相続税対策として、孫を養子にすることは、珍しくありません。養子は、相続においては実子と同じ扱いの「相続人」。その数が増えれば、税の減免効果が高いのです。ただし、未成年の孫を養子にする場合には、注意が必要。もし、未成年のままで相続が発生すると、想定外の事態を招くリスクがあるのです。相続に詳しい中島宜秀先生(税理士法人けやきパートナーズ)に解説していただきましょう。
未成年を養子にする。そのリスク、認識していますか?
2019/6/19
養子縁組は手軽な節税手法である
養子縁組というと大変な手続きが必要にも感じられますが、そんなことはありません。行政の窓口に届けを出せばOKで、届け出自体に手数料もかからないのです。不動産を購入したり、年間110万円までは無税という枠を活用して子どもに少しずつ贈与したりといった節税に比べると、はるかに手軽で、“実入り”も大きいと言っていいでしょう。
60歳代後半のお父さんが、長男の奥さんと長男の子ども=孫を養子にしました。さて、このお父さんは、相続などまだ先の話だと思っていました。ところが、突然不慮の事故に遭って、亡くなってしまったのです。
バタバタと相続になりました。そんな状態ですから、遺言書も残されていません。相続人は、奥さんと長男、次男、そして養子にしていた長男の奥さん、長男の子。問題は、被相続人(亡くなった人)から見た孫が、未成年だったことです。
未成年者の相続には、「代理人」が必要になる
特別代理人は、相続に無関係の親族や、弁護士、司法書士、税理士などの専門家から選べるのですが、問題は代理人を付ける人、このケースでは長男の子に不利な遺産分割では、その選任自体を裁判所に認めてもらえないことなんですよ。具体的に言うと、長男の子には法定相続分以上の財産を渡す必要が生じたわけです。
亡くなった男性も、まさか孫が未成年のうちに相続になるなど、少しも思っていなかったでしょう。この場合でも、遺言さえ作成されていれば、遺言通りに執行できるため、仮に孫に全く財産がいかない内容であっても、問題ありません。遺言がない場合には、孫に法定相続分相当を相続させないと家庭裁判所の了承が得られないという制約が出てしまいます。
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中島宜秀(税理士)プロフィール
税理士法人けやきパートナーズ 代表社員
2008年に税理士登録。相続税・贈与税などの資産税に特化し、相続対策に強みを持つ資産税のプロフェッショナル。現在は資産税と法人監査を両軸に、税務・会計以外の各種相談業務も行い、お客様目線に立った対応を心掛けている。
URL: http://www.keyaki-pt.com/
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