今年もあとわずかとなりました。年末調整の季節ですが、ずばり、年末調整とは何なんですか?
はい、本来、納税者は税務署に自己の所得を申告するべきところ、それでは税務署の事務量が増大しますから、その申告に代えて行うのが、年末調整です。言ってみれば、本来国が行わなければならない仕事を、給与の支払者(勤務している会社)に押し付けている制度なのです。ですから、税金をその分余計に払わされています。このため、お隣の中国でも給与の源泉徴収制度がありますが、この徴収事務にさえも、国から一定の報奨金が給与支払者に支払われています。
日本で、こういった議論が出ないのは不幸なことですね。
日本で、こういった議論が出ないのは不幸なことですね。
なるほど。では、具体的に年末調整とは何をするのですか?
年末調整とは給与支払者が納税者に代わって支払った給与に対する納税額を計算するという、正に確定申告なのですが、支払った給与に対する納税額ですから、他の所得があったり、2ヶ所から給与をもらっていたりした場合は、納税者は別途確定申告が必要になります。アルバイトであっても給与であれば必要です。もっとも、1ヶ所から給与を得ている給与所得者は当該給与及び退職給与以外の所得(利子等の所得を除く)が20万円未満の場合は、確定申告は不要ですので、年末調整をすれば終了です。
年末調整するには、個人情報も会社に提出しなければなりませんが?
そうですね。年末調整をするには、身体障害者、保険、配偶者の年収等、典型的な個人情報が必要になりますから。このご時世、個人情報保護の高まりから、何でそんなことを聞くのか?ということを社員から聞かれることがあります。やり難い世の中になりました。
会社の総務・人事の方、会計事務所の担当者も大変です。各自の納税は各自が計算するような制度になるといいですね。
会社の総務・人事の方、会計事務所の担当者も大変です。各自の納税は各自が計算するような制度になるといいですね。
年末調整しなければならないのはどんな人ですか?
年末時点で、会社に在籍している社員が対象です。中途入社の社員、アルバイトでも同じです。死亡退職した社員や身体障害等により再就職が見込めない人等も必要です。
では逆に、年末調整してはいけない人はどんな人ですか?
中途退職者や給与収入金額が2000万円を超える役職員、2ヶ所以上から給与をもらっている社員で、他の給与支払者に「扶養控除申告者」を提出している社員などです。現実的には、他の給与支払者に「扶養控除申告書」を提出しているかどうかは会社の担当者では分かりませんし、個人情報に属しますので確かめようがありません。ある程度の割り切り、開き直りが必要な場合もあるのではと思います。
もし、年末調整した後で間違いを発見したときはどうすればいいですか?
ご安心ください。1月末までなら、何回でも修正できます。原則は修正が必要です。しかし、1月末までに修正できなかった場合は、本人に確定申告してもらう以外に方法はありません。税理士会で確定申告相談会が行われますが、時々、年末調整の誤りが見受けられます。その時は、会社にやり直すように要求してくださいと指導することになります。
最近は優秀なソフトがありますので、毎年バージョンアップしておればこのような間違いはありませんが、バージョンアップしていなかったり、手計算の場合には間違いが起きますので注意していただきたいですね。
最近は優秀なソフトがありますので、毎年バージョンアップしておればこのような間違いはありませんが、バージョンアップしていなかったり、手計算の場合には間違いが起きますので注意していただきたいですね。
最近、中小企業でも海外に進出する会社が増えていますが?
特に中国に進出する会社が増えていますが、これに伴い、役職員が長期に出張したり、赴任したりすることが多くなります。会社が海外にいる社員に給与を支払っても、非居住者である限り、年末調整はできません。しかし、社員である限り、年の中途で海外に赴任したり、海外から国内に赴任するために帰国し、帰国後に給与を支払ったような場合は年末調整が必要になります。 これは国際課税の分野といわれる領域ですが、このあたりは税理士でも理解されていない方も多くいらっしゃるようですので、確かな税理士に見てもらうことが今後ますます重要になるものと思います。
外国人の方の雇用も増えていますよね。
これは先ほどとは逆の問題ですね。外国人といえども居住者であれば源泉徴収が必要ですし、当然に年末調整しなければなりません。ただ、外国人の場合は、外国との租税条約で特別な取扱いのある場合がありますので、年末調整ということではなく、源泉徴収する際に気をつける必要があります。このあたりになりますと、租税条約を見たこともない税理士もいらっしゃいますから、外国人を雇用していらっしゃる会社は、やはり信頼できる税理士に見てもらうことがますます必要ですね。
金沢先生、どうもありがとうございました。