普通に仲の良かった兄弟が、親の遺産相続を機に仲違いしてしまう――。残念ながら、それが例外でも他人ごとでもないのが、今の日本の相続をめぐる実情です。なぜ、そんなことが多発するのでしょう? 税理士の小林清先生は、「親が生前にきちんとした『設計図』を描かずに、突然相続になるのが、大きな理由の一つ」だと指摘します。
相続にも「設計図」が必要です
2015/3/16
◆兄弟には、それぞれの生活がある
親の相続を迎える世代の子どもなら、それぞれが家庭を築くなりして、別々の環境で暮らしているのが普通です。みんな異なる「家庭の事情」(例えば、息子が大学受験を控えているとか、義理の親の面倒をみているとか)があり、別々の配偶者がいる、というわけです。 いざ相続になり、親の財産がもらえるとなった瞬間、そうした「事情」が顔を覗かせ、お互いに利害関係が生まれるんですね。なんとかそれが対立に発展しないよう、収められればいいのですが、往々にして、「あんなに仲の良かったきょうだいが……」という事態になってしまう。幼い時分の兄弟喧嘩なら笑って済ませられますが、大人になってからのそれは悲惨です。一生、修復不能になってしまうことも、珍しくありません。
そんなふうに揉める大きな原因の一つは、相続させる側に「心の準備」がないことではないか、と私は思います。家を建てる時には、「こんな建物にしたい」という思いを、必ず設計図にしますよね。相続においても、「財産はこう分けるよ」という親の考えを、しっかり形にし、伝えておくべきなのに、多くの場合、それができていないのです。逆に言えば、親が自分の考えをきちんと理解させていたら、多少生活が苦しくても、それを曲げてまで遺産の「増額」を要求する可能性は、ずいぶん低くなるのではないでしょうか。
元気なうちに、「言葉」で伝える
「相続についての親の考えを形にする」と聞くと、遺言書のことが頭に浮かぶでしょう。もちろん、円滑な相続を進めるうえで、遺言書は意味を持ちます。でも、それ以上に大事なのは、子ども達全員にちゃんと言葉で伝えることだ、と私は思います。 「後を継いでもらうから、家は長男に渡す」「お母さんの老後が心配だから、現金はこれだけ残すよ」――。こうした「設計図」が明らかにされれば、仲のいい兄弟だったら、たいていは納得し、それに従うのではないでしょうか。
この場合のポイントは、「元気なうちに話をする」ということです。病弱になってから遺言書を書いたりすると、相続になってそれを目にした兄弟のなかで、「同居している兄さんが書かせたんじゃないか」などと、互いに疑いの目を向けるような争いになりかねないからです。 ただし、そう理屈通りにはいきにくい現実もあります。遺産分割のことを具体的に考えたり、ましてや遺言書を書こうという気持ちになったりするのは、「心身の衰えを自覚したから」、というのが実際のところだと思います。元気な時に「兄弟で平等に分けろ」と話したものの、いざ体が動きにくくなったら、世話をしてくれる次男夫婦に手厚くしてあげたくなった、あるいは、そうしないと面倒をみてもらえないかもしれないから……と気が変わるのも、十分考えられること。
そうした「変心」を、いいとか悪いとか、一概に言えないところが難しいですね。ただ、そこで今度は相続人の方に考えてもらいたいのは、心身が弱った結果、「親が心変わりすることもあり得る」、くらいの度量を持ってもらいたい、ということなのです。平たく言えば、相続人は、親の遺産を「もらう」立場。相続においては、まず「あげる」人間の気持ちが最優先されるべきだ、と私は思うのです。
◆「法定相続分は、もらう権利がある」。それは確かにそうだけど……
相続の主役は、被相続人であるべき
さきほども述べたように、遺産相続において最優先されるべきは、何より被相続人(親)の考えであるはず。先祖から受け継いだ、あるいは自らがつくり上げた財産を渡すのですから、当然のことに思われるのですが、昨今の風潮をみると、どうもそうはなっていません。誤解を恐れずに言えば、「相続人(子)の要求のほうが「優先」されるべき」。そんな考えが横行し、争いが増えている側面は否めないように感じるのです。
「要求」の根拠としてよく出てくるのが、民法の定めた「法定相続分」です。確かに、「法定相続分に比べ、私のもらう額はあまりにも少ない」という主張には、説得力があります。こじれて裁判になったような場合にも、最終的には、それが大きな決め手にもなるでしょう。
でも、そもそも、相続って何でしょう? 「原則的に、親の財産を親の意志に従って、相続人に分け与えるもの」というのが、私の解釈です。 それぞれの生活もあるし、被相続人が明らかに誤解して、アンフェアな相続になっている、なんていうケースもあるでしょうから、「相続人が文句をつけるのはお門違いだ」などと言うつもりは、毛頭ありません。ただ、率直な感想を言わせていただければ、相続人の方には、自分は親の財産をタダで(もちろん、相続に伴って責任の発生することもあるでしょうが)もらう立場なのだ、という「当たり前」を、今一度認識したうえで相続に臨んでもらいたい、と思うのです。
「法定相続分」=「こう分けなさい」ではない
簡単に「法定相続分」についておさらいしてみましょう。相続財産を受け取る権利がある人を、「法定相続人」と呼びますが、ここではわかりやすく。「法定相続人」とその相続分を、図に示しました。
再確認しておきたいのは、この民法に定める法定相続分というのは、「相続人の間で遺産分割の合意ができなかったときの遺産の取り分であり、必ずこの相続分で遺産の分割をしなければならないわけではありません」(国税庁ホームページ)という性格のものである、ということ。裏を返せば、「遺産分割については、あくまでも当事者同士の話し合いで合意するのが基本」なのです。ところが、多くの場合「法定相続分は、相続人が絶対にもらえる“取り分”」→「もらわなければ損」と認識されているのが、現実ではないでしょうか。
まずは、親の考えを尊重して、話し合う。それでも揉めそうだったら、みんなが納得する「落としどころ」として、法定相続分を検討する――。それが、本来の遺産分割協議のあり方のはずです。最初から「法定相続分」を振りかざすのは、本末転倒であるばかりでなく、「争続」のタネになるかもしれないことを、肝に銘じてほしいのです。
◆相続税の基礎控除額引き下げが招く「大変な時代」
税制改正により、今年の頭から相続税の基礎控除額が、4割引き下げられました。簡単に説明すると、「遺産がこれ以上あったら、相続税を支払いなさい」という基準が、それまでより40%引き下げられたわけです。税額計算は法定相続人の数によって変わりますが、妻と子ども2人の計3人の場合を例に取れば、以前は遺産8000万円までは非課税だったのが、4800万円を超えると課税されることになりました。
そこでクローズアップされているのが、「家と土地」。現預金は大して持っていなくても、都会、中でも東京都内に一軒家があると、従来なら「圏外」だったのに、今後は相続税課税の対象になるケースが、かなり増えそうなのです。「4800万円」という数字を見れば、その「現実味」が理解できるのではないでしょうか。ちなみに、「うちはもうボロ家だから」といっても、不動産評価においては、土地のウエートが圧倒的に高いのが普通ですから、安閑とはしていられません。
この「相続税基礎控除額引き下げのインパクト」については、昨年あたりからいろいろ言われていましたが、実際動き出してみると、当事務所にも「不動産の評価が心配だ」といった相談が、けっこう来るようになりました。実は、最も困るのが、そういう「家はあるけれど、現金はそんなに持っていない」人たちなのです。
相続税の支払いで、老後の資金が枯渇する!?
相談にいらっしゃった中に、こういう案件がありました。遺産は一軒家の自宅に少額な生命保険、課税価格で約6000万円。相続人は、ご自身も70代という高齢の長女Aさん1人だけでした。このケースでは、ボーダーラインの3600万円超で課税対象となり、相続税は310万円という計算になります。 このケースでは、遺産の大半は自宅で、現金はほとんどありませんでした。すぐに土地を売って現金化できればいいのでしょうが、それも難しい。結局310万円の税金は、Aさんが手持ちの預金から払うしかないわけです。ところが、ご自身も400万円程度しか預金がありません。税金を払うことはギリギリできるけれど、先々のことを考えれば、かなり手痛い出費だと言わざるをえません。
これも「格差」と言うべきか、「相続税で1000万円持っていかれるけど、まだキャッシュで3000万円残るよ」という人は、そんなに心配はいらないでしょう。問題は、基礎控除が引き下げられた→資産の大部分を占める自宅の評価額が原因で、課税対象になった→乏しい現預金を取り崩して、なんとか相続税を支払った→老後の蓄えが底をつき、年金でやり繰りする以外に道がない、というようなパターンです。 大げさでも何でもなく、そうした現象がたくさん生まれる、「大変な時代」になった、と私は感じています。あえて言えば、今度の法改正が、そういう時代をつくり出してしまったのです。確かに、今の高齢者世代から下の世代への資金移動を活発化させることには、意味があるでしょう。ただ、世の中にはそれが難しい人たちもいる、という現実にも、社会は目を向ける必要があるのではないかと思うのですが……。
◆遺言書に“きつい”一言。それを目にした相続人は……
長男に「すべて」を譲る、農家の相続
特に農家の方には、今でも「家督相続」的な考えを持っている方が、大勢いらっしゃいます。財産のほとんどを長男に譲って、「その代わり家業を守れ」というスタンスですね。私の担当した案件で、こんな例がありました。 子どもは、長男、次男、長女の3人兄弟。被相続人となるお父さんは、先祖代々の例にならって、「家督」を長男に渡したい、という意思を持っていました。土地を含めて、相続財産は10億円ほどになりましたが、妻に残す分以外の大半は、長男が受け取る内容の遺言書を準備していました。
こういう「家」にとって、嫁に行った娘は「他家の人間」。渡すのは「判子代」ぐらいで、実際、娘さんの相続額は1000万円程度だったと記憶しています。前にこのコーナーで述べた「法定相続分」(民法に定められた遺産の取り分、このケースでは2分の1÷3=6分の1)はおろか、「遺留分」(あまりにも相続人に不利益な事態を防ぐために、やはり民法で定められた、兄弟姉妹を除く相続人に保障された遺産の取り分、このケースでは4分の1÷3=12分の1)にも、遠く及びません。さすがに相続の段になって若干、揉めましたが、娘さんも「農家はそういうものだ」と分かっている方だったので、大きな争いには発展しませんでした。
さて、問題は次男です。こちらは「分家」扱いですから、やはり長男とは相続額に大きな差の付くことが珍しくないのですが、まあそれでもケタ違いにバランスを欠くということは、今ではそんなにないと思います。ところが、待遇は娘さんとほぼ同じ。そこには、ちょっとした事情がありました。 実は、次男の方は事業を起こして失敗し、その負債の面倒などを、親が丸ごとみていました。自分の土地に次男用の家を建て、住まわせてもいた。にもかかわらず、息子は仕事が長続きせず、という状態。「あいつには十分してやったから、もういいんだ」というのが、お父さんの考えだったのです。
息子を目覚めさせた「最後の手紙」
とはいえ、金銭的な面だけ考えれば、次男への援助額を割り引いても、遺留分くらいは渡すのが「妥当な線」でした。次男にも、主張しようと思えばできるだけの根拠はあった。でも、彼はそれをしませんでした。 効いたのが、父親が残した遺言書の「付言事項」に書かれた文言でした。なんとそこには、息子に対する、厳しい戒めの言葉が記されていたんですね。「会社を潰したのは仕方のないこととして、それからいつまで経っても、独り立ちしようとしない。お前に財産を譲らないのは、そのためだ」といった内容です。
次男の方と、「この相続でいいですか?」と話をした時の、彼の言葉は印象的でした。「金のことで親に迷惑をかけたのは分かっています。でも、親父がこういう目で自分を見て、ある意味苦しんでいたとは、思いませんでした」とおっしゃったのです。遺言でそんなことを言われれば、ショックを受けない人はいないでしょう。この方もそうでしたけど、もしかしたらそれは、彼が自分を見つめ直す機会になったかもしれません。
こうした、「率直な」言葉を遺言書に残す方は、たまにいらっしゃいます。弁護士さんなどと話をすると、「あんなことを書くから、争いになるんだ」といった事例に接することもあります。でも、人生の最後に家族に残す言葉なのですから、「どうしても言いたいことは言う」で、いいのではないでしょうか。「先生、どうしましょうか?」と相談を受けたら、私は、基本的にそういうアドバイスをすることにしています。
◆公正証書遺言は、原本のコピーも手元に保管できる
公正証書遺言には、「原本」「正本」「謄本」がある
遺言と聞いて、「何のことだろう?」と思う人はいないでしょう。では、遺言書には、①「自筆証書遺言」②「公正証書遺言」③「秘密証書遺言」の3種類があるのをご存知でしょうか? ①はその名の通り、自分で書く遺言書。②は公証役場の公証人に作成してもらうもので、③は自分で書いたものに封をして、公証人に「遺言書の存在」を証明してもらう(内容は知られない)やり方です。
今回は、中身も含めて公証人の「お墨付き」を得た公文書であるため、これらのうちでもっとも安心、確実だとされる、②の「公正証書遺言」についてのお話です。まずは、その作成方法をみてみましょう。「公正証書遺言」には2人以上の証人が必要ですので、その人たちといっしょに公証役場に出かけます。役場では、遺言者が遺言の内容を口頭で公証人に伝え、公証人が法的に適切な表現についてのアドバイスも行いながら、それを筆記します。
書き終ったら、公証人が遺言者と証人の前で、文面を一つひとつ読み上げ、確認します。OKとなったら、遺言者と証人が自筆で署名、押印し、最後に公証人が手続きに従って遺言書の作成を行った旨を明記し、やはり署名、押印して終了。 以上のように、「公正証書遺言」の作成は、かなり厳格な手続きを踏んで進められます。ところが、遺言者が亡くなって、いざ相続になった時、遺産を受け取る相続人たちは、そんなプロセスを経て作られたものだということを、ほとんどの場合、知りません。そこで問題の起こることがあります。
「公正証書遺言」の「原本のコピー」を持っているメリット
作成された「公正証書遺言」の原本は公証人が保管し、遺言者側には正本、謄本が渡される――。相続に関するどんな書物やネットの記事を見ても、そのように書かれています。ちなみに、公証役場で実際に作られたのが「原本」、「正本」は、その内容を署名も含めタイプ打ちして、公証人の判子だけ押したもの。「謄本」はそのコピーだと考えてください。 つまり、遺族たちが目にするのは、「自筆証書遺言」や「秘密証書遺言」とは違って、「活字」が並んで、公証人の判子だけ押された文書なんですね。そこから、「体の不自由な親父が、兄貴に無理やり書かせられたんじゃないのか」といった“疑念”が生まれるわけですね。そういう可能性を封じるため、私はできるだけ公証人にお願いして、依頼者の遺言の原本のコピーをいただくようにしています。実際、そこまでしている先生は少ないと思います。
持ち帰った原本のコピーは、私の事務所で保管する場合もありますし、ご本人が「持っていたい」とおっしゃれば、そうします。ちゃんと被相続人の自筆のサインがある遺言書だったら、あらぬ疑惑を招く可能性が、かなり減らせるはずです。 なお、相続人が公証役場に行けば、そこで原本を閲覧することは可能です。実際には、そのことも知らずに、遺言書の真偽で争いを起こしているケースも、少なくないのです。
◆不動産投資による相続対策。狙い目は地方!?
相続対策で、財産が増えた!
私のお客さんで、相続対策のために、10年以上をかけて十数件の物件に投資した結果、相続が発生した時に税金を減らせただけでなく、資産を大きく増やした方がいました。時間をかけていい物件に投資していけば、そういうことも可能なのだということを、まず申し上げておきたいと思います。 不動産を買うと、なぜ相続税が減らせるのか? 相続税を計算する場合、現預金や株式などは、「時価」で評価されます。ほぼ100%の「金額」が、相続財産とみなされるんですね。これに対して、不動産は、購入時点から何割か割り引いた価格で評価されます。例えば、1億円で買ったマンションが7000万円と評価されれば、遺産は3割圧縮されたことになり、そのぶん、相続税も減らせるわけです。
さて、さきほどのお客さんを含め、私が勧めた不動産投資のホームグランドは、実は札幌です。依頼者が北海道に住んでいたからではありません。東京でやるよりも、「安全、確実」だからです。一見、需要の多い東京のほうが有利に思えるのですが……。どういうことなのか、以下、ざっくりとした数字だとお断りしたうえで、説明してみたいと思います。例えば、5億円で賃貸用のマンションを買ったとします。それだけで、東京でも4割くらいは相続財産を圧縮できるはず。でも、札幌なら、うまくやれば6~7割の圧縮が可能なのです。不動産の評価においては、土地の価格が大きくものを言います。地価の違いが、その差を生む主な要因なんですね。 さらに、投資物件から得られる「利回り」も違ってきます。「利」を生むのは、家賃。同じ5億円を投資したとして、土地の高い東京や横浜と札幌と、どちらが多くの部屋数を確保した物件を建てられるでしょうか?
むろん、前者のほうが高い家賃を設定できますが、それを考慮しても、投資利回りは東京がせいぜい4%に対して、札幌は十数%。5億円の物件から、毎年5000万円の収入が得られるのです。 付け加えれば、「部屋数が少なく、家賃が高い」ということは、空室になったり、家賃相場が急落したりした場合の「損害」も大きい、ということ。仮に東京のマンションの利回りが半分の2%になってしまったら、収入は1000万円。5億円を借金して購入していたとしたら、返済は厳しくなるでしょう。そんなリスクを冒してまで、不動産投資をする必要はない、と私は考えています。
「信頼できる管理者」が鍵
私が、他の地方都市ではなく、札幌に投資を限定しているのは、そこに優良物件を見つけて、かつしっかりと管理してくれるパートナーを見つけたからに、ほかなりません。見落とされがちなのですが、特に賃貸マンションなどに投資をしようというのなら、物件そのものの善し悪しだけに目を奪われていては、いけません。誠実で優秀な管理者がついているかどうか。それによって、入居率に雲泥の差が出るんですね。
お話ししたのは、私が蓄積したノウハウの一部なのですが、投資をしたお客さんで、痛い思いをした人は、今まで一人もいません。ただし、投資にはリスクがつきまとうことも、お忘れなく。オリンピック後の「不動産バブル崩壊」も噂される今は、より慎重にならなければならない局面だ、ということも申し添えておきたいと思います。
◆相続税対策は、やれば必ず結果が出る
相続税の試算は狂わない
私たち税理士が、お客さんから相続税の相談を受けると、状況をお話していただいたうえで、「提案書」を作成します。不動産が多いだとか、やや複雑な相続になると、その中身は、担当した税理士によって大きく違ってきます。クライアントにとってどれだけ意味のある提案になるかは、はっきり言って腕次第、と言っていいでしょう。
私も、様々な法律などを検討し、必要に応じて勉強もしながら、いろんな選択肢のある中で最も優れた結論が出せるよう、心がけてきたつもりです。若い頃は「本当にこれでいいのだろうか」と、恐る恐るのところもあったのですが、仕事を続けるうちに気のついたことがありました。 それは、この提案書がしっかり作られていると、相続税対策はだいたい計画通りに行く、税金はおおむね試算した通りに収まる、という事実でした。例えば法人税だと、その節税に向けて決算対策をしようとしても、想定を超えて売り上げが変動したりすれば、大きな狂いが避けられません。相続税に関しては、そうした変動要因が比較的少ないんですね。
「実証」経験を生かして、先を見極める
何ヵ所かに不動産を持っていて、それらは息子に継がせたい。現金があまりないから、一部は相続税納税のために売ってもいい――という方がいました。ならばと、駐車場にしていた土地を「売却用」に決め、そこには建物を建てたりせずにしておくことを前提に、相続対策を設計したのですが、実際に相続が起きたのは20年ほど経ってから。ところが、税金は予定通り、駐車場の売却額は計画をやや上回る、という完璧な相続になりました。
もちろん、相続対策を始めてから税法が変わる、といったことは起こり得ます。不動産価格なども、ある程度の変動は避けられないでしょう。ただ、それらには、時折計画を見直して、必要に応じて対策を追加することなどで、十分対応可能なのです。この方の場合も、適宜シミュレーションを行い、着地点を確認しながらことを進めました。それができるのも、初めにしっかりした方向性を定めたからこそなのです。
相続対策は、「将来」について、一つの結論を出すことですよね。普通、先のことなんて分からない。でも、私には、かれこれ35年ほどになる実務経験の中で、数多くの相続の「実証」を重ねてきた経験があります。だから間違いのない「終着駅」が見える……というと預言者のようですが(笑)、ちゃんと準備さえすれば、「予定通りに行った」という相続は可能なのだ、ということを強調しておきたいと思います。 もちろん、私以外にもそれが可能な経験を持った税理士が、たくさんいます。相談料は、基本的に初回は無料の場合が多いですから、気軽に相談してみてください。
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