「経営計画」の目標達成に必要なもの
「数字」は2割。では、残りは?

「経営計画」の目標達成に必要なもの  「数字」は2割。では、残りは?

2020/4/24

 
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経営計画があればいいとは思うけれど、日々の仕事が忙しいし、どんなものを作ったらいいのかわからない。一応数値目標はあるものの、結局「その日暮らし」になっている――。経営者の方から、そんな声をよく聞きます。しかし、具体的な目標がない状況では、従業員のポテンシャルを十分引き出すこともできません。では、どんな計画を立てどのように実行したらいいのでしょうか? 中小企業の経営サポートに実績を持つ斎藤英一先生(税理士法人 斎藤会計事務所)に「キーになるもの」をうかがいました。

「どう実行するか」を具体化し、「なぜできなかったのか」を検証する

先生が経営者に中期の経営計画作成をアドバイスする場合には、どのような方法を取るのですか?
アドバイスという客観的な響きより、「密着指導」に近いかもしれません(笑)。とはいえ、もちろん計画の策定も実行も、社長の率先垂範でやっていただき、私と経営計画の担当者は、側面からそれを全力でサポートするというイメージですね。

計画ですから、目標が明確でなくてはなりません。「5年後にどうなっていたいのか」というのを、具体的な数値目標に据えてもらうのですが、私は、数字自体は「計画の2割」だと思っているんですよ。

そうなんですか。だとすると、残りの8割は?
ひとことで言えば、それを実現するためにどうするのか、という方策を計画にしっかり落とし込むことです。一般的に「これをやりましょう」ではなく、「いつまでに、誰が、どのように、何をやるのか」まで明確にします。
達成のための方法論を明確にする。
でも、実はそれだけではまだ不十分で、実行段階に入ったら、経営計画担当者が毎月会社を訪問して、計画数値と実績数値を照らし合わせながら計画の達成度合いをチェックし、できていなければ、どこに問題があるのかをいっしょに考えていくことが大切です。それを“ルーティンワーク”のようにくり返し、5年間フォローします。
そこまでやるのですか。8割の意味がわかりました(笑)。
私たちもエネルギーを使いますけど、月1で来られるほうも大変でしょう。「もうすぐあの人が来る」というプレッシャーも、仕掛けの1つです(笑)。

考えなかったことを考えるように

どんなふうにやっているのか、例を挙げてみましょう。建設業のお客さまで、「5年後に売上を倍増させる」という目標を掲げた方がいました。そのためには、営業力の強化が必要です。ところが、うかがってみると、例えばこれまで営業の誰がどれだけどんな内容の営業電話をかけていたのか、といったことが「ブラックボックス」だったことがわかったんですよ。

そこで、まず「1日に営業電話を20本かけて、月に5件の成約を取りましょう」といった目標を設定してもらいました。その上で、結果的に2件しか取れなかったら、なぜかを考えてもらう。電話の件数が足りないのが、それとも営業トークに問題があるのか? と、どんどん深掘りしていくわけです。

個別にやるだけでなく、電話でどんな話をしているのか、というのをみんなで発表し合ってもらうと、「ああ、それはいいね」とか「そこは、こう話したほうがわかりやすいのではないか」という話に自然になってきて、営業マニュアルを作成することになりました。それを活用し、さらに1日20本を25本にしてみる。それで2件の成約が3件、4件と増えてくれば、方向性の正しさが検証できるわけです。相変わらず2件だったら、やっぱりどこか別のところに問題があるのだということがわかる。

何か突飛なことをやるのではなく、目標を決めて実践してみて、それを総括して、というのを地道に繰り返すわけですね。
そうです。繰り返しているうちに、今の例の電話の中身のように、今まであまり考えてこなかったことを、みんなが考えるようになるんですよ。成果が形に表れてくると、計画の達成に向けた意欲もわいてくる。当然のことながら、社長がいくら旗を振ったとしても、従業員にその気になってもらわなければ、やっぱり“絵に描いた餅”になってしまいますから、そうやって1つひとつ具体的な課題をクリアしていくことが大事なのです。
よく考えてみると、さきほどからお話しになっているのは、会社が本来やるべきことだと感じます。逆に言うと、それができていない会社が少なくない、ということになるのでしょうか。
そういうことも言えると思います。同時に、私のお客さまを見ていても、しっかり事業を伸ばしている会社は、我々が言うまでもなく、そのやるべきことがきちんとできているわけです。
日々の経営にとって、参考になるお話だと思います。
ちなみに、特別な手立てを講じるわけではないので、この方法はどんな業種であっても、使うことができます。実際にこの仕組みでサポートさせていただいているお客さまは20社ほどなのですが、例外なく業績は上向いていますよ。

斎藤英一(税理士)

税理士法人斎藤会計事務所 代表税理士
開業して20年以上、むずかしい会計・税務を“わかりやすく簡潔に説明”することをモットーにしている。新規法人設立支援、医業経営、経営計画立案に強く、経験豊富なスタッフが様々な面から顧問先の経営をバックアップ。決算を組むことがゴールではなく、未来に向かってどう決算組むか、といった未来会計を指南。
URL:https://www.s-zj.com/

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