国による民法の相続分野の見直しが始まっています。法務大臣の諮問機関である法制審議会の部会が、「遺産分割時の配偶者の法定相続分(※1)を、3分の2に引き上げる」ことなどを内容とした中間試案を公表したのが、今年6月。ところが、夏場に実施されたパブリックコメント(意見公募)では、これに対する反対意見が多数を占めました。法改正の行方は流動的といえます。今回は、税理士法人斎藤会計事務所の斎藤英一先生に、あらためてこの問題の論点整理をお願いしました。
どうなる? 配偶者相続分の引き上げ
2016/12/9
◆「35年ぶり」の大幅な見直し
相続に関する法律の大幅な改正が議論されています。柱とされたのが「配偶者の法定相続分の見直し」で、相続人が配偶者と子どもの場合、現在の2分の1から3分の2に引き上げる、というものでした。
民法の相続の規定は、1980年に配偶者の法定相続分が3分の1から2分の1に引き上げられて以降、目立った見直しはなかったんですよ。今回の改正は、「相続時に高齢となっている妻などの生活を保護するため」と説明されていますが、実行されれば、久々に相続のあり方が大きく変わることになります。 さて、問題の配偶者の法定相続分の引き上げ案ですが、それを無条件に認める、というものではありませんでした。法制審議会部会の中間試案で示されたのは、①結婚後に夫婦が共同でつくり上げた財産=夫婦共有財産について引き上げる、または②結婚して20年または30年という一定期間を過ぎている場合、要するに婚姻期間が長い場合については引き上げる――という案だったんですね。ちなみに現在は、こうした「縛り」、例えば「結婚して10年しかたっていないから、配偶者の法定相続分はこれだけ」といった条件はありません。
ところが、その後のパブリックコメントでは、その中身に対する反対が多数を占める結果となりましたね。
①については、「結婚後の財産形成といっても、その算定をめぐって相続の紛争が複雑化する」、また②に関しても「夫婦関係が破たんして、配偶者の貢献が認められない場合にも相続分が増加するのは、公平を害する」などの意見が、多数寄せられたそうです。 こうした声を受けて、「法制審議会の部会は、『試案のままで議論を進めるのは困難』との意見で一致」(毎日新聞)、「配偶者に何らかの手当てをする方向性は維持し、さらに検討を続けていくこととした」(産経新聞)などと報じられています。どうやら「3分の2」への引き上げは困難になったようですが、今後どういった修正が加えられるのか、予断を許さない状況と言えますね。
寄与分制度の見直しも
「中間指針」では、今お話しの配偶者の法定相続分引き上げの他にも、いくつかの見直しが提言されています。
主なものでは、まず「配偶者の居住権の新設」。夫が亡くなって、自宅を他の誰かが相続しても、妻が引き続きそこに住み続ける権利を認め、「追い出される」ことのないようにしようというものですね。 また「寄与分(※2)の見直し」も示されています。実際の相続では、なかなか認められにくい寄与分ですが、「療養看護について、相続人の間で顕著な差があれば」認めようという方向性が示されました。さらに、現在は相続の対象外である、相続人以外の人の寄与分を認める内容も盛り込まれたんですね。私は高く評価するのですが、これについては回を改めて述べることにします。
※1 法定相続分
被相続人の遺言書がない場合に、民法で定められた相続人の遺産の取り分。
※2 寄与分
相続において、「被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付、被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした」(民法904条の2第1項)相続人を、他の相続人よりも優遇しようという制度。
被相続人の遺言書がない場合に、民法で定められた相続人の遺産の取り分。
※2 寄与分
相続において、「被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付、被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした」(民法904条の2第1項)相続人を、他の相続人よりも優遇しようという制度。
◆不遇な「長男の嫁」に光は当たるか
相続人以外の寄与分も認める案が示された
さきほど先生は「相続に関する民法改正の検討の中で、法制審議会の部会がまとめた『相続人以外の人についても寄与分(※2)を認める』中間試案を評価したい」とおっしゃっていました。なぜそう考えるのか、お話しいただけますか?
相続をやっていて、いつも最も「不遇」だと感じるのは、「長男の嫁」なんですよ。高齢で寝たきりになったりした場合、誰かに介護を頼まなければ生きていけません。自宅でそれをやる場合、誰が担当するのか? 大半のケースでは、親と同居している長男のお嫁さんが担い手になっているわけですね。義理の親の人生最後のプロセス、しかも心身ともにこの上ない重労働を、彼女が背負うんですよ。 にもかかわらず、その親が死んで相続になった時、彼女はまったく“蚊帳の外”の存在になってしまいます。「長男の妻」は法定相続人ではありませんから、遺産分割の対象外。ほとんど実家に寄りつかなかった子どもがしっかり相続し、彼女にはゼロというのは、どう考えても理不尽ではないでしょうか。
今でも、被相続人が「長男の嫁に遺産を譲る」という遺言書を残せば、彼女も報われるのですが。
介護を受けた方には、ぜひそうしたことを考えてもらいたいのですけれど、実際には遺言書を残さず亡くなるケースが多い。今回提案されているのは、その場合でも、相続人以外の人が「被相続人への寄与」を主張できる制度の創設です。具体的には、相続の際に、長男などの相続人に対して金銭の請求を行えるようになるんですね。案に示された通りの法改正が行われるかどうかはまだわかりませんけど、「ようやく法が実情に近づいてきた」というのが、私の率直な感想なんですよ。
「贈与」の問題もクリアする
そうした法改正の方向性については私も賛成なのですが、実際にこの制度が導入されると、請求が多発して、争いが増える可能性もありますよね。
そうですね。「試案」に対するパブリックコメントでも、やはりそうした意見が多く寄せられ、賛成・反対は拮抗しているという報道もありました。ただ、一顧だにされなかった彼女らの権利が認められるというのは、大きな前進だと私は評価したいのです。 さらに、「やはりお嫁さんの貢献を認めよう」と相続人の合意が得られた場合にも、新制度のメリットはあります。仮に現状でそういう話になったら、彼女にお金を渡す行為は相続とは無関係の贈与になるでしょう。金額によっては、贈与税が発生するわけですね。遺産分割協議に含まれる案件であれば、そうした問題は起こらないはずです。
なるほど。今回の民法改正は、当初の予定通りなら来年の国会で審議されることになります。今後も議論の行方に注目したいですね。
◆「寄与分」確保の成否は、“見える化”にあり
「やっぱり『不公平』だ」
親を献身的に介護した子どもが、他の兄弟よりも遺産を多くもらうのは当然のように思えるのですが、実際の相続では、その「当たり前」をめぐって争いになることが多いですよね。
私の担当した事例をお話ししましょう。母親が亡くなって相続になりました。相続人は3人姉妹で、遺産総額は1億5000万円ほど。ただし、自宅と、次女が経営していた小売店の店舗が資産の大半で、預貯金は1000万円程度しかなかったのです。 母親を介護してきたのは、相談にいらっしゃった長女でした。実は母親は認知症を患っていて、10年以上、同居して面倒をみていたんですよ。そうした事情もあって、実家には引き続き長女が住むということで、3人とも同意されました。そして店舗は次女、残りの預貯金や有価証券などについては3女が相続するということで、いったん分割協議はまとまりかけました。ちなみに自宅の土地の評価額は8000万円。店舗も8000万円でしたが、建築費の借り入れが4500万円ほどありましたから次女の取り分は3500万円で、3女も同じく3500万円という分割内容だったんですね。 ところが、ある日突然、次女が“待った”をかけたのです。「やっぱりそれでは不公平だから、お姉さんから『差額分』の1500万円をもらいたい」と。
3人で「公平に」分ければ5000万円ずつ。そのぶんの代償分割(※4)を求めてきたんですね。
ええ。どうやら他の専門家にも相談していたようなのです。まあそれはいいのですけど、すんなりいくかに思えた相続は、一転して揉め事になってしまいました。問題は、長女が相続したのは自宅だけなので、1500万円というお金が手元にないこと。彼女は、「姉妹で喧嘩するくらいなら、自宅を売ってお金を作っても構わない」とおっしゃっていましたが、一方で「母親に対して自分がしてきたことも、妹にはわかってもらいたい」という気持ちも持っていました。
1人で母親をみてきた「寄与分」を考慮してもらいたい、ということですね。
現状では認められにくい
ただ、実際に認めてもらうとなると、けっこうハードルが高いんですよ。対象になるのは、「被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付、被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした」相続人と定められているのですが、この「特別の寄与」をどうみるかが難しい。
介護については、親の面倒をみるのは子として当然のことで、それには当たらないと解釈されてしまうことが多いわけですね。
とはいえ、その「当然のこと」がいかに大変な負担を伴うものなのか、という現実もあります。さきほどまで述べた民法改正の議論は、そうした実情を踏まえたものでもあると思います。 さて、話を先ほどの事例に戻すと、結果的には2人の妹に長女の寄与分を認めてもらい、無事に申告を終えることができました。その経緯については、後ほどお話しします。
※4 代償分割
財産を特定の相続人が取得し、それが他の相続人より多かった場合、その代償として金銭や物を他の相続人に支払う、という遺産分割の方法。
財産を特定の相続人が取得し、それが他の相続人より多かった場合、その代償として金銭や物を他の相続人に支払う、という遺産分割の方法。
長女は莫大な負担をしていた
この事例の場合、法定相続分に従えば、遺産は3姉妹で3分の1=5000万円ずつということになります。次女が1500万円の代償分割を求めた根拠がそれですね。でも、長女だけが献身的に母親を介護していたのに、いざ相続になったら「平等に」というのは、ちょっと理不尽な感じがします。
遠くに嫁いだ3女は、まだ時々は手伝いに来ることもあったそうですが、次女は母親が認知症になってからは、ほとんど実家に顔を見せなかったそうですからね。
ただ、仮に寄与分を認めてもいいという話になったとしても、具体的にいくら渡すのかというのが、また難しい。そこで争いになることも少なくありません。
おっしゃる通り、「いくら認めるか」は難問です。同時に、寄与分を認める・認めないの議論では、まさにそこがポイントになると思うのです。やみくもに「1000万円欲しい」と主張しても、「その根拠は?」ということになりますから。 そこで、このケースを洗い直してみたんですよ。すると、まず10年にわたる介護の費用のすべてを長女が負担してきたことがわかりました。母親のために実家をバリアフリーに改築した費用も、全部自腹。これらに、寄与分の算定の際に根拠とされる、介護を外部に委託していた場合にかかる金額を加えると、なんと6000万円に上ることが明らかになりました。 長女は、6000万円の「特別の寄与」を堂々と主張できるはず。言い方を変えると、彼女からすれば、これだけの寄与分をもらわなかったら、この相続は「不平等」だということになります。「実家に住み続けられればいい」というスタンスの彼女に、声高に寄与分を主張する気持ちはありませんでしたけど。
それがわかったことで、妥協点が見えた
寄与分は遺産額から控除され、残りを相続人で分けた後、控除されたぶんを特別の寄与のあった相続人がもらうことになります。この事例に当てはめると、1億5000万円から6000万円を引いた9000万円を3分割するから、次女と3女の取り分は3000万円ずつ、長女は寄与分を加算して9000万円。
代償分割を求めた次女の相続分は、当初案より少なくなってしまいましたね。
この数字を提示した時の妹さんたちのショックは、相当のものでした。まず「姉がそんなに金銭の負担をしていたのか」と驚き、次に「その寄与分を認めると、自分たちの取り分はこれだけだ」という事実に困惑し……。ただ最終的には、「姉の貢献」に納得して、次女は代償分割の主張を取り下げ、当初案に近い形で協議をまとめることができたんですよ。 決め手は、長女の介護負担を具体的な金額で“見える化”したことです。逆に言うと、「親の介護にどれだけ苦労しているか」は、家を出た兄弟たちには見えにくいわけですね。だから、ともすれば「それはそれ」ということになってしまう。でも、客観的な数字を示して話をすれば、少なくとも無視することはできないでしょう。
無用なトラブルを防ぐことになるし、「そんなに頑張っていたんだ」と、介護の苦労を再認識してもらう機会にもできそうですね。
※1 代償分割
財産を特定の相続人が取得し、それが他の相続人より多かった場合、その代償として金銭や物を他の相続人に支払う、という遺産分割の方法。
※2 寄与分 相続において、「被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付、被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした」(民法904条の2第1項)相続人を、他の相続人よりも優遇しようという制度。
※3 法定相続分 被相続人の遺言書がない場合に、民法に定められた相続人の取り分。
財産を特定の相続人が取得し、それが他の相続人より多かった場合、その代償として金銭や物を他の相続人に支払う、という遺産分割の方法。
※2 寄与分 相続において、「被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付、被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした」(民法904条の2第1項)相続人を、他の相続人よりも優遇しようという制度。
※3 法定相続分 被相続人の遺言書がない場合に、民法に定められた相続人の取り分。
◆「あとは野となれ山となれ」では無責任
自分の財産なのだから
さきほどまでお話しいただいた、「寄与分」(※2)をめぐる争いなどは、被相続人が例えば「長男の嫁には世話になったので、これだけの財産を譲る」といった遺言書を残せば、かなり発生リスクを抑えることができますよね。
そうですね。ただ遺言書もいいのですが、私は親が元気なうちに、自分の財産をどうしたいのかをきちんと決め、子どもたちを集めて話しておくことが、最も効果的だと思うのですよ。そこで親が自分の「方針」を語り、相続人みんなと話し合っておけば、「本番」で揉め事になることはないはずなのです。 逆の言い方をすると、親が「黙っていても子どもたちは仲良く遺産を分けてくれるだろう」と楽観視して成り行きに任せたり、あるいは「俺の目の黒いうちは、相続の話なんかさせない」といった態度を取ったりするのは、ちょっと無責任だとも感じるんですね。「目の黒いうち」はいいけれど、いざ相続になった時、その話し合いの場に自分はいないのだということを、ぜひ考えてほしいのです。あくまでも被相続人の財産なのですから、それは最後まで自分でコントロールしないと。億円単位の資産がある場合などは、なおさらです。
「利害関係」が発生してからでは、税理士も入りにくい
「長男の妻」が、被相続人を献身的に介護していたような場合には、その労を認めるべきだ、というのが先生のスタンスです。遺産分割協議でそういう部分が論点になった時には、しかるべき「アドバイス」をするのですか?
被相続人が、特に遺産分割についての意思を示さずに亡くなった場合、分割協議に最初から我々が「介入」すると、それがトラブルのもとになることもあるんですね。ゼロから遺産分割の話がスタートしたとたん、そこに「利害関係」が生まれます。その状態で特定の人の肩を持つようなことをすると、他の相続人は、当然「どうして1人の味方をするのか」という感情を抱くでしょう。 ですから、遺産分割のやり方は、まず相続人の方々にお任せします。もちろん、すでに紹介した事例のように、揉め事に発展しそうな時には、状況を踏まえた提案はさせていただきますが。 ただし、被相続人も含めた生前の話し合いであれば、話は別です。「お嫁さんへの遺産分割を考えている、お父さんの気持ちを汲んだ相続にしましょう」という提案も、堂々とできるんですよ。
その段階から相続に強い税理士さんに相談すれば、専門家のスキルをより「有効活用」できるというわけですね。
繰り返しになりますが、そうした相続対策のイニシアティブをとれるのは、被相続人です。そのことを忘れないでください。
◆大事な相続、「セカンドオピニオン」という選択もある
「でんと構えた」お母さんが相談に
さきほど、「揉めない相続のコツは、被相続人がイニシアチブをとって、生前に子どもたちを集め、遺産分割の考え方をしっかり話したおくことだ」という話をしました。先日、それを地でいくお母さんが、事務所に相談にいらっしゃったんですよ。ご自分は80歳で、ご主人もご健在なのですが、ちょっと気がかりなことがある、と。「資産の大半が不動産で、もしこのまま相続になったら、相続税の支払いが心配だ」ということだったんですね。
でも、このお母さんは立派でした。子どもを2人引き連れてやってきて、「お前たちも、先生の話をよく聞いておきなさい」と、私の前にでんと座って(笑)。「生前の相続の話をすべき」といっても、そんなに簡単なことでないのは、私もわかっています。「縁起でもない」という感情が、どうしても先に立ちますから。でも、このお母さんのような対応をしていただければ、相続も「家族の普通の会話」になりますよね。これこそ理想の姿だと感心させられました。 ところで、実はお母さんは、相続についてすでに別の税理士さんに相談されていたんですね。私のところへは「セカンドオピニオン」を求めにいらっしゃったのです。
でも、このお母さんは立派でした。子どもを2人引き連れてやってきて、「お前たちも、先生の話をよく聞いておきなさい」と、私の前にでんと座って(笑)。「生前の相続の話をすべき」といっても、そんなに簡単なことでないのは、私もわかっています。「縁起でもない」という感情が、どうしても先に立ちますから。でも、このお母さんのような対応をしていただければ、相続も「家族の普通の会話」になりますよね。これこそ理想の姿だと感心させられました。 ところで、実はお母さんは、相続についてすでに別の税理士さんに相談されていたんですね。私のところへは「セカンドオピニオン」を求めにいらっしゃったのです。
なるほど。今の税理士さんのアドバイスに従っていいものかどうか、迷ったわけですね。どんな中身だったのでしょう?
その先生は、付き合いのある不動産会社から紹介されたそうなのですが、やたらと物件の売却を勧められるので大丈夫かな、ということでした(笑)。この案件については、まだ概要をうかがった段階で、具体的なアドバイスを差し上げられるか否かも含めて、これからのお話になるのですが。
コストは発生するが、メリットは大きい
先生のところには、そういうふうにセカンドオピニオンを求めるお客様が、けっこういらっしゃるのですか?
ええ、時々みえますよ。例えば、会社を経営しているので顧問税理士がいるのだけれど、話してみるとどうも資産税関係には詳しくない。さりとて、親の代からお世話になっている先生なので、そちらの案件をまったく頼まないというわけにもいかない。そこで意見を聞きに来ました、というパターンですね。
やはり、心配なことがあったら臆せず他の税理士さんにも相談してみるのが正解ですか?
そうですね。特に相続の場合は大きなお金が動くので、この分野に詳しい先生とそうでない人がやるのとでは、支払う税金の額に大きな開きの出ることもあります。疑問点が解消できないようなら、気軽に利用してみてはいかがでしょうか。ちなみに、先に頼んだ先生に許可を取る必要はありませんし、「別の税理士のところに行った」という情報が洩れることもありませんよ。 ただし、当然のことながら、1人にお願いするのとは別にコストが発生します。いくらかかるのかは、事前に調べておく必要があるでしょう。
◆空き家の相続に朗報か。売ったら税金が安くなる
最大約610万円の減税になる
先日、「親が亡くなったら空き家になる実家の相続について悩んでいる」という方がみえました。これからは、こうした相談がどんどん増えていくのではないかと思うんですよ。
国の「空き家対策」が本格化する中で、固定資産税の住宅用地特例の見直しが行われました。危険な空き家を放置すると、税が6倍にも跳ね上がるわけですね。もし相続するとなると、何か対策を考えないと大変です。
ただ、それを“ムチ”とすると、“アメ”の政策も打ち出されています。2016年度の税制改正で新設された「空き家に係る譲渡所得の特別控除の特例」で、一定の条件を満たせば、その空き家を売却した譲渡所得から最大で3000万円が控除されるのです。活用すると、今までの売却に比べ最大で約610万円もの減税になりますから、一考の余地はあるでしょう。ただし、あくまでも危険な空き家を減らすのが目的ですから、適用を受けるためには、けっこう細かな条件があるんですよ。
説明をお願いします。
まず、以下の3つの要件をすべて満たす必要があります。
・家屋が一戸建てであること。・旧耐震基準=1981年5月31日以前に建築されたものであること。 ・相続開始の直前まで同居人がいなかったこと。 そして、①この建物を新耐震基準に基づいてリフォームして土地とともに譲渡するか、②建物を除却し敷地のみを譲渡するか、いずれかの場合に適用されることになっています。
・家屋が一戸建てであること。・旧耐震基準=1981年5月31日以前に建築されたものであること。 ・相続開始の直前まで同居人がいなかったこと。 そして、①この建物を新耐震基準に基づいてリフォームして土地とともに譲渡するか、②建物を除却し敷地のみを譲渡するか、いずれかの場合に適用されることになっています。
老人ホームに入っていたら適用外!?
大枠は以上ですが、加えて売却額が1億円を超えると対象外、相続時から売却までずっと空き家状態でなければダメ、といった縛りもかけられています。特に後者については、国税庁の通達でわざわざ「空き家の利用制限について一時的に利用されていた場合であっても、事業の用、貸付の用又は居住の用に供されていたこととなる」「当該貸付の用には、無償による貸付も含まれることに留意する」と「注意喚起」を促しているんですよ。
売却を考えているのだったら、親族がタダで住んでいてもいけないわけですね。
空き家対策としては、一歩前進でしょう。このほかにもいくつか条件がありますから、利用を考えたい方は専門家に相談することをお勧めします。 ただ、今回の特例措置には、個人的にやや首をかしげたくなる部分もあります。例えば、被相続人は亡くなるまでその実家に住んでいるのが条件で、老人ホームで亡くなったような場合には、現状では適用外になってしまうんですよ。
それは実情に合いませんね。
とにかく荒れ果てた空き家をなくす、という立法趣旨からいっても、合理的ではないでしょう。まあ、できたばかりのものなので、そうした点も含めて修正が加えられていく可能性はあると思いますから、今後もしっかりフォローしていきたいと考えています。
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