個人事業と違い、会社には、さまざまな「決まりごと」があります。設立時にそれらをどうデザインするかによって、そこからの事業を円滑に進められるのかどうかが決まるといっても、過言ではありません。「会社の憲法」である定款のポイントから、事業計画の作り方まで、会社設立に詳しい税理士法人シンクバンクの小杉一朗先生にうかがいました。
軽視することなかれ 定款の書き方ひとつで、
会社の未来が決まる
2019/12/12
資本金、事業年度、機関設計はどうする?
まず「資本金」です。法律上、株式会社は資本金1円でもつくることができますが、当座の運転資金であるという実態からも、対外的な信用という面からも、あまり少額なのは問題です。かといって多ければいいというものでもなくて、通常は1000万円未満に抑える必要があります。会社設立後は、要件を満たせば最長で2年間、消費税が課税されないのですが、資本金1000万円以上というのは、その要件に抵触するからです。
消費税の絡みでは、事業年度の設定も重要です。「最長で2年間、消費税が課税されない」と言いましたが、2期目が免税になるためには、特定期間(※1)の6ヵ月間の売上高、ないし給与支払額が1000万円以下である必要があるんですね。どうしてもそれを超えてしまう規模の会社の場合は、1期目の事業期間が7ヵ月以下になるよう、設立日、決算月を決めるのです。資本金1000万円以下ならば、それで2期目も免税事業者になることができます。
株式会社には、原則として任期2年の取締役を置かねばなりません。しかし、株式譲渡制限会社(※2)にして、取締役は自分1人という形にすれば、その任期を最長10年まで延ばすことができ、登記費用の節約にもなります。
取締役会に関しては、実際に開催していなくても書面のみで決議できるような定款にしておくという「技」もあります。税務調査(※3)の際に、議事録の細かなことを問題にされるリスクを減らせる、といったメリットがあるんですよ。
個人事業主の場合は、1月1日から6月30日。法人の場合は、免税の可否を判定する事業年度の前事業年度の開始日以後6ヵ月の期間を指す。
※2株式譲渡制限会社
すべての株式の譲渡について、会社の承認を必要とする旨の定めを定款に置いている株式会社をいう。
※3税務調査
国税局や税務署が、納税者の税務申告が正しいかどうかをチェックするために行う調査。
資金調達、事業計画は?
そのうえで融資を受けようとするときに大事になるのが、きちんとした事業計画を作ることです。もちろん、儲かることが前提の計画ではあるのですが、「どうやって利益を上げるのか?」という説得力がポイントになります。
当然のことながら、借り入れは少ないに越したことはありません。また、資金調達ありきで、他の誰かから安易に出資を受けたりするのは、もってのほかと思ってください。いつまでも自分のやりたいこととベクトルが一緒ならいいのですが、他の出資者と経営方針で対立するようなことになると、事業の行く末が危うくなってしまう危険性があります。
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小杉一朗(税理士)
税理士法人シンクバンク 代表社員税理士
税務会計に関する一流のサービスはもちろん、補助金申請、資金調達などの実務的なサポートから、財務戦略、マーケティング戦略、経営管理システム導入、事業戦略立案、事業承継まで、幅広い分野のワンストップサービスを提供している。
URL:https://thinkbank-tax.com/
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