分の思い」だけで決めて大失敗!?
意外に大事な“会社のおなまえ”

「自分の思い」だけで決めて大失敗!?  意外に大事な“会社のおなまえ”

2019/11/13

 
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会社を設立しようと思ったら、考えることもやることも、たくさんあります。決断した以上、急ぎたい気持ちはわかりますが、走り出してから「しまった!」という状況は、ぜひとも避けたいもの。起業支援に実績を持つ桑原正樹先生(桑原税務会計事務所)が「盲点の1つ」として挙げるのは、意外にも「会社のネーミング」でした。

取引先の身になって考えてみる

会社設立を考えてから準備完了までの時間は、どのくらい必要なのでしょう?
今までの経験では、最短で3日というのがありました。ただ、これは、もともと個人で事業をされていた方が、取引先との関係上、早急に法人化する必要性が生じた、という特殊な事情があったからで、普通はそんな無理はしません。ちゃんとしたスタートをきるためには、1ヵ月程度の準備期間をみておいてほしいと思います。

時間に余裕を持ってもらいたいのは、「検討しなくてはならないこと」がけっこうあるからなんですね。手続き的なことに関しては、先行してどんどん進める必要があります。例えば、会社の登記には、代表取締役個人の印鑑証明が要りますから、すぐに取っておくとか。

もし実印を作っていなかったら、それを頼むところから始めなければなりません。ところで、「検討すべきこと」とは、何でしょう?
いろいろあるのですが、経験上、あまり問題にされないけれど重要だと感じるのが、「社名」の付け方なんですよ。自分の思いを表現するのはいいのですが、同時に取引先などのことも考えないと、ちょっと困った状況を生む危険性があるのです。
社名がですか? どういうことでしょう?
結論を言えば、会社に大文字、小文字が混在するようなローマ字、長めのカタカナ、難読漢字が混じるといったネーミングをするのは、避けるのが無難です。一番大きな理由は、「取引先などが、お金の振り込みをしにくい」からです。

今はネットでの振り込みが多いと思いますが、少なくとも1回は、相手が振込先の登録をしなくてはなりません。今のような文字を打ち込むのは、ひとことで言えば面倒です。わかりづらさ、煩わしさが原因で、振り込みエラーになることだってありえます。そのあげく、「ローマ字以外では、振り込めないんですか?」と電話がかかってきたり。

確かにメールなどでも、毎回長い固有名詞を入力したりするのには、ストレスを感じます。
それで取引を打ち切られるというようなことはないとは思いますが、少なくとも円滑な取引の障害になるようなファクターは、会社設立時に極力排除しておくのが鉄則。「これは、これからお客さまに売上を振り込んでもらう口座なのだ」ということを、忘れないでほしいのです。

ちなみに、「面倒くささ」は、自分の身にも降りかかってきます。これから先、正式書類はもちろんのこと、あらゆる場面でその社名を記入しなくてはなりません。それやこれやで、結局長い法人名を短く変更したことも、実際にあるんですよ。

「社名にもお客さまへの配慮の気持ちを込めるべき」というのは、とても重要なアドバイスだと思います。

「決算期」をいつにするのかも大事だ

それ以外に、会社設立前にぜひ検討しておくべきことはありますか?
準備でバタついているとスルーされがちなのに、「事業年度をどう組むか?」という問題があります。つまり、決算期をいつにするのか、ということです。
個人事業の場合は12月31日と決められていますが、法人は自分で決めることができます。ズバリ、いつがいいのですか?
設立当初は、経理担当も置けないことが多いでしょう。税理士などのサポートは受けるにしても、決算などについてはかなりエネルギーを割く必要があることを、覚悟しなくてはなりません。ですから、決算期は比較的仕事に余裕のある時期に設定するべきでしょう。公私ともに忙しい年末などは、基本的に避けたほうがいいのです。
忙しい時期に決算が重なると、ミスも起きやすくなりますよね。
そうです。きちんとした決算が組めなければ、対銀行などの信用力にも影響してしまうかもしれません。反対に、決算に手を取られて事業に集中できなくなる可能性もあるでしょう。

今の話と重なりますが、売上にシーズン性がある事業を営む場合は、それが最も低いタイミングに決算期を持ってくるのが正解です。節税対策は、売上、利益がいったん落ち着いた状態で先々を見越してプランニングするからこそ有効。ワッと売上が伸びている時期に決算期を持ってきてしまうと、対策を打つ時間も限られてしまいます。

そうは言っても、今登記を行うとちょうど売上のピークに重なってしまう、という場合もあるでしょう。そこにも誤解があるのですが、法人の事業年度は、基本的に自由に決められることになっています。例えば、「当社の事業年度は、5月1日から翌年4月30日まで」と定めたうえで、11月1日に会社を設立することも可能。この場合は、初年度に限り6か月決算ということになるのです。

せっかく自分で決められるのだから、最も有利な設定を考えるべきですね。それをやるかやらないかも、事業開始後に大きな差になって現れるような気がします。
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