経営計画は、会社を成長期から安定期に
ステップアップさせるツールである

経営計画は、会社を成長期から安定期に  ステップアップさせるツールである

2020/4/22

 
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企業も「生き物」です。同じ業種であっても、業界の老舗と創業間もない会社では、規模や売上だけでなく、社長が考えるべきこと、やるべきことも違うのです。「“創業期→成長期→安定期”という会社のステップアップをサポートしつつ、それぞれのステージに見合ったサービスを提供していくのが、私たちの仕事です」と話す斎藤英一先生(税理士法人 斎藤会計事務所)に、そのポイントをうかがいました。

会社には成長ステージがある

先生は、会社の経理や税務申告だけでなく、経営そのもののサポートに力を入れていらっしゃいます。今回は、そういう視点から、「経営に役立つお話」をうかがっていきたいと思います。
わかりました。会社を続けていく限り、経営者の悩み事は尽きません。事務所を開いている私も経営者の一人としてそれを実感しますし、八木さんもおわかりでしょう(笑)。
そうですね(笑)。
ただ、その悩み事というか、考え方は、会社の成長ステージによって変わってくると思うのです。
そもそも「成長ステージ」をどのように捉えるのでしょう?
私は、「創業期」「成長期」「安定期」に分類して考えています。まず創業期に考えるのは、「なにがなんでも、売上が欲しい」ということでしょう。私たちが関与する税金という切り口で見れば、とにかく節税第一。少しでも使えるお金を手元に残して、事業を軌道に乗せるための再投資に回したい、と考えるはずです。私たちも、そのために全力でお手伝いすることになります。

事業の基盤が築けたら、いよいよ成長期です。しかし、人間と同じで、ここが大変なのです。予想外に売上が伸び悩んで足踏みしてしまったり、へたをすると資金が底をついて事業の存続が難しくなったりするかもしれません。このステージでは、税金を「コスト」として認識することが、ものすごく大事になるんですよ。

税金をコストに、ですか?
そうです。例えば、設備投資をするために、銀行から借り入れをしたとします。当然、返済していくわけですが、借入金の元金は経費にはできません。利益から捻出した金額が、丸々「なくなっていく」ことを実感するわけです。

さらに言えば、会社が利益を出せば、そこに税金がかかってきます。ですから、正確には利益から税金というコストが差し引かれた後、手元に残ったキャッシュから返済していくことになる。つまり、銀行の借入金を返済するにも税金のコストが避けられない、ということです。

確かに税金がかからない、すなわち赤字では、返済も投資もおぼつきません。
そういうことをきちんと理解して、計画的に資金を手元に蓄えておかなくてはならないのです。

この時期を乗り切って安定期に入れば、私たちとしても一安心です。社長の中には、相変わらずいろいろ悩みながらも、ここまで来られたことに感謝の念を抱き、社会貢献で恩返しをしたいと考えるようになる人も、たくさんいます。

成長期に必要になる明確な経営計画

お話を聞くと、成長期にどんな舵取りをするのかで、会社のその後が大きく変わってきそうです。この時期には、特にどんな点を重視してアドバイスを行うのですか?
「創業期は過ぎたけれど、いまひとつ伸び悩んでいる」「なんとか会社の現状を変えたい」という社長に提案するのが、しっかりした経営計画の策定なんですよ。具体的には、「5年後、どうなっていたいですか?」というのをお聞きして、その実現に向けた方策を具体化します。私は、この時期の経営計画は、成長期から安定期にステップアップするためのツールだと位置づけているのです。
なるほど。目標に設定するのは、やはり売上や利益なのでしょうか?
それは、何でもいいと思うのです。例えば、売上5億円、従業員30名、自社ビルを持ちたい……。当然、数値目標を明確にします。同時に、数字だけの“絵に描いた餅”にならないようにしなくてはいけません。

そのために重要になるのは、まず何のためにそれを達成するのかという、会社の理念、ビジョンをあらためて明確にすること。そこが揺らいでいると、「全社一丸」にはなれませんから。

その上で、5年後を見据えた初年度の計画を入念に練り上げることが大事です。これは、「必達の目標」になります。社長には、「積み木を5つ積み上げていくと考えてください。一番下の積み木が不安定でグラグラしたら、途中で倒れてしまいます」というたとえ話をするんですよ。

そういう具体的な数字は、どのように検討していくのでしょう?
経営コンサルタントの手法に、ティーチングとコーチングがあります。前者は、いろんな成功例をピックアップして、そのモデルを伝授するわけですね。我々はそういうリサーチが専門ではありませんので、もっぱらコーチングをベースに具体化を図っていきます。社長の中にあるアイデアなどを引き出して、交通整理していく、というイメージ。これをやることによって、先ほど申し上げた事業のビジョンも、社長の中でよりはっきりしてくるのです。
今、経営コンサルの話が出ましたが、税理士事務所が経営計画の策定に関与するメリットは、何でしょう?
やはり、その会社の会計を継続的に見ているということですね。計画の実行に際しても、出てきた数字を見ながらキメ細かなアドバイスをすることができます。

ちなみに、月次の試算表は、一般的には2ヵ月遅れで出てきたりすることが多いのですが、私たちが経営計画に関わる場合には、半月後には提示できるようにしています。

それは早いですね。
この場合、細かな数字は要りません。一部、予測も入れ込んで作成するのです。目的は、計画と実際の状況を比較して経営判断に生かすことにありますから、何よりもスピードが大事になるんですよ。
そこまでフォローしてもらえたら、経営者としても安心できると思います。

斎藤英一(税理士)

税理士法人斎藤会計事務所 代表税理士
開業して20年以上、むずかしい会計・税務を“わかりやすく簡潔に説明”することをモットーにしている。新規法人設立支援、医業経営、経営計画立案に強く、経験豊富なスタッフが様々な面から顧問先の経営をバックアップ。決算を組むことがゴールではなく、未来に向かってどう決算組むか、といった未来会計を指南。
URL:https://www.s-zj.com/

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