決して仲が悪かったわけではないのに、親の相続になったとたん、子ども同士が諍いを始めてしまう――。それが相続の現実です。争いを呼び込む大きな原因が、「あの財産は、お母さんが私にくれると言っていた」「そんなことは聞いていない」という状況を招く、被相続人の「曖昧な意思表示」にある、と税理士法人経世会の筒井亮次先生は指摘します。「争続」を防ぐ手立てとして先生が強調するのは、ズバリ「しっかりした遺言書を残すこと」。
相続で子を争わせたくなかったら、
しっかり「遺言書」を
2017/6/13
先生は数多くの相続を担当なさってきたと思いますが、揉める案件ってやっぱり多いですか?
そうですね。片方の親の目が光っている一次相続(※1)はまだいいのですけど、相続人が子どもだけになる二次相続は、けっこう揉めます。いったん争いの火がついてからそれを消すのはなかなか大変で、争いを起こさないようにすることが、何より大事なんですよ。そのために、親の責任としてきちんと遺言書を書いておくこと。これが、相続で揉めないための最善の策です。相続に関わる税理士なら、みなさんおっしゃると思いますが。
経験上、相続で揉め事になるパターンというのがあって、例えば「遺産分割について、私は親からこう聞いていた」「いや、私にはこう言っていた」というような“水掛け論”から、やがて本格的なバトルになっていくんですよ。遺産相続となれば、相続人それぞれに期待や思惑があるわけです。みんながそれに従って主張し始めたら、収拾がつかなくなるのは、ある意味当たり前。でも、そんなふうに子どもたちが「勝手に」期待を膨らませるのも、相続についての親の意思がはっきりしないからですよね。
その意志を明確に示すのが、遺言書だということですね。でも、ただ書けばいいというものでもないと聞きます。書く時に気をつけることはありますか?
まず、法的に有効な遺言書にも、3種類あることを理解してください。1つは「自筆証書遺言書」で、本人が全文を自筆で書くものです。簡単に作れて、費用もかかりません。「公正証書遺言書」は、公証役場に出かけて、公証人に作成・保管してもらう方法です。証人が2人以上必要で、公証人とその証人には遺言の中身を知られることになりますが、紛失したり偽造されたりする恐れはないでしょう。自ら書いて公証役場に持っていく「秘密証書遺言書」というのもあります。やはり「安全第一」ですから、私はお客様には多少のコストはかけてでも、「公正証書」で残すようにお願いしています。ちなみに、自筆はもちろん、公正証書遺言書であっても、何度でも書き直すことができます。そうした点を頭に入れた上で、その時に最善だと思う中身を記していただけばいいと思います。
あえて1つ付け加えておけば、相続税の支払いが発生する場合には、遺産分割のやり方だけでなく、納税資金のことも考慮した遺言書を心掛けて欲しいんですよ。土地などの不動産だけを相続すると、それにかかる税金の支払いに窮してしまうかもしれません。
併せて、納税に充てる現金も相続させる。
遺産分割は、基本的に遺言書の内容通りに実行されますから、そうした点には注意が必要です。
※1 一次相続、二次相続
両親の相続のうち、先に亡くなった親の相続が「一次相続」、残った親の相続が「二次相続」。
両親の相続のうち、先に亡くなった親の相続が「一次相続」、残った親の相続が「二次相続」。
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