「税務調査」を避けるには? 来たらどうする?

「税務調査」を避けるには? 来たらどうする?

2020/3/23

 
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税金の申告内容が正しいのか、税務署が会社の帳簿などを調べに来る「税務調査」。やましいところがなくとも、できれば避けたいものです。そのために、何か対策はあるのでしょうか? もし調査の対象になったときには、どう対応するのがいいのか? 中野竜爾先生(中野会計事務所)に、過去の税務調査の事例を交えてお話しいただきます。

税務調査にもいろいろある

あらためて、税務調査とはどういうものなのか、簡単に説明していただけますか?
いいでしょう。税務調査というのは、納税者の申告内容に間違いがないのかを確かめるのが目的で、調査官が会社にやってきて、帳簿などを調べる「実地調査」を行います。ドラマなどで有名な「マルサ」は、国税局査察部のことで、そこが行うのは有無を言わせない「強制調査」です。
多額の脱税などの疑いが濃厚なケースですね。
そうです。通常問題になるのは、各地の税務署が行う「一般調査」と呼ばれるもので、これは「任意調査」です。ですから、理論上は、調査を拒否することもできます。税務署にさらに睨まれるのは必至ですから、決してお勧めはできませんが。

この一般調査の場合、強制調査のように調査官が突然やってくるということは、基本的にありません。税理士に税務申告を依頼している場合には、税務署からまずその税理士に連絡が入るのが普通です。

ただし、同じ任意調査にもかかわらず、国税局資料調査課という部署が担当する場合には、ちょっと状況が違います。彼らは、突然会社にやってきて、マルサばりの「高圧的な」調査を行うのです。私のお客さまのところに、この資料調査課が入り、調査に立ち会ったことがあるんですよ。

任意調査では、税理士の立ち合いを求める

どんな調査だったのか、差し支えない範囲で教えていただけますか?
ある会社の社長の奥さんから、「国税局の人たちがやってきて、『社長に会いたい』と言っている」と電話がかかってきたのです。社長は出先で、会社にはいませんでした。すぐに飛んでいくと、相手は「とにかく、今日中に社長に会いたい」の一点張り。こちらは、「これは任意調査ですよね? 急に来られても対応できません」と。この押し問答を、10回は繰り返したでしょうか。結局、その日は渋々引き上げたのですが、翌日またやってきて、調査は1週間ぐらい続きました。
わざわざ資料調査課が来るということは、何か不正の証拠を掴んでいたということなのでしょうか?
ひとことで言うと、架空の外注費を計上しているのではないか、という疑いだったんですよ。最終的には、取引先が支払われた外注費を申告し忘れていた、というオチがついたのですが。
その会社は、“シロ”だったわけですね。とはいえ、いきなり「税務調査です」と来られたら、動揺してしまいますよね。
税務署の一般調査でも、「アポなし」でやってくることが、ないわけではありません。そういうときに、動揺して調査員の「言いなり」になってしまうと、払う必要のない税金を取られたりすることもあります。慌てず、今の奥さんのように、すぐに税理士に連絡しましょう。社長が社内にいたとしても、1人で対応するのではなく、必ず税理士の立ち合いを求めてください。

税務調査のリスクを減らす「書面添付」とは?

「こういう場合には税務調査に入る」という基準のようなものは、あるのでしょうか?
税務当局が税務調査に臨むスタンスは、税目によってけっこう違いがあるんですよ。法人税に関しては、売上などに大きな変動があったり、多額の特別損失を計上したりといった「目を付けられやすい」ケースもあるようですが、「定期検査」的な要素もかなりあるというのが、私の実感です。これが、例えば相続税の場合には、問題のありそうな事案を選んで入念に下調べをして、確実に追加の税を取る、というイメージです。
ともあれ、調査になれば時間を取られたりもしますし、できれば来てほしくないですよね。何か有効な手立ては、あるのでしょうか?
申告書に税理士の「書面添付」があれば、税務調査に入られる確率は下がります。「書面」には、例えば「今期の特別損失が膨らんだ理由」といった、数字だけではわからない事業の背景を記載することができます。

この書面添付がある場合には、もし税務署が税務調査に入ろうと思ったら、その前に税理士が意見を述べる機会を設けなければならないことになっています。税理士による書面添付があること自体が調査の抑止力になりますし、あらためて税理士の説明を聞いて、調査をやめることもあるわけです。

なるほど。それは有効な「お守り」になりそうです。
ただし、私たち税理士にとっては、いい加減な気持ちで書面添付を行うわけにはいかない、という事情があります。もし、書面の内容に誤りがあり、虚偽記載と認められたら、最悪、懲戒処分=税理士資格剥奪になってしまうからです。逆の言い方をすると、税理士は、みんなそういうリスクを背負って書面添付をしているわけです。
そう考えると、そもそも経理がしっかり行われていない会社では、書面添付を頼んでも、受けてもらえないかもしれませんね。
当たり前の話になってしまいますが、結局最も大事なのはそこで、問題なく決算を行っていれば、仮に税務調査が入っても恐るるに足らず、なのです。

私のお客さまの社長に、「書面添付はいりません。税務調査はウエルカムだから」という方がいます。その理由は、「調査が入ると、社内がピリッとするから」。自社の経理に自信があるから、社長は税務署員と堂々と対応し、実際に結果も問題なし。ハラハラしながらその姿を見ていた社員たちは、「やっぱり、社長はすごい」と。(笑)

うちの会社は曲がったことをしていない、と確信が持てるでしょうね。経営者の姿勢として、参考になるお話です。

中野竜爾(税理士)

中野会計事務所 所長
平成元年に開業以来、経営者が持つ百人百様のニーズに対して、中小企業を数字の面からサポート。「予算管理」と「決算前の納税予測」を2本柱に、『未来志向』の経理を相場の税理士報酬にて提供し、お客様の発展に貢献することを使命としている。相続税も100件以上の申告実績あり。
URL:https://nakanotax.com/

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