法人化のススメ ~「会社の看板を背負う」ということ~

法人化のススメ ~「会社の看板を背負う」ということ~

2016/6/13

 
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個人で仕事をしている人がそこそこ稼ぐようになると、「会社にすべきだろうか」という話になりますよね。先生には、その会社設立のメリット・デメリットを中心に、お話をうかがっていこうと思います。

【今回の専門家は…】税理士 村越雅規先生(MIRAI(みらい)合同会計事務所)


個人で仕事をしている人がそこそこ稼ぐようになると、「会社にすべきだろうか」という話になりますよね。先生には、その会社設立のメリット・デメリットを中心に、お話をうかがっていこうと思います。

ひところの起業ブームの頃に比べると多少件数は減りましたけど、「法人化を考えているのですが……」と相談に来られる方は、コンスタントにいらっしゃいます。私は、所得(※)で400万円から500万円がボーダーラインだと考えているんですよ。それを上回る場合には、基本的に会社設立をお勧めします。

特に会社にしたほうがいい業種ってあるんですか?

少なくとも私の経験上は、業種による法人化の有利・不利というのは感じませんね。最初の指標は、あくまでも所得と考えていいでしょう。

一定水準を超えたら、会社にしたほうが税金面で有利ですからね。

取られる税金は、個人の場合は所得税、会社にすれば法人税です。所得税は累進課税といって、「実入り」が増えれば増えるほど税率が高くなっていくので、ボーダーラインを超えると損になる。
 でも、私が特に若い人に法人化を勧めるのは、決して節税のためだけではないんですよ。誤解を恐れずに言えば、税金が有利だとか不利だとかいうのは、むしろ「小さな話」だと思っているのです。税理士らしくない発言ですけれど(笑)。

なるほど。あえて法人化するのには、もっと大事な意味があるということですね。それは何でしょうか?

「本気でその世界で飯を食っていくのだったら、“個人商店”より法人ではないですか」ということを言いたいのです。重要なのは、目先の税金ウンヌンではなくて、いかに事業を大きくし、売り上げを増やしていくか、でしょう。そのためには、会社という「看板」を背負うことで自覚や責任を高め、かつそれを世間にアピールして信用も得ていく、という姿勢が大事になるのではないでしょうか。そんな気概をぜひ持ってほしいんですね。
 「特に若い人には」と申し上げたのはそういう理由で、すでに信用や人脈を築いている50歳代以降の方のような場合には、それほど強くお勧めしたりはしません。法人化すると、例えば社会保険に加入することになって、そのための出費がかさむ、といったデメリットも確かにありますから、それらとの兼ね合いも踏まえてアドバイスさせていただいています。

デメリットの細かなところは改めてお話しいただきますが、30代、40代くらいで、先生がおっしゃったボーダーライン以上の所得があるのだったら、そうしたところにこだわる前に、本気で法人化を考えるべきだということですね。

私はそう思うんですよ。繰り返しになりますが、まず考えるべきは本業を発展させることです。あとのことは、法人化して2~3年がむしゃらに走ってから検討しても、遅くないんじゃないでしょうか。
※自営業者の所得:
収入(年商)から必要経費を差し引いた残り。

やはり見逃せない会社設立の経済的メリット


「税金などの細かなことは、会社を作って走り始めてから考えても大丈夫」というアドバイスをいただきましたが、それでも踏み切れない人のために(笑)、あらためて「法人化すればこんないいことがある」というのをお話しいただけますか。

分かりました(笑)。経済的な面で大きいのは、やはり節税効果ですね。所得税と法人税の違いは、すでにお話ししました。前者は、所得が増えるほど税率も高くなっていく累進課税。500万円くらいを超えると納める税金の額が後者より高くなるので、この水準になったら、会社にしたほうが有利になります。
 実は減税効果は、税率だけではありません。まず経費。生命保険や出張手当など、個人では経費として認められないものが、落とせるようになるんですよ。

経費の幅が広がる。

そうです。これはけっこう効きます。また、家族に給料を払えるというのも有利な点ですね。個人の場合は、税務署に「青色事業専従者給与」として届け出を行った場合に限ってそれが認められるのですが、法人にはそうした縛りはありません。また、個人の場合は、家族を青色事業専従者として給与を1円でも支払うと、税金上扶養に入れることはできませんが、法人の場合は、103万円以下であれば扶養に入れることも可能です。
ただし、仕事をしていない家族への給与は認められませんので注意が必要です。
あくまで働いた仕事の内容に見合った給与であれば、という条件付きですが。
 こうした家族への給与のメリットは、「所得分散」ができることです。もう一度、「所得税の累進課税」を思い出してください。所得が増えるにつれて、税率が高くなっていくわけですね。だから、社長1人が高額の所得を得るよりも、家族で分け合ったほうが、トータルの納税額は低く抑えることができるのです。

奥さんを役員にしているケースも、けっこうあります。

そうですね。ただ、「役員」がいいか「従業員」にすべきなのかは、一考の余地があるんですよ。役員になれば、役員としての責任が重くなりますので報酬をたくさん渡せるかもしれませんが、基本的に「固定給」になります。従業員の場合は、何かの時に増減が可能。利益が出たら、他の従業員と同様に賞与で積み増すこともできますし。
まあ、これは奥さんの事業へのかかわり方、働き方などにもよるので一概にどちらがいいとはいえません。相談を受けた場合には、ケースバイケースで対応しています。
 ちなみに、ご両親を会社の役員に入れることもありますよね。節税対策にもなるし、年に1回は株主総会で親子が顔を合わせることができる。いいことだと私は思いますよ。
当然、ご両親だと人生経験が豊富ですので、経営上のアドバイスや叱咤激励を受けることができますし。

税金以外に、法人化する経済的なメリットには、どんなことがありますか?

個人事業に対する金融機関の融資条件が厳しいことは、容易に想像がつきますよね。お金を借りようと思ったら、法人のほうが圧倒的に有利です。融資以外の資金調達も、法人ならより可能性の幅が広がるでしょう。
 さらに、相続税の問題があります。法人の場合、経営者が保有している自社株を通して相続税が課税されますが、直接会社の所有財産には、相続税がかからないんですよ。
個人事業の場合は、経営者が亡くなればすべての資産がその「遺産」となり、相続税の対象になります。

「信用」も事業を成長させるための大切な資産

法人化のススメ ~「会社の看板を背負う」ということ~

個人事業を法人化する経済的なメリットをお話しいただきましたが、それ以外にも会社にしたほうがいい理由はありますか?

いろいろありますから、列挙してみましょう。まず、これは前にもちょっと述べましたが、取引先や仕入先からの信頼を得やすいことです。あなたがその立場だったら、個人事業と会社とどちらを信用するでしょうか?ということです。いい悪いは別ですが。

相手が個人だと、いきなり大きな取引をするのは躊躇されるかもしれませんね。注文はうれしいけれど、本当に期日通りに支払いをしてくれるのだろうか、とか。

昔ほどではないかもしれませんが、「法人でなければ取引しない」という企業は、まだ存在します。

仕事をもらおうと思った企業の担当者に「うちは個人とはやれない決まりなんですよ。法人の形にできませんか」と言われてそうした――というような話も、ちょくちょく聞きますよね。

そういうふうに、仕事を始めてから気づく現実というのもあるわけです。それからさきほど話した「金融機関からの融資の受けやすさ」も、この信用が絡んでいます。
 さらに人を採用したいと考えた時にも、法人のほうが断然有利です。これも「採用される身」になってみれば一目瞭然で、「個人の何々さん」と「株式会社」では、安心感が違いますから。採用の幅を広げたいと思うなら、会社にするべきでしょう。
 次に意外に重要なのが、決算の時期を自由に決められることなんですよ。個人の場合には、必ず12月に締めなければなりませんが、法人なら何月決算でもいいのです。

ベストの決算期は、いつなのでしょうか?

シーズンにより売り上げに変動のある事業の場合、基本的には「底」の時期、これから忙しくなるぞ、というタイミングに設定してもらいますね。期初に売り上げのピークがあれば、そこからの経営計画や節税対策も立てやすいでしょう。ある程度、先が読めるわけです。逆に売上のピークの時に決算期を設定してしまうと、「今期の決算は、締めてみるまで皆目分からない」という状況になってしまう危険性があります。
 また、法人には、「事業承継がしやすい」というメリットもあります。個人事業は、取引先との関係を含め、すべて個人契約で営まれます。だから、事業を継ぐ際には、あらためて契約を結びなおす必要が生じるのです。他方、法人ならば、代表者は変わっても法人契約自体はそのまま継続することができます。
あとは、法人化すれば「プライベートと仕事の区別」が明確になりますよね。

個人だと、お金もごっちゃになりやすい。

そうです。「会社を大きくするために頑張る」という自覚も、より強く意識されるはずです。
 最後に、法人は「有限責任」です。個人は、仕入れ先への未払金などを全額自らが弁済しなくてはなりませんが、法人の場合、出資した金額がなくなるだけで、法人が負っている債務まで個人が負担する必要はありません。ただし、借金などには社長の個人保証が求められるのが、日本の現実。その部分については、チャラというわけにはいきません。

売り上げ1000万円を超えても、 2年間は消費税が免除される


来年4月からの消費税率の10%への引き上げが果たして実施されるのか、議論になっていますね(平成28年4月現在)。今回は、その消費税についてお話をうかがいたいと思います。

分かりました。消費税の扱いって、意外と誤解されているところがあるんですよ。事例を交えてお話してみたいと思います。
まず基本的なことから申し上げると、個人事業であれ法人であれ、消費税を支払わなければならないのは、年度の消費税の対象となる「売り上げ」が1000万円を超えた場合。それ以下ならば、免税です。
かつ、消費税の対象となる売り上げが1000万円を超えても、その年度から課税されるわけではありません。課税か免税かを判定する「基準期間」は「前々事業年度」と定められているんですね。例えば、2016年度の決算で初めて消費税の対象となる売り上げが1000万円を超えた事業者は、2018年度からその年度に発生した消費税を納税することになるのです。

つまり、概ね2年間は、消費税の支払いが免除されるわけですね。

(※図1)


そういうことです。ただし、これは資本金が1000万円未満の会社の場合で、そもそも設立した時に資本金が1000万円以上の会社は、最初の年度から消費税の納税義務がありますので注意が必要です。
 さて、これは事業を始めたばかりで何かと「入り用」な時期に免税されるという、大変ありがたい制度なのですが、2013年から、「免税点」に関して一部見直しが行われました。これを知らない方が、けっこう多いんですよ。

どのような見直しなのでしょう?

簡単に言うと、「最初の半年間の売上高が1000万円を超えた場合には、次の年度から課税される」ことになったのです。「売上高」は、「給与支払額の合計額」に代えることもできるのですが。この半年間を「特定期間」といいます。

要するに、6か月間に売上高と給与支払額の両方が1000万円を超えると、今まで約2年間あった消費税の支払い免除期間が、1年以下に縮められてしまうわけですね。

その通りです。事業が成長するのは大いに喜ばしいことなのですけど、私のところに来たお客様で、こんなケースがありました。
新しく設立された企業だったのですが、半年間で売り上げは1000万円をはるかにオーバーしていました。
あとは、半年間で給与支払額が1000万円を超えていなければ翌期も消費税がでないな、と思っていたところ、計算してみたら給与の総額は1050万円だったんですよ。
こうなると、売上高も給与支払額も半年で1000万円を超えてしまいましたので、翌期から消費税を納めることになりました。

えっ! 給与支払額がわずか50万円を超えただけで……。

消費税の免税期間が1年、丸々パーです。売り上げのほうを「操作」するのはできませんが、このケースだったら、給与の支払いを考えれば、十分調整が可能だったと思います。

税について知っているかいないかで、いかに大きな差が出るかという典型的な事例ですね。

消費税の「免税制度」を目いっぱい活用する “7ケ月決算”


消費税の話を続けましょう。消費税の対象となる売上高が1000万円を超えても、原則として2年間は消費税の支払いが免除される。ただし、年度の初めの6か月間(「特定期間」)の売上高、給与支払総額の両方が1000万円を超えたら翌年度から課税され、免除期間は1年間にとどまる――という話を、さきほどしました。

給与の支払いが、わずか50万円オーバーしたために、その規定に引っかかってしまった事例も紹介していただきました。

とはいえ、現実には、売り上げも給与のほうも、半年間で軽く1000万円を超えてしまい、調整のしようがない、というケースも多いでしょう。そんな場合に役立つテクニックがあるのです。
 半年で売り上げも給与の支払いも1000万円を超える典型的な業種といえば、コンビニです。売上高は、確実に超えますし、給与もアルバイトなどが多いと超えてくる可能性があります。また、同時に2店舗を経営しているオーナー様も多く、そうした場合は、ほぼ両方とも「クリア」してしまう。そんな場合には、設立1年目の事業年度をあえて7か月以下にするのです。

そのメリットは?

消費税の特定期間は、設立第1年目が7ケ月以下であれば、そもそも適用がありません。そのため、法人の決算時期を設立から7ケ月以下にすれば、自動的に翌期も消費税が免税になるので、結果として1年7ケ月は消費税が免除されることになります。
なぜこうしたことがおきるかと言うと、6ケ月間の売上や給与の額を計算できるのは、6ケ月を過ぎて7ケ月目以降にならないと計算できない訳です。ということは、7ケ月目の始めには自分が消費税を納めるのかどうかがわからないことになりますね。
ですから、1ケ月余裕を見て、6ケ月の売上と給与がちゃんと出てから消費税の適用を考えようとなったのだと思います。

なるほど。そうすれば、売上や給与が半年で1000万円を超える会社でも丸々2年の消費税の免税は無理だけど、1年7か月は消費税を払わなくてすむことになるんですね。

なお、これもさきほどお話ししたように、原則として2期間は、消費税が課せられないのは、個人も法人も同じです。ということは、個人事業でスタートさせて、2期間の免税期間を活用したのちに法人化すれば、計4期間消費税を払わなくていいことになります。消費税の節税を第一に考えるのならば、そういうやり方もあるということを付け加えておきましょう。

あえてデメリットに目を向けてみる

法人化のススメ ~「会社の看板を背負う」ということ~

これまで事業を法人化する意義についてご説明いただきましたが、一方でデメリットもあると聞きます。今回は、法人化しようと考えた時、最低限頭に入れておくべきことについてうかがわせてください。

ネガティブな話になりますけど、「あえて知識を持っておこう」というスタンスでお聞きください。
 事業の先行きは、100%読めるわけではありませんよね。震災やリーマンショックのような、予期せぬ経済環境の変化もあるでしょう。その結果、会社が赤字になったとします。それでも納めなくてはならない税金があるんですよ。

それは意外に盲点かもしれません。

会社が支払う税金について整理しておきましょう。すでにお話した「法人税(地方法人税含む)」。これは国に納める税金です。それとは別に、地方税として「法人事業税(地方法人特別税含む)」「法人住民税」があります。法人独自の税金は、この3つ。それらにプラスして、これも詳しくお話した「消費税」が課税されるわけです。このうち、法人税、法人事業税、法人住民税の一部は、企業の所得にかかってきます。ですから、赤字になれば課税はされないんですね。
一方、消費税はあくまで「預かり金」ですから、売上高にかかる消費税から経費で支払った消費税の差し引きで計算されますので、利益に関係なく納めなくてはなりません。そしてもう1つ。今「法人住民税の一部」と言いましたが、この税は「法人税割」と「均等割」という2つの部分で成り立っていて、後者はやはり利益にかかわらず、赤字でも支払う必要があるんですよ。会社の「存在」自体に課税される、と表現すればいいでしょうか。通常、資本金1000万円以下で従業員50人以下の会社の場合、年7万円(所在地により多少の違いあり)と決められています。

大した金額ではないようにも思えますが、会社が赤字続きになったら、けっこう響くかもしれませんね。

お金の話を続けると、会社を設立する時には、登記などにお金がかかります。それは未来に向かうための「投資」だからいいのですけど、実はやむなく事業から撤退して会社を閉じる時にも、やはり出費を覚悟しなくてはならないのです。
 ざっくり言うと、事業を廃止する場合には、まず通常と同じような決算を行い、解散の登記をすることになります。その後、債権債務の清算などを行って「清算結了」となるのですが、この時にも2回目の登記が必要なんですよ。
 お金はかかるし手続きが面倒くさい、あるいはもしかしたら近々事業再開の可能性があるから、と決算だけすませて、とりあえず「休眠」の届けを出す人もいます。ただし、その場合も、さきほどの法人事業税の均等割、年7万円は払い続けなければなりません。まあ、これから会社を作ろうという人が、事業をやめる時のことまで考える必要はないとは思うのですが。

お金の問題以外にも、法人になると事務量が増えて大変だ、といった話を聞きます。

例えば会計処理は、個人とは違って会社法に則った処理が求められますし、税務申告も所得税の確定申告に比べて複雑です。また、個人の時にはなかった、自分と法人とのやりとりが発生し、そこを適当に処理しますと税務署から指摘されることになります。そのあたりは、税理士などの専門家も大いに活用しつつ頑張ってほしいと思います。

社会保険への加入は「痛い」出費なのか?


法人化すると、社会保険に加入しなければならないことになっています。その経済的な負担を心配する声もあるのですが。

おっしゃるように、法人は健康保険と厚生年金保険への加入が義務づけられています。保険料は、個人の国民健康保険、国民年金に比べて高額になるのですが、その半分は会社が負担しなくてはなりません。
 リアルな状況をいうと、小さな法人には負担が大きいということもあってか、以前は未加入でもスルーされることが、けっこうあったんですね。しかし、特に今年に入ってから、社会保険庁サイドの対応は目に見えて厳しくなっています。私の顧問先でも、未加入だった法人に対しては、ほぼ例外なく「加入するように」というお達しが来ているんですよ。これから法人化する場合には、間違いなく社会保険への加入が求められるでしょうね。

会社の負担は、具体的にはどの程度になるのでしょう?

前に、所得が500万円程度を超えたら、個人事業より法人化したほうが、納める税金は少なくてすむ、という話をしましたね。基本的に所得が増えれば増えるほど、このメリットはどんどん大きくなっていきます。他方、保険料負担のほうは、給料に比例し、また社員が増えるほど大きくなります。
「得なのは個人か法人か」という視点からすれば、その兼ね合いだとしかいいようがないのですが、私の感覚では、少なくとも設立当初は両者の差し引きでトントン。法人化したら、節税効果より社会保険負担によるコスト増のほうが大きかった、というケースも少なくはないと思います。

やはり、けっこうシビアなお話になりますね。

金銭面の損得だけを考えれば、そうです。ただ、考えていただきたいのは、社会保険はあくまでも「保険」だということ。しかも、「掛け捨て」ではないのです。確かに保険料は高いかもしれませんが、例えば厚生年金のほうが、国民年金1本よりも将来受け取れる年金額が増えるわけでしょう。ここでも、目先の出費だけにとらわれるべきではない、と私は思うんですよ。

なるほど。どうしても「負担」のほうに目が行きがちですけど、保険料は「ただ取られる」お金ではないんだ、ということですね。

それに、会社選びをする立場になったらどうでしょう? 「社会保険のあるなし」は、けっこう大事なファクターではありませんか? いい人材を採用したかったら、積極的に加入したほうがいいと思いますよ。

ずっと事業の法人化についてレクチャーいただきましたが、最後に、法人には「株式会社」のほかに「合同会社」があります。両者の違いを簡単に説明してください。

設立時の登録免許税が合同会社のほうが安いとか、出資者が株式会社は株主で、合同会社は社員である――といったいくつかの「つくり」の違いはあるのですが、税務面での差はほとんどありません。最も大きな違いは、「ネームバリュー」でしょうね。「○○合同会社」と「株式会社」と、“通り”がいいのはどちらか、ということです。
 ですから、例えば税金のメリットが享受できればそれでいい、あるいは便宜上法人にする必要がある――といった場合には、設立のハードルがやや低い合同会社でいい。でも、「世の中の信用も得て、本気で事業を大きくしたい」という志を持っているのだったら、株式会社にするべきでしょうね。
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