税理士の立場で考える、セカンド・オピニオン

税理士の立場で考える、セカンド・オピニオン

2015/2/18

 
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相続財産の評価は適切なのか? 相続税はもっと安くならないの? そんな気持ちから、相続に際して、税金の申告書を作成したのとは、別の税理士さんに意見を求める人がいます。税理士の浅野和治先生は、そうしたセカンド・オピニオンを推奨する1人。ただし、やり方にはちょっとしたコツもあるようです。

◆税理士にも不得意分野はある

私は、事務所のホームページに、提供するサービスの一つとして「セカンド・オピニオン業務」を載せています。「セカンド・オピニオン」と聞くと、お医者さんが思い浮かびますよね。税理士も同じです。 相続に関して言えば、そもそも相続財産の評価は適切なのか、遺産の分割方法で相続税がもっと安くなるのではないか、納税の仕方はこれでいいのか――といった疑問や不安は、誰しも抱くもの。そうした点について、相続税の申告書を作成した税理士以外の、専門的な知識を持った人間が、違った視点で相続全体、相続財産評価、遺産の分割方法の見直しなどを行うのには、大きな意味があります。 「士」を名乗っているんだから、税理士なら税金のことは何でも分かっているのだろう、というのは大きな誤解。税理士も神様ではありません。得意分野があれば、不得意なフィールドもあります。所得税や法人税のエキスパートだけど、相続のことはからっきし、という先生だって、たくさんいます。
 
例えば、前にこのコーナーで、「相続においては、二次相続までトータルで考えることが大事だ」という話をしました。ところが、中には、「配偶者控除を使えば、1億6000万円まで無税なんですよ。その枠を生かして、今回はお母さんにできるだけたくさん、お父さんの遺産を相続してもらいましょう」などとアドバイスする税理士がいます。そんな方は、もしかしたら相続税についてあまり詳しくないのかもしれません。そういう時こそ、セカンド・オピニオンに耳を傾けることをお勧めしたいのです。

“コラボ”させることも大事

さて、私はたくさんの会社の顧問税理士をしています。「セカンド・オピニオンに使ってください」とPRする私ですが、逆に顧問先の会社の社長などから、「別の税理士さんの意見も聞きたいんだけど」と言われることも、たまにあります。もちろん、基本的にはウエルカム。ただし、そこには守ってほしいルールというか、あえて言えば「仁義」のようなものがあることも、社長さんには心に留めておいてほしいと思います。 「他の先生の意見も……」と相談されて、「えっ」と思わない税理士はいないでしょう。「ウエルカム」と言った私でも、やっぱり少しは構えます。すでに顧問先になっているところからそう言われた場合、一番気になるのは、「軒を貸して母屋を取られはしないか」ということ。顧問の仕事まで、全部持っていかれるのではないか、という不安です。通常、顧問先に対しては10年ぐらい先のことまで考えて、いろいろ「サービス」していますから、途中で切られるのは非常に痛いわけですね。
 
また、このように「通告」せずに、顧問の税理士に黙ったまま、他の先生に依頼するケースも、実際には多いようです。元の税理士への気兼ねもあってのことでしょうけれど、このやり方はお勧めできません。「不安」以上に「不信」をかきたてる結果になる可能性が高いからです。税理士も人間です。人によるとは思いますが、不信感を抱いた相手に対して、100%の仕事ができる保証はありません。
 
税理士の立場からみた、「いいセカンド・オピニオン」を指南させていただけば、まずは、その事実を秘密にしないこと。そのうえで、顧問の先生には、「会社全体のことはこれからもあなたに任せるが、今回の件については〇〇先生の考えも聞きたい」と、スタンスをはっきりさせることが大事です。「あなたが指揮を取って、二人で協力していい答えを出してほしい」という形にできれば、ベスト。そう言われれば、プロ同士、お互いのプライドをかけて全力を尽くしますよ。そうした相乗効果を生むのが、「いいセカンド・オピニオン」。片方に黙っていたら、そんなメリットも望めません。
 
要は、セカンド・オピニオンを求めるのならば、対決させるのではなく協力させて、プラスαを享受することを考えるべき。どうせ頼むなら、税理士の心理まで読んで、賢く「使って」ほしいのです。

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