試算表を見て、「あれ、おかしいな?」
経営者には、この感覚が大事です

試算表を見て、「あれ、おかしいな?」   経営者には、この感覚が大事です

2020/4/1

 
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会社を引き継いだ新社長には、経営者としてこなすべき実務が山積しています。そんな中でも。忘れてならないのが「会社の数字」のこと。「経験がないから」と経理任せにしたりするのは、考えものです。経営サポートや事業承継に実績を持つ藤間元彰先生(藤間元彰税理士事務所)は「経営者としては、試算表を一読して、ポイントを理解できるレベルが必要です」と話します。

決裁権を持つのは社長です

事業承継を控えた後継者が身に付けるべきスキル、能力にはいろいろあると思うのですが、先生は特に何が大事だとお考えですか?
税理士の立場から言うと、会社の会計、経理に関する知識は非常に大事ですね。逆に言うと、社長になった段階でそれがわかっている人は、非常に少ないと思います。経理を担当していた人が社長になるというのは、中小企業ではレアケースでしょう。多くは、ものづくりや営業の出身で、一定のマネジメントの経験を積んだとしても、そういう分野には触れることなく、経営者になるわけです。

しかし、中小企業の場合、支払いなどの決裁権を持つのは、代表取締役である社長です。トップになれば、否応なしに今までやってこなかった決断をしなくてはなりません。

会社の状態を「数字」で捉えていないと、判断を間違ってしまうかもしれません。
先代社長は、経験の中でそういうスキルを身に付けたわけですが、引き継いだほうに蓄積がなければ、社長になってから、1から訓練しなくてはなりません。もちろん、われわれはそのお手伝いもするのですが、やはり事業承継以前から、ある程度「わかる」ようにしておくのがベターです。

後継者が、事業承継前に私たちと話をする機会というのは、実は少ないんですね。「税理士と話をするから、同席しなさい」と連れてくるような先代も、あまり多くありません。

先生は、そういうことが必要ではないか、とお考えなのですね?
そうです。時間を取って経理について勉強できたら、それに越したことはないのですが、社長とわれわれのやり取りを直接目にするだけでも、ずいぶん違うのではないでしょうか。ただし、1年ぐらいでは、自分のものにはならないように思います。せめて2、3年そういう経験を積んで、数字の流れをつかむことが大切です。
とはいえ、社長が経理の細部まで理解するのは、難しいでしょう。どこまでわかれば、「合格点」ですか?
試算表を持っていったら、それをパッと見て、「ここは、どうしてこの数字になったのですか?」という質問ができるくらいには、なってほしいですね。おっしゃるように細かなところまでわかる必要はないのですが、最低限なにか「異変」があったら、それを察知できるレベルは必要ではないでしょうか。

さらに欲を言えば、われわれが作成する試算表の数字は、早くても1ヵ月前のもので、リアルタイムというわけにはいきません。常に売上や資金繰りの状況などがざっくり頭に入っていて、例えば預金通帳の残高が思ったよりも少なかったら、「どうして?」と反応できるくらいになれば、理想的です。

税理士を「社外監査役」にする

実際に、そういうレベルの社長さんは、いらっしゃるのでしょうか?
はい、いらっしゃいます。厳しい経済環境の中で着実に事業を行っている会社の社長には、やはりそういうふうに、自社の数字を把握している方が多いですね。

お客さまに、従業員15人ほどの建設業の社長がいます。事業を引き継がれて数年後からのお付き合いなのですが、私が行っても、逆に数字の話は私に質問をほとんどしません。原価管理をはじめ、大事なところは社内でシステム化されているから、あらためて聞かなくても把握している感じです。(笑)。その代わり、「こんなことを考えているのだけれど、どう思う?」と、経営に関する客観的な意見を求められたり、他社の動向を聞かれたり。その方にとっては、たぶん私は、顧問税理士というより、おおげさにいうと「社外監査役」、もっとわかりやすく言うと「いろいろな会社の数字や内情を知っている人」という感じなのかもしれません。

なるほど。税理士さんは、そういう使い方もできるわけですね。もちろん、ニーズに応えるだけの力がないと、無理だと思いますが。
その方は、事業を通じた環境保全とか地域貢献とかに対する思いがかなり強い方です。いきなり、4年前にSDGs(※)の話をされたときには、びっくりしました。今でこそ誰でも知っていることですが、その当時は私もまったく知りませんでした。私自身も勉強させていただいた例です。でも、けして地に足がついていないわけではなくて、先ほど言ったように、着実に事業を行っています。
先代とはタイプの違う2代目が成功した例ですね。
親の事業を継ぐといっても、やはりやりたくないことを無理やりやるのでは、うまくいくことは少ないでしょう。好きなことをするために、どのように会社をデザインしていくのかという発想も、大事だと思います。
やりたいことをサポートしてくれる専門家を見つけるのも、重要だと感じます。
※SDGs
2015年の国連サミットで採択された、2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す、という国際目標。

 

【この記事は実話を基に作成してますが、情報保護の観点より、内容を一部加工させていただいています。個人情報の適切な保護に取り組んでいますので、どうぞご了承ください。】

藤間元彰(税理士)

藤間元彰税理士事務所 所長
経営者の悩みを聞くことを大切な使命と考え、税務会計はもちろん、資金繰り、損益分析や労務問題等、親身に対応している。会社を存続させるためのオーダーメイドの経営支援は、お客様への誓いであり、社会に果たす役割のかたち、と掲げる。医療法人やクリニックなど医業のお客様も多い。
URL:http://www.cpa-fujima.jp/

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