このところ、IPO(株式公開)を目指す人が増えているようですね。そうですね。リーマンショック以降、ガックリ減っていたのですが、再び「上場熱」が盛り返してきたのは確かです。
正しい“IPO”のために
~株式公開のメリットはどこに?~
2017/4/27
【今回の専門家は…】税理士 阿部海輔先生(明治通り税理士法人)
このところ、IPO(株式公開)を目指す人が増えているようですね。
そうですね。リーマンショック以降、ガックリ減っていたのですが、再び「上場熱」が盛り返してきたのは確かです。やはりアベノミクスの影響が大きいと感じます。経営者の上場意欲が高まったということに加え、ファンドやベンチャーキャピタル(※1)などの資金量が豊富になって、企業が上場準備段階からお金を調達しやすくなったことも大きいのではないでしょうか。
今回は、IPOに詳しい阿部先生に、そのメリットや留意点などについてうかがっていきたいと思います。まず、そもそもIPOとはどういうもので、メリットはどこにあるのか? といったところからお話しいただけますでしょうか。
わかりました。IPO=initial public offeringというのは、非上場の会社が、自社の株式を証券取引所に公開して、そこで売買できるようにすることを言います。「株式公開」「上場」とも表現されるんですね。日本には、東証一部、東証二部、東証マザーズ、ジャスダックなどの株式市場があります。マザーズ、ジャスダックは「新興市場」と呼ばれていて、ベンチャー的な企業は、まずこちらへの上場を目指します。
IPOのメリットは、大きく2つあって、第1に市場からの資金調達が可能になることです。非上場の会社の場合、自社株にどんな「評価額」が設定されたとしても、それが頻繁に売り買いされたりすることは、まずありません。会社が必要なお金は、金融機関からの融資とか補助金とかに頼るしかないわけです。でも上場することによって、自社の株式を株式市場で発行して資金を調達することができるようになります。
第2のメリットは、上場により知名度や信用力が向上することです。特に最近重視されるのがこちらのファクターで、背景には深刻な人材不足があります。上場企業になればより注目されるようになり優秀な人材獲得につながります。株式上場により、取引先や金融機関などの信用度もアップし、取引拡大にも寄与します。
IPOのメリットは、大きく2つあって、第1に市場からの資金調達が可能になることです。非上場の会社の場合、自社株にどんな「評価額」が設定されたとしても、それが頻繁に売り買いされたりすることは、まずありません。会社が必要なお金は、金融機関からの融資とか補助金とかに頼るしかないわけです。でも上場することによって、自社の株式を株式市場で発行して資金を調達することができるようになります。
第2のメリットは、上場により知名度や信用力が向上することです。特に最近重視されるのがこちらのファクターで、背景には深刻な人材不足があります。上場企業になればより注目されるようになり優秀な人材獲得につながります。株式上場により、取引先や金融機関などの信用度もアップし、取引拡大にも寄与します。
今、先生の事務所でIPOの支援をしている会社は、何社あるのですか?
今現在は7社です。業種はヘルスケア関連やマーケティング、小売り、ICT等幅広いです。既にエンジェル投資家やベンチャーキャピタルから出資を受けている会社が多く、更なる成長のために上場を目指しています。
※1 ベンチャーキャピタル:
ベンチャー企業の設立から株式公開までの期間に、その企業に投資・融資を行う専門投資会社。VC。
ベンチャー企業の設立から株式公開までの期間に、その企業に投資・融資を行う専門投資会社。VC。
ところで、上場にはいくらかかるのか?
さきほど「株式市場に上場すると、非上場に比べて信用度が向上する」という話をしました。その信用を担保するものの一つが、厳格な上場審査です。
決められた基準に基づく監査法人や証券会社などの審査をクリアしたのだから、この会社は大丈夫だ、ということなのでしょう。では、簡単に上場までの流れを教えてください。
上場するためには、上場の申請をする直前の2期間の監査証明が必要となります。監査は監査法人が行いますが、一般的には上場申請を予定する期の3期前の段階から監査法人を決めて、様々な準備をスタートさせます。
必要な準備は会社の状態によって違うのですが、管理部門は「あって無きがごとし」という場合が多く、まずはその構築、強化から始めることになるでしょう。さらに、会社組織自体を上場会社にふさわしいものに作り替えたり、様々な規定類を整備したり、といった作業もあります。当然ながら、会社を適切に運営できる体制、すなわち「内部統制」の整備運用状況についても、形式ではなく実態が問われることになります。
また、IPO準備は証券会社のコンサルティングを受けつつ進めていくことになります。選定した主幹事証券会社(※2)と連携した取り組みが求められることになります。
必要な準備は会社の状態によって違うのですが、管理部門は「あって無きがごとし」という場合が多く、まずはその構築、強化から始めることになるでしょう。さらに、会社組織自体を上場会社にふさわしいものに作り替えたり、様々な規定類を整備したり、といった作業もあります。当然ながら、会社を適切に運営できる体制、すなわち「内部統制」の整備運用状況についても、形式ではなく実態が問われることになります。
また、IPO準備は証券会社のコンサルティングを受けつつ進めていくことになります。選定した主幹事証券会社(※2)と連携した取り組みが求められることになります。
けっこう大変ですよね。
事務量もさることながら、「経験のないこと」ですからね。例えば、それまできっちりした予算なんて立てたことがなかったのに、突貫工事のように予算制度を作って、直前期には実際に運用して上場申請、という流れをこなさなくてはならないわけです。
当然のことながら、社長がすべてをやることなどできません。そうした作業の中心になる人物、具体的にはCFO(最高財務責任者)を確保するのも、トップの大事な仕事です。IPO準備を仕切る能力があるのはもちろん、大変な作業を共に頑張っていけるだけの「相性」みたいなものも、重要なポイントですね。
当然のことながら、社長がすべてをやることなどできません。そうした作業の中心になる人物、具体的にはCFO(最高財務責任者)を確保するのも、トップの大事な仕事です。IPO準備を仕切る能力があるのはもちろん、大変な作業を共に頑張っていけるだけの「相性」みたいなものも、重要なポイントですね。
バブル期などには、そうした準備に1億円ぐらいはかかることもあると言われていましたが、今は上場コスト自体は下がっているようですね。
CFOなどの人材強化にかかる費用や監査報酬、主幹事証券会社のコンサルティング報酬などを合わせると、少なくても年間で、3000万円程度はコストが増えると思います。上場時にも上場費用が別途発生しますので、上場までに追加でかかるコストで考えれば1億円くらいはかかる計算にはなりますね。
やはり上場するにはコストがそれなりにかかります。お金はかけたけど失敗したという例も少なくないですから、適切なタイミングでの上場準備とやりきる覚悟が必要になってきます。
やはり上場するにはコストがそれなりにかかります。お金はかけたけど失敗したという例も少なくないですから、適切なタイミングでの上場準備とやりきる覚悟が必要になってきます。
※2 IPOの主幹事証券会社:
上場申請の際、推薦者として最も責任ある立場を担う証券会社。上場準備作業全体をコントロールし、各市場が求める公開基準への適合性を得るための指導や助言、公開申請の対応を行い、公開時の公募売出株式の引受の中心となる。
きちんと考えたい「内部統制」のこと
さきほど先生は、IPO準備で求められる「内部統制」の重要性に触れました。ただ、実際には内部統制と言われても「何ですか、それ?」という経営者が、上場を目指そうという方の中にも少なくないと思うんですよ。
そうですね。非上場の中小企業の場合、日常の経営であまりそのことを意識することはないかもしれません。そうでなくても、十分忙しいですし。ただ、IPOをやろうというのならば、避けて通れない課題だということを認識してほしいと思うのです。
企業の内部統制とは、ひとことで言えば、「企業が、その事業目的を達成するために組織体制やルールを構築し、運用すること」です。一見当たり前のように聞こえるかもしれませんが、ベンチャー企業などにとっては、これがなかなか大変なのです。
企業の内部統制とは、ひとことで言えば、「企業が、その事業目的を達成するために組織体制やルールを構築し、運用すること」です。一見当たり前のように聞こえるかもしれませんが、ベンチャー企業などにとっては、これがなかなか大変なのです。
IPO準備に際しては、会社組織をしっかり整備したり、必要な規定を設けたりということが必要になるわけですね。
IPO準備に入る前の会社は、どちらかと言えば社内規定もなく、業務フローも曖昧で、創業者のカリスマ性とパワーで業務を推進しているケースが多いです。しかし、一定規模を超えると、経営者の目がすべての業務には行き届かなくなります。ですから、それを改めて、役割分担を明確にして、効率的に仕事が進み、チェック体制も整備された組織的に会社経営ができるようにしましょう、ということです。
でも、「内部」統制と言われるように、基本的にそれらは企業内の問題ですよね。どうして、そんなに厳格なルールになっているのでしょう?
今の内部統制の制度は、アメリカからスタートしています。きっかけは、2001年に起きた、大手エネルギー会社エンロンの不正会計工作事件でした。結局エンロンは、株価暴落の末に倒産してしまうのですが、簿外債務の隠蔽といった不正が、投資家に大きな損害を与えることになったのです。その反省から、企業としてコーポレートガバナンスを強化し、適切な財務報告が行われるように内部統制を整備運用しなさい、という流れになったのです。
内部統制がしっかりできていれば、そうした問題は起こらないはずだ、というわけですね。
繰り返しになりますが、IPO準備をする企業にとっては、けっこう大変な作業になると思います。ただ、私はそれをただ「上場するための手段」ととらえるのではなく、「効率的な企業活動や、不正の防止を実現するためのプロセスだ」と前向きに考えるべきだと思うんですよ。考えてみると、非上場企業でも従業員の不正は起きます。適切な内部統制というのは、IPOするしないにかかわらず、すべての企業の経営に不可欠な視点なのではないでしょうか。
※3 内部統制報告書:
会社の財務計算に関する書類、その他の情報の適正性を確保するための体制について評価したもの。
「成長のプレッシャー」に勝てますか?
さきほど先生は、「株式上場には、市場からの資金調達が可能になるとともに、会社の認知度、信用度が増して、人材採用も有利になるといったメリットがある」というお話をされました。ただし、IPOを果たせばすべてがバラ色かというと、そうはいかないですよね。
もちろん、頭に入れておくべきデメリットもあります。IPOで何が変わるかというと、自社の株式が公の場で自由に取引されるようになるわけですね。基本的に、株式は1株で1個の議決権(※4)を持ちます。「自由な取引」の結果、もし特定の個人や会社などが多数の株を持てば、会社経営に対する影響力を高めることになるでしょう。役員を送り込んでくるかもしれないし、持株比率によっては、経営権そのものを奪われる危険性だってあるのです。
まあ、それはレアケースだと思うのですが、意外に経営者の皆さんの盲点になっているのが、「成長のプレッシャー」だと、私は思ってます。
まあ、それはレアケースだと思うのですが、意外に経営者の皆さんの盲点になっているのが、「成長のプレッシャー」だと、私は思ってます。
それはIPOに関するいろんな記事を見ても、あまり出てきませんね。どういうことでしょう?
投資家が何に投資するかと言えば、その会社の将来の成長性です。経営者が「自分たちの会社はこうなります」と提示した目標、ビジョンを「買う」のですね。でも、いつも計画通りにいくとは限らない。未達だったり、まして何らかの事情で赤字になったりすれば、株主から経営責任を追及されることになります。当然、株価は下がるでしょう。自分の資産も減ります。
資金調達に狂いが生じ、信用が高まるどころか、「あの会社はダメだ」という「逆宣伝」になってしまうかもしれませんね。
ですから、いったん上場したら、経営者はひたすら成長を追い求めるという宿命を背負うことになるわけです。このプレッシャーに打ち勝つのは、なかなか大変です。切羽詰まったあげく、循環取引(※5)のような粉飾決算に手を染めたりするケースも出てくるわけですね。
すぐにバレるような粉飾をやるということは、それだけプレッシャーが強いということの裏返しでもあるのでしょう。でも、それでは何のためにIPOをしたのかわからない。
上場したのはいいけれど、業績が尻すぼみになってしまい、苦労して作った組織もせっかく集めた人材もバラバラに空中分解してしまったような会社も、いくつか目にしたことがあります。
IPOを目指しているのは、業績も好調なタイミングなんですね。ただし、それを将来に渡って維持、成長させていかないと、市場からは見放されてしまう。上場がゴールにならいないように、上場後も成長していけるビジョンをもってIPOに臨むことは不可欠だと思います。
IPOを目指しているのは、業績も好調なタイミングなんですね。ただし、それを将来に渡って維持、成長させていかないと、市場からは見放されてしまう。上場がゴールにならいないように、上場後も成長していけるビジョンをもってIPOに臨むことは不可欠だと思います。
※4 議決権:
株主総会の議案に、賛否を投票する権利。
株主総会の議案に、賛否を投票する権利。
※5 循環取引:
複数の企業、個人が、お互いに商品の転売や業務委託などの相互発注を繰り返し、架空の売上高を計上すること。
複数の企業、個人が、お互いに商品の転売や業務委託などの相互発注を繰り返し、架空の売上高を計上すること。
「売る」「降りる」という選択もある
会社を興して、事業がそこそこ軌道に乗ってきた。将来性も期待できる。ところが、現状では資金も人材も心もとない――。そんな状況になった時に、経営者の取りうる選択肢は、IPOだけではありません。
最近増えているのが、M&A(企業の合併、買収)です。事業を、丸ごと他の上場企業などに売るんですね。新規事業を探していた会社などと利害が一致すれば、事業の「将来性」を高く買ってもらえるでしょう。
最近増えているのが、M&A(企業の合併、買収)です。事業を、丸ごと他の上場企業などに売るんですね。新規事業を探していた会社などと利害が一致すれば、事業の「将来性」を高く買ってもらえるでしょう。
利益確定ではないですけれど、とりあえず自分の築いたものをお金に換えるわけですね。
その資金を元手にして、また別の事業を始める人もいます。最近のベンチャー起業家は合理的に考えているので、手塩にかけて育てた仕事であっても、割と思い切りよく売ってしまう人が増えています。
「若者気質」という意味では、逆にお金より何より「上場企業のトップ」というステータスが欲しくて上場を目指す人も少なくないようです。ただ、一生懸命IPOを目指したのだけれど、結局夢がかなわず、最後は会社を売るしかなかったという例も、私は知っています。どうせ売るのなら、もっと早くしておけば「損害」も少なくて済んだのに……。
上場準備にお金をドーンとかけすぎると、そういうリスクも高くなるわけですね。最初から売却を考えていた場合でも、売り時を誤れば思惑通りにはいかないかもしれません。M&Aにも、それなりの知識と覚悟は必要なのです。
IPOを果たしたけれど、デメリットが強く意識されるようになった、上場している意味が薄れてきた、さりとて事業は続けたい――。そんな場合は、どうしたらいいのでしょうか?
一つには、MBO(Management Buy-Out)という方法があります。企業経営者が、その企業の経営権を取得することを目的に株式を買い取ることをいい、これもM&Aの手法の一つです。MBOを実施した後に、上場廃止を目指すケースも少なくありません。
せっかく上場したのに、わざわざ舞台から降りるのは、さきほどお話ししたような「上場のデメリット」から逃れるためです。すなわち、市場で株が「買い占められる」ことによる経営への悪影響を避けたり、株主からの過度なプレッシャーから自由な経営を目指したりするためなんですね。資金調達面で問題がなければ、経営基盤は安定し、様々な改革もやりやすくなるでしょう。
せっかく上場したのに、わざわざ舞台から降りるのは、さきほどお話ししたような「上場のデメリット」から逃れるためです。すなわち、市場で株が「買い占められる」ことによる経営への悪影響を避けたり、株主からの過度なプレッシャーから自由な経営を目指したりするためなんですね。資金調達面で問題がなければ、経営基盤は安定し、様々な改革もやりやすくなるでしょう。
周囲の経済環境なども刻々と変化するわけですし、経営者には、常に自分の会社をベストの状態に置いておく柔軟性も求められるわけですね。
会社も社長も社員も変わるIPO
先生は、過去にたくさんの企業のIPO支援に携わってこられたわけですが、株式公開をすると、企業は変わるものなのですか?
私が扱った会社には、劇的な変化を遂げたところがいくつもあります。例えば、10年以上前から株式公開を考えていた会社が、上場を果たしたんですね。ヘルスケア関連の事業なのですが、10年前には、社長の発想に、まだ時代が追いついていなかった。それが5年くらい前からのヘルスケアブームで、ようやくその真価が認められ、業績も急速に伸びたのです。
上場には、そういうタイミングも大事ですよね。時代遅れでは問題外だし、早すぎても認めてもらえないことがある。でも、その社長さんは、めげずに頑張ってよかったですね。
当時から「世界中の人々の健康に貢献したい」という強い信念を持っていて、「それをみんなに知ってもらうためにIPOをやるんだ」とおっしゃっていました。個人的には、こういうふうに「世の中の仕組みを変えたい」「新しいものを広めたい」という理念を持っている人にこそ、ぜひIPOをしてほしいと思うのです。
上場準備期間に急成長したというわけですね。
IPOにより、それを支える人間も変わります。これは別の会社なのですが、かつては事業のノウハウが、全て社長に集中していました。かつ細かなことも気にされる方で、お金の支払いなども自らチェックしていたんですね。上場してからもしばらくはそんな状態が続きました。
内部統制(※6)が十分構築されていなかった。
「権限委譲する」と言いつつ、なかなか。当時の売上高が10~20億円だったでしょうか。でも、その後成長を続け現在では売上100億円近くにまでなりました。その間、ワンマンだった社長は少しずつ変わって、気がついたらちゃんと組織運営ができて、成長を持続できるいい会社になっているわけです。まあ、100億円企業を一人で見るのは、不可能でしょうけど(笑)。
もちろん、すべての会社がうまくいくわけではないでしょう。ただ、会社の規模が大きくなり、社会的責任も増すIPOというのは、経営者も社員も一段と成長できるステージであることは確かだと思うのです。
※6 企業の内部統制:
企業が、その事業目的を達成するために組織体制やルールを構築し、運用すること。
企業が、その事業目的を達成するために組織体制やルールを構築し、運用すること。
心したい「上場はゴールではない」ということ
仮に「上場して目立ちたい」「とにかく資金調達して儲かればいい」といった人がIPOの相談に来たら、先生ならどうしますか?
さきほど話したように、一番IPOして欲しいのは、「この新しい仕組みを、世の中に広めたい」といった理念、その実現に向けた裏づけを持っている人です。ただ、理由はどうであれ、IPOができるのであれば、チャレンジしたらいいと思うのです。
そのできるかどうかの判断基準は、何でしょう?
業績が良ければ上場はできます。ただ、業績のピークが上場時だと上場後が苦しくなります。ですので、やはり業績に加えて更なる成長を描けるビジネスかどうかが判断基準になってくるかと思います。
たとえ立派な理念があっても、やる気満々でも、それだけでは足りないわけですね。
そうですね。上場するには、ある程度勢いとか“ノリ”も大事なんですけど、やはりそれだけでは難しい。起業する時から「IPOを目指すんだ」という人もたくさんいますよね。その夢を実現するためにも、まず会社の成長基盤を作り上げることに全力を注ぐべきです。同時に会社のビジョンやミッションを明確にして、そのビジョンやミッションの達成のためにはIPOが不可欠だと思えばチャレンジすればよいと考えています。
同時に申し上げておきたいのは、「IPOそのものが目標になっていませんか?」ということです。さんざん努力してようやく夢を叶えたと思ったら、先細り。結局、前に話したような粉飾決算に手を染めるような事態になったら、目も当てられません。
同時に申し上げておきたいのは、「IPOそのものが目標になっていませんか?」ということです。さんざん努力してようやく夢を叶えたと思ったら、先細り。結局、前に話したような粉飾決算に手を染めるような事態になったら、目も当てられません。
上場してみたら世の中には競合がけっこういて、思うように事業が拡大できないといった状態に陥った話は、よく聞きます。
IPOばかりに頭が行っていると、往々にしてそんな罠に落ちることもあるわけです。「自分は何のために上場を目指すのか」という問いを、大事にしてもらいたいですね。
繰り返しになりますが、まずはしっかり会社の足元を固めること。次に上場後の経営ビジョンを明確にすることが、IPOの条件になると、私は思います。
繰り返しになりますが、まずはしっかり会社の足元を固めること。次に上場後の経営ビジョンを明確にすることが、IPOの条件になると、私は思います。
ずっと先生のお話をうかがってきて、IPOを目指すには、夢と覚悟、そして冷静な頭が必要なことがよくわかりました。
まあ、厳しめのことも言いましたけど、立ち上げた事業がそれなりに成長して、「IPOはあくまで通過点。どんどん仕事を増やしていくぞ」という発想の人には、ぜひチャレンジして欲しい。これからも、そういう方のお手伝いをしていきたいと思っています。
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